大人の金融教育の企画として「身近な人を幸せにするお金の使い方」を募集中の今村です、こんにちは。
もう少しで締め切りますのでよろしくお願いします~。
で、これが終わったら最後のお題「世の中の人々を幸せにするお金の使い方」をやるつもりなんですが、その関連でビリオネアたちはどんなお金の使い方をして世の中に貢献しているのかについてちょっと書きます。
まあビリオネアの財力って一般人とは次元が違いますからね、できることの規模も当然全く違うっていうのは確かにあります。
でもそれぞれのアプローチを見ているとなかなか興味深いものがあるので、話のたねにでも読んでってください。
ウォーレン・バフェット
アメリカの慈善家の中で一番多額の寄付をしているのがバフェットおじさんです。
毎年バークシャー・ハサウェイの株を寄付し続けていて、自分が死んだあとは遺産相続手続き終了後10年以内に残りの株も全て寄付すると宣言しています。
そんなおじさんのやり方の特徴は、信頼できる相手に託してあとは任せていることです。
彼は一応1964年にバフェット財団なるものを設立しています。
でも、運営は基本的に先妻であり人権や中絶権の活動家だったスーザン・トンプソン・バフェットが行っていたようです。その後、彼女が亡くなって財団名がスーザン・トンプソン・バフェット財団に変更されてからは娘のスーザン・アリス・バフェットが運営を引き継いでいます。
ちなみに、3人の子供、スーザン・アリス、ハワード、ピーターにはそれぞれシャーウッド財団、ハワード・G・バフェット財団、ノボ財団と自分の財団があり、各自違う分野で慈善事業を行っています。こちらにもおじさんは寄付をしているようです。
でも一番大きな寄付先はビル&メリンダ・ゲイツ財団です。
遺産についても、以前は99%はスーザンの財団に寄付すると言ってましたが、10年くらい前に85%をゲイツ財団に遺して15%をスーザンの財団に遺すことにしたと発表しています。ゲイツ財団の方がスケール化されていて効率的・効果的だからだそうです。
ただし、ゲイツ財団への寄付はビルかメリンダのどちらかが健在で運営に関わっていることなどを条件にしています。信頼しているのはゲイツ夫妻というわけですね。
得意分野じゃない場合は自分では手を出さない、人をしっかり選んでその後は任せるという形でバークシャーを運営してきたおじさんらしいやり方です。
ビル・ゲイツ
ビル・ゲイツ氏もバフェットおじさんと争うくらい多額の寄付をしてる人です。
バフェットおじさんと違うのは、彼が自分の財団の運営に深く関わっているということです。
実際、トランプ大統領にホワイトハウスの科学アドバイザーにならないかと乞われたり、インタビューなどで大統領選に出馬しないのかと聞かれたりしても、ゲイツ財団の活動の方が重要と答えてたりします。
そして、ゲイツ財団の特徴として面白いのは、ビジネスのように慈善事業を運営しているというところです。
財団って創設者が主観的に寄付する分野を決めるのが一般的だし、場合によっては、創設者が自分の名前を残したりイメージアップするために寄付したりすることも結構ある気がします。
その点、ゲイツ財団は「資本主義で自動的に改善されにくい分野に資金を投入する」という考え方をもとに、世界の貧困問題、開発途上国のヘルスケア、アメリカの教育システムなどを対象に補助金を出しているんですね。
また、成功するかわからないテクノロジーやイノベーションにもベンチャー投資的なノリで積極的に資金を出しています。
そして、状況調査やデータ分析もかなり行っています。ゲイツ夫妻が発信するものを見ていると、もう慈善家の域を超えて貧困や開発途上国の専門家と言っていいのでは?と思うこともしばしばです。
バフェットおじさんが巨額を託す相手に夫妻を選ぶのもわかる気がします。確かに自分でやるよりずっと効率的・効果的に世の中を良くできそうです。
今村も、自分の資産を使い切る前にうっかり死んじゃった場合はゲイツ財団に寄付したいくらいです。
イーロン・マスク
イーロン・マスク氏は慈善家ランキングには出てこない人です。
寄付してないわけじゃないですが、ほとんどは自分で直接人助けをしたり社会問題を解決するやり方でお金を使っているからです。
