こんにちは~、今村です。
昨日こういうツイートしました。
レイ・ダリオがインタビューで「現在の経済は(野球で言う)7回。あと2年ほど続くだろう」と発言。
— 今村咲 (@saki_imamura) 2018年9月11日
政府は金利を急激に上げるべきではない、投資家は慎重になるべき、次の危機は大暴落ではないかもしれないが、深刻な社会的・政治的な問題になるだろう、とのこと。https://t.co/QbjyqZV0XI
実は、このツイートした時点では記事の真ん中にある動画(インタビューの最初の4分)だけしか観ていませんでした。でもその後記事の一番下にあるフルバージョンを全部観たらわりといろんなことを話していて、もしかしてみんなも知りたいかな?と思ったので、一応まとめておきました。
よかったら参考にしていってください。
- 市場経済のサイクル
- 現在のサイクルの段階
- 今回の状況に似ている債務危機
- 深刻な社会的・政治的な問題になる可能性
- 効果的な金融政策の有無
- 政府ができること
- バブルは必然なのか?
- ポピュリズムとコミュニケーション
- 国際的な緊張関係
- 締めくくり
- おまけ
市場経済のサイクル
彼の新書「A Template For Understanding Big Debt Crisis」に詳しい説明があるそうなんですが、歴史を遡って今までの市場経済のサイクルをすべて調べたレイ・ダリオ氏によると、市場経済サイクルというのは、毎回異なった側面があっても必ず同じ段階を踏むそうです。
インタビュー中「サイクルには6段階ある」と何度か言っていて「各段階については説明する時間がないから本を読んでくれ」と言っていましたが、最終的には
【成長によって十分返済が可能な状況で債務がある、という健全な経済】
↓
【過去の成長をもとに徐々に不合理な将来の成長を見込んで実際の成長で十分返済できない債務が蓄積する、というバブルの始まり】
↓
【インフレに関係ないため中央銀行がそれに対応せずバブルが増長、というバブルの本格化】
……みたいな感じでサイクルは進む、と説明しています。
現在のサイクルの段階
ここで「今、企業債務が増加しているがもうバブルか?」と聞かれます。
これについては、ダリオ氏は「企業の収益に対する債務返済のレベルがまだ(リーマンショック前の)2007~2008年のレベルには程遠い」と述べ、「(野球で言う)7回。あと2年ほど続くだろう」と言っています。
今回の状況に似ている債務危機
その後、過去の債務危機として1935~1940年と2008~2009年の2つの期間を挙げて、過去100年の間に金利がゼロになったのはこの2回だけだと説明しています。
そして、1935~1940年と2008~2009年の2回とも
- 政府が紙幣を増刷
- 資産の値段が上昇
- 市場が上昇
- 貧富の差が拡大
というように事が進展したが、ポピュリズムが台頭した1935~1940年は特に現在の状況に似ていると述べ、現在の経済格差が過去最大になっていることを大きな問題として挙げていました。
深刻な社会的・政治的な問題になる可能性
ダリオ氏は、一定以上の裕福層だけが資本主義の恩恵に預かることができていて大衆はその恩恵に預かることができていないと指摘し、そのため広がり続けている経済格差は今後大きな社会的・政治的問題になると警告しています。
特に資金が足りていない年金やヘルスケアが大きな問題となり、市場が大暴落しないとしても成長は減速し、経済は厳しくなるだろうと言っていました。
効果的な金融政策の有無
さらに「うまく経済をコントロールできる金融引き締めなど存在しない、だからリセッションが起こるのだ」と断言しています。
金利をこれ以上下げることはできないし、量的緩和もできるところまでやってしまっているし、ポピュリズムの影響もあるため、効果的な金融政策はあまり期待できないそうです。
政府ができること
ここで「では今できることは何だ?」と聞かれ、ダリオ氏は「(バブルは)必然だからその後いかに対応するかを今から考えておくべきだ」と答えています。
具体的には、もっと自由に対応できる環境が必要だと言っています。
今まで金融危機が起こったたびに新しい規制などを作ってより安全な金融システムを作ってきたが、それが逆にできないことを増やしてシャドウバンキングシステムを作り出しているそうです。
「金利をいま上げておいて後からまた下げればいいのでは?」というコメントには、「ダメ、ダメ、ダメ、一旦上げたら市場すべての金利システムが影響されてしまうから」と却下しています。
そして必要な金融政策について「日本も特にそうなんだが、政府が金融資産を買い上げるだけではなく、個人レベルの購入を促進しなくてはならない」と述べています。
バブルは必然なのか?
……とここで、「金融危機は必然だと言っているがそうなのか?」と聞かれます。
「賃金も上がりつつあるし、このまま良い具合に成長が続いたら経済格差も少しはましになるんじゃないか?」と。
これに対し、ダリオ氏は「いや、必然だ」と答え、国レベルで大衆の雇用の機会と生産性を高める取り組みをしないとダメだと主張しています。
ちなみに「ベーシックインカムとかそういうことではなくて?」と聞かれてましたが、その質問はスルーして、「必然だ、毎回必ず同じ6つの段階を踏むんだ」と言っていました。
ポピュリズムとコミュニケーション
ここで話が変わって「2009年の金融危機では確かに金融機関の救済措置はあったが大衆を直接支援する措置はなかった。でもなぜそういう措置になったかもっときちんと大衆に伝えていたら今のポピュリズムの状態は変わっていたと思うか?」と聞かれていますが、ダリオ氏は「大衆は理論ではなく感情で動く。それにそもそも全員がテレビを観て状況を理解しようとしているわけでもない。彼らが理解できるのは自分たちの現実だ」と答えています。
そして「特に右・左、持つ者・持たざる者など両極化が進むと対立が激しくなって一層感情的になる。暴力的になることもある」と警告しています。
国際的な緊張関係
国際的な緊張関係の問題もある、とダリオ氏は言います。
1935~1940年の金融危機の前にアメリカと緊張関係にあったのは日本だったが、今回は中国が問題になっているとのこと。
中国にとって関税自体はそれほど大きな問題ではなく、それよりも中国のトップダウン型国家の価値観とアメリカのボトムアップ型の国家の価値観が衝突していることが問題だそうです。今後それが長期的な敵対関係に発展すると経済影響も大きくなるとのこと。
締めくくり
最後に「現状を1936年や1937年と比べるとどうだ?」と質問され、ダリオ氏「そこまで酷くないが、余剰資金がなくなってきていて法人税減税の効果も出尽くしている。リスク・リターンとしてはネガティブに傾いてきているから、投資家は以前よりディフェンシブになるべき」と述べ、「政府は金利を急上昇させてはