経済的自由のススメ ~そのあと~

経済的自由を得て現役引退したあとの生き方

バフェットおじさんの株主への手紙のまとめ

世間は3連休か!とさっき気づいた今村(@saki_imamura)です、こんにちは。

フリーランスの頃から曜日や祝日は関係なかったんですが、もう完全に世間のテンポがわかんなくなってますね……。

なんにせよ、みなさんは避けられる人混みは避けて楽しい3連休にしてくださいませ。単にダラダラして体を休め、免疫力を高めておくのも悪くないかもしれません。

さて、昨日の朝、バフェットおじさんの株主への手紙が出たよ~というツイートをしました。

で、やっぱ面白いわwwwと思いつつ8割くらい読んだところで、

というツイートに気づきました。

あら……。

……てことで、ちょっと心が動いたので、バフェットおじさんの株主への手紙の内容を英語がわからない人のためにまとめておきました。

箇条書きで要点だけ書けば大したことないだろうと思ったんですが、要点じゃないけど面白いところもあって結局は要点だけに絞れませんでした。1文1文全部訳したわけじゃないですが、とにかく13ページ分あるので結構長いです。

でもせっかく書いたので読んでいってください。

GAAPの新しいルールについて

  • GAAPに従って計算すると、Berkshireの2019年の収益は814億ドルだった。内訳は営業利益が240億ドル、実現キャピタルゲインが37億ドル、純未実現キャピタルゲインが537億ドルである。
  • 純未実現キャピタルゲインの537億ドルは、2018年から導入されたGAAPの新しいルールにより計上されたものだが、去年も述べた通り、チャーリーも私もこのルールには賛同できない。
  • コロコロ変わる株価を反映させなくてはならなくなったおかげで、株価が下落した2018年のBerkshireの収益は206億ドル減少して40億ドルの計算になり、株価が上昇した2019年には537億ドル増加して814億ドルの計算になった。
  • 市場の乱高下で収益が1,900%も上昇した計算になったわけだが、「会計ランド」ではなく現実世界では、Berkshireの所有株式の時価総額は平均2,000億ドルで、それらの実在価値は年々上昇しているので、GAAP式収益ではなく営業利益で評価してもらいたい。

蓄積した内部留保のパワーについて

  • 1924年に、無名だった経済学者Edgar Lawrence Smithが「Common Stocks as Long Term Investments」という、投資業界に波紋を投げかける薄っぺらい本を出版した。もともとは「株式はインフレ期間には債券を上回るリターンを生み、債券はデフレ期間に株式を上回るリターンを生む」という仮説を証明しようと書いた本だったが、「うまく経営されている企業は利益をすべて株主に還元しないで事業に再投資するものだが、これ自体に複利効果があり、配当金とは別のリターン(キャピタルゲイン)を生む」という結論だった。
  • カーネギー、ロックフェラー、フォードなどが事業に再投資して巨額の富を築いていたのに内部保留の力が認識されていなかったのはおかしな話だが、それでも「株式というのはギャンブルや投機であり、紳士は債券を好むもの」だとされていた。
  • 今日では、内部留保の力は投資家の間でも認識されるようになり、複利に至っては子供でも理解するようになっている。
  • Berkshireでは、この力を利用するため、すでに所有している事業に再投資することを第一に考えている。
  • その次に考えるのは、1)有形資本のリターンが高い、2)経営者が有能で誠実である、3)妥当な価格で買収可能、という条件を満たす事業を買収することをである。
  • 条件を満たす事業があれば丸ごと買いたいのだが、そのような機会はあまりない。気まぐれな市場が、企業支配権には満たないがまとまった枚数の上場企業の株を買う機会をくれるだけのことの方が多い。
  • Berkshireが50%以上の株式を所有している事業の営業利益はBerkshireの営業利益に反映されるのでご覧の通りだが、50%以下の場合は配当金しか営業利益に反映されない。そのため、Berkshireが所有する株式でポジションが大きい10社の利益余剰金を以下に示しておく。
  • 各社で利益余剰金に比例したキャピタルゲインを実現できるかはわからないが、経験上、平均ではそれと同等またはそれ以上のリターンを期待できると思っている。