現在彼が手がけている事業は、全部世の中を良くする試みです。
2002年に創立したSpaceXは、宇宙輸送のコストを大幅にカットして火星移住を可能にし、人類や地球に万が一のことがあっても人類の存続を可能にするのが目的です。正直、発想が壮大すぎてわけがわかんない感じがしなくもないんですが、本人は真面目です*1。
また、SpaceXの子会社Boring Companyは、L.A.の渋滞をどうにかするため創立されました。2つあったL.A.の計画のうち、1つは最近ポシャってしまいましたが、他に興味を示している都市もあるので場所を変えて世の中を良くするんでしょう。
Teslaは上場しちゃってますが、こちらもイーロン的には、地球温暖化対策としてEV車の普及を促進することが目的だったりします。実際、競合なんかも全然気にしておらず、それどころか「悪用しない限りTeslaの特許は誰でも全部自由に使っていい」ということにしています。他の企業にも参入してもらったほうが目的を果たしやすいからです。
つまり、彼の場合「世の中を良くする目的がまずあり、投資家や事業収益からさらなる資金を確保するためビジネス形態にしている」という感じに近いわけです*2
あと、何か大きな事件が起きるごとに「何かできることあったら言って」と出てきて、資金、技術、人材などを提供するのも彼の定番のやり方です。
例えば、ミシガン州のフリントで水汚染が起こったときは、自分は全く関係ないのに、地域の学校全部の水道フィルターを設置する資金を出していました。
上場企業のCEOとしてのイーロン・マスクには賛否両論があると思いますが、NGOや行政では到底できないレベルで問題解決しようとするとこうなるのかもしれません。
ジェフ・ベゾス
ジェフ・ベゾス氏は、一応慈善家ランキングに出てきます。でも世界一の資産家のわりには順位が下の方で、寄付金額が少ないと批判されがちな人です。
どうしてそうなるのかは、彼のアプローチを見るとすぐわかります。
彼の"慈善"事業は全てBezos Expeditionsという彼のベンチャーキャピタル下で行われていますが、Blue OriginからWashingon Post、ホームレスや低所得家族向けの慈善事業ファンドであるBezos Day One Fund、奨学金など教育関連の事業を行う財団Bezos Family Foundationまでいろいろ含まれています。ベンチャー投資や、博物館の改装やガン研究などに対する寄付も入っています。
つまり、ビル・ゲイツ的なものとイーロン・マスク的なものが混在しているのがジェフ・ベゾスというわけなのです。
やり方自体も両者を足して2で割ったような感じで、例えばDay One Fundの低所得者層向けの保育園では、単に寄付するのでなく、自分が直接運営に関わって顧客(園児)志向を貫くと宣言しています。
Blue Originでは「Amazonが成り立ったのも、大学生が寮でFacebookを始めることができたのも、インターネットというインフラが既にあったからであり、そういう意味で次は自分が宇宙のインフラを次世代のために作るべきなのだ」という考えで自己資金をつぎ込み*3、ビジネスとして成り立たなくてもやると言っている一方、持続可能でないと意味がないからできればビジネスとして成立させたいという考え方で取り組んでいます。
Washington Postを買収した件に関しても、「新聞に興味はなかったが、民主主義という文脈で果たす役割の重要さに気づいたから」と述べている一方、「建て直す勝算があるのかは考えた。とても無理と思ったらやっていなかった」と述べています。
つまり、きちんと自分でできるかどうか熟考してから資金を振り分けているというわけです。
なんでしょうね、型破りだけれどそつがないというか、こういう人だからこそAmazonをここまで育てることができたんだろうなぁと感心させられます。
まとめ
いやぁ、いろいろなアプローチがあるもんです。
でも面白いのはやっぱりそれぞれの人間性というか、個性がそのまま出ているってことじゃないかと思います。
そういう意味では、世の中のためにお金を使うということは自分とはどういう人間なのかということを考えることでもあるんじゃないかという気がします。