保険業以外の事業について

  • 企業買収というものは結婚に似ていて、喜びに溢れた結婚式に始まり、時とともに婚前の期待から外れていくものだが、まれにお互い思ってもみなかった至福にたどり着くこともある。個人的には、Berkshireの婚姻経歴は大部分においてまずまずではないかと思っている。まあ、「一体何を考えてプロポーズしたんだ?」と思う案件も一定数あったが。
  • それでも、今ではBerkshireの資本は「良」または「優良」のリターンを生む事業に投資されている。一番大活躍しているのは保険業だが、ここではまずそれ以外の事業について述べる。
  • 非保険事業で最も大きいのはBNSF RailroadとBerkshire Hathaway Energy(BHE)で、2019年の純収益は前年比+6%の合計83億ドル。
  • 次に大きいグループはClaytonHomes、International Metalworking、Lubrizol、Marmon、Precision Castpartの5社で、純収益は前年とあまり変わらず合計48億ドル。
  • その次に大きいグループは、Berkshire Hathaway Automotive、Johns Manville、NetJets、Shaw、TTIの5社で、純収益は2億ドル増の合計19億ドル。
  • 残りの非保険事業は、数多くあるが、純収益は1億ドル減の合計27億ドル。
  • 非保険事業全体では、2019年の純利益が前年比+3%で177億ドル。
  • ここで最後に1つ付け加えなくてはならないことがある。2011年に買収した、油添加剤を製造販売するLubrizolが2019年9月に火災の被害にあい、大きな損害が生じた。
  • 大部分は各種保険でカバーされることになった…のだが、実はLubrizolを保証していた大手保険会社の1社がBerkshireの子会社であった。テヘペロ(←とは書いてないけど、「聖書に『人を助ける時は見返りを期待するな』と書いてありますが、みなさまの会長はそれに従ったわけです」とかなんとか言ってジョークで流してます笑)

財産・損害(P/C)保険業について

  • 1967年にNational IndemnityとNational Fire & Marineを買収して以来、P/C保険業はBerkshireの成長を推進するエンジンとなっている。現在では、National Indemnityは純資産で見たP/C保険会社として世界トップである。
  • P/C保険事業が魅力的な理由の1つは、先に保険料を回収して後で補償金を支払うというビジネスモデルである。これにより、保険会社には自由に運用できる巨額の手持ち金が入ってくる。さらに、常時出入金があっても、手持ち金というのは大体契約数に比例して一定額を保ちつつ事業とともに成長する。以下の通りだ。
  • 巨額を一度に支払わなくてはならない状況にならないように契約が組んであるため、手持ち金が減ることがあったとしても大きく一度に減ることは決してない。また、支払金が保険料より少なければ当然利益になる。
  • P/C保険業界では手持ち金を債券で運用することが多いのだが、金利の低下に伴い、5-6%あった手持ち金のリターンが2-3%になってきている。多くの保険会社にとって金利の低下は痛手であり、格付けが低い債券に買い替えてリターンをあげようとすることもある。だが、これは危険なゲームになりかねない。その点、有り余る資金を持つBerkshireは有利で、他社には得られない投資機会を活かすこともできる。
  • アスベストの件のように大きなリスクを長期間抱えたり、ハリケーン・カトリーナのような大災害が起こる可能性は確かにあり、BerkshireのP/C会社も大きな損害を被るかもしれない。しかし、BerkshireのP/C会社の場合、他社と違って資金の枯渇につながることにならない。Berkshireはむしろ翌日には(破産した)他社をポートフォリオに加える気満々なのである。
  • 2012年の終わり頃、保険事業を率いているAjit JainがGUARD Insurance Groupという小さな会社を2.21億ドルで買収すると連絡してきた。CEOのSy Foguelの活躍も期待できるという話だった。私はGUARD InsuranceもSy Foguelも聞いたことがなかったが、この買収は大当たりで、GUARDの保険料総額は2012年から379%伸びて19億ドルになるまで成長した。

Berkshire Hathaway Energy(BHE)について

  • BHEはBerkshireの傘下に入って20周年になるので、これまでの業績をまとめておく。
  • 2000年にBHEを買収した当時、アイオワ州の個人顧客はkWhあたり平均8.8セントの電気料金を払っていたが、それ以来毎年1%以下しか値上がりしていない。これから2028年までも料金は据え置きすることになっている。一方、アイオワ州の他の大手電力会社ではBHEより61%高い電気料金で、今後はBHEより70%高い料金になることが決まっている。
  • この桁外れな差は、BHEが風力発電を大きく拡大したからである。
  • BHEは2021年にはアイオワ州で2,520万MWh風力発電できるようになる見込みだが、これはアイオワ州のBHEの顧客すべての年間需要を100%まかなえるレベルである。一方、アイオワ州内の他社では風力発電は全体の発電量の10%に満たないレベルであり、更に言えば、風力発電だけで顧客全体の年間需要をまかなえる電力会社は他にない。
  • 2000年時点では、BHEの法人顧客は農業者が主だったが、今では最大顧客の5社のうち3社がIT企業である。電気料金が低い場所を求めてアイオワ州にやってきたのではないかと思っている。
  • BerkshireはWalter Scott, Jr.およびGreg Abelと共同でBHEの株式の91%を所有しているが、BHEがBerkshireに配当を支払ったことはなく、内部留保は280億ドルになっている。電力会社は高配当なのが通例だが、我々のスタンスは「投資し続けられるならそれほど良いことはない」である。
  • 現在、BHEには時価総額1兆ドル超の電力会社でも運営できる経営陣が揃っている。そのため、Berkshireは機会があれば大手電力会社でも買収する準備がある。

投資について

  • 以下が、Berkshireが所有する株式のうち、年末時点で評価額が高かった15銘柄である。
  • 325,442,152株あるKraft Heinz Holdingは、共同出資で所有しているためここには載せていないが、Berkshireの貸借対照表にはGAAP基準で138億ドルとして計上してある。ただし、年末時点の評価額は105億ドルしかなかったことを述べておく。

  • チャーリーと私は、上記の2,480億ドルを株式市場での賭け金コレクションだとは思っていない。ウォールストリートが格下げしたから、ガイダンスを下回ったから、「今日の話題」にのぼったから等の理由で終わらせる情事ではないわけだ。
  • これらは我々が部分的に所有する企業であり、加重ベースで運営に必要とされる純有形資産の20%以上のリターンを得ている企業である。また、これらは過剰な負債なしで利益を得られる企業でもある。
  • このレベルのリターンを生み出せる、大型で、確立していて、わかりやすい事業を行っている企業というのはどのような状況下でも卓越しており、30年物の長期国債などに比べると驚くようなリターンを出すことができる。
  • 金利については、チャーリーも私も守備範囲でないのでまったくわからないが、我々の(偏見的かもしれない)見解で言うと、このトピックについて語る識者が示しているのは、未来の展望というよりこのトピックについて語りたい自分なだけなのではないか。
  • 我々が言えることは、現状の金利レベルが今後数十年に渡って続き、法人税も現状の低いレベルが続くのであれば、株式が長期的には長期国債などよりよっぽど良いリターンを生むだろうということである。ただし、いつなんどき株式市場に何かあるかはわからず、まれに半分またはそれ以上株価が下落することもあるので注意が必要である。

今後について

  • 30年前、当時80代だった友人のJoe Rosenfieldが、「死亡記事を書く時のために略歴を教えて欲しい」という忌々しい依頼の手紙を地元の新聞社から受け取った。無視していたら一ヶ月後に「至急」と書かれた封筒でまた手紙が来たそうだ。
  • チャーリーと私もずいぶん前に「至急」状態に突入している。だが、Berkshireはそれに対して100%備えているので、株主は心配しなくても大丈夫である。
  • 理由は、1)Berkshireの資本は多岐にわたる分野の事業に投資されており、全体平均で見ると魅力的なリターンを生むようになっている、2)1つの事業体にある複数の子会社事業は、重要かつ永続的な経済的優位性を生み出せるように配置してある、3)Berkshireの財務は、深刻な外部的ショックにも耐えうるように管理されている、4)有能でひたむきな経営陣がBerkshireを運営している、5)Berkshireの役員らは常に株主の利益と大企業には珍しい社風を育むことに注力しているからである。
  • この社風については、Larry CunninghamとStephanie Cubaによる新書「Margin of Trust」で詳しく書かれている。本書は株主総会でも販売される予定である。
  • チャーリーも私も、我々が亡き後もBerkshireには繁栄して欲しいと願っている。というのも、マンガー家のポートフォリオではBerkshireのポジションが他のどの投資先よりも大きく、私自身も純資産の99%がBerkshire株だからである。
  • 私はBerkshireの株を売却したことは一度もなく、今後も売却する気は一切ない。遺書にも、Berkshireの株は一切売却しないよう、そして売却しないことに伴う執行者の責任を一切免除するように書き残してある。
  • 毎年一部のBerkshire-A株がB株に置き換えられ、そのB株が様々な財団に分配され、それを財団が速やかに換金して助成金として給付する仕組みになっている。そのため、私のBerkshire株すべてが市場に出回るのには12~15年かかると推定している。
  • すべて売却してそれで短期国債を買っておくのが一番安全かもしれないが、Berkshire株をこの期間そのまま保有しておいても安全であり、見返りも大きいはずだと自負している。

取締役会役員について

  • 過去62年に渡り、私は21の上場企業で取締役会役員を務めてきた。
  • 最初の30年間は取締役会に女性役員がいることはほとんどなかった。そして、憲法修正第19条が成立してから100周年になるが、今でもまだまだ改善の余地がある状態だ。
  • 長年に渡って、取締役会の構成や義務について様々なルールやガイドラインが導入されてきたが、本質的な課題が才能があり誠実でひたむきな人材を見つけることだという点は変わらない。
  • 監査委員会が以前に増して目を光らすようになってきているが、財務表を操作してガイダンスや指標に合わせようとするCEOがいる場合はどうにもならない。
  • 報酬委員会がコンサルタントに頼るケースも増えており、報酬内容も以前より複雑になっている。
  • 1つ、とても重要なガバナンスの改善として、定期的にCEOを除いた役員会議を行うことの義務付けがあった。それまではCEOのスキル、買収判断、報酬などについて率直に語る機会がなかった。
  • CEOの買収判断は取締役会にとっては依然厄介な問題となっているが、それはCEOが反対派の批評を積極的に検討しないからだ。まあ私も人のことを言えないが。
  • とにかく、全体としてはCEOがやりたいようにやれる環境なので、買収の専門家を雇ってメリット・デメリットを取締役会で議論できるようにすると良いのではないか。昔から言うではないか、「ヘアカットが必要かどうかを理髪師に聞くな」と。
  • 役員の独立性が重要視されるようになってきているが、これに関する点で見過ごされがちなことがある。役員の報酬だ。年に6回ほど取締役会の会議に出席するだけで25~30万ドルの報酬を受け取っている役員を想像してみて欲しい。この地位があるだけで一般市民の平均収入の3~4倍稼げるわけである。
  • ちなみに、私が1990年代初頭にPortland Gas and Lightで役員をしていた当時は、メイン州まで年に4回通って100ドルの報酬だった。
  • また、役員は目立たないが、解雇されることは滅多にない。
  • となると、役員を兼任して報酬を増やしたい人が出てくるわけで、CEOにたてついたことがないという経歴のある候補者が有利になってくるわけである。
  • このような非論理的な状況にもかかわらず、これらの役員は「独立派役員」とされる。
  • 最近、とあるアメリカ企業のプロキシを読んでいたら、役員の8名が自己資金でその企業の株を買っていなかった。この企業は長い間低迷しているが、役員らは裕福にやっているようだ。自己資金で株を買うことで役員が賢明になるわけでも事業が先端を行くわけでもないが、個人的には自分で株を買っている役員がいる方が安心できると思っている。

その他諸々について

  • 自社株買いについてのチャーリーと私の考え方は、1)Berkshireが割安になっている、2)自社株買いをしても現金がたくさん残る、という場合のみ行う、である。本来の価値というのは数値化しにくい。そのため、チャーリーも私も「推定1ドルの価値が95セント」というレベルでは食指が動かない。
  • 2019年にはまあまあ割安な時期もあったため、50億ドルでBerkshire株の約1%を買い戻している。
  • 長期的には、Berkshireの株数を減らしたいと思っているため、割安になれば買い戻しする。一方、株価を支えるために買うことはしない。
  • 最低2,000万ドル分のBerkshire株を所有する株主で売却を希望する人は、BerkshireのMark Millardに連絡して欲しい。電話番号は404-346-1400だ。
  • 2019年にBerkshireがアメリカ政府に納税した額は36億ドルである。アメリカ政府が回収した税金は2,430億ドルなので、1.5%をあなたの会社Berkshireが担ったということだ。誇りに思って良い。
  • 2020年5月2日に開催される株主総会についての詳細はページA-2~A-3にある。Yahoo!が例年通りストリーミング配信を行う。
  • 1つ重要な変更がある。Ajit JainとGreg Abelも株主総会で登壇させて欲しいという要望があちこちからあった。納得できる要望である。今回は、レポーターたちに質問を送る際に、Ajit宛かGreg宛か指定できるようにする。
  • 5月2日には是非オマハに来ていただきたい。

まとめの終わり

てことで、結構時間かけて書き出しましたが、うーん、バフェットおじさんの口調というか、語りの良さはこういう箇条書きではあんまりわかんないですね……。

バフェットおじさんの株主への手紙は、おじさんが高齢ということもあるのかもしれないし、大御所になっちゃってるからかもしれないけど、わかりやすく言って聞かせてる感があると言うか、小難しい言い方をしないので、他のCEOの株主への手紙と比べても読みやすいです。

なので、「こういう時につくづく英語ができてればと思う」のなら、これをきっかけに原文読んじゃうのもいいかもしれないですね。特に、ここまで読んでくれた人はすでに内容がわかっている状態で読めるので、あたしがここでは盛り込めきれなかったニュアンスとかも感じられるかもしれません。

ではでは~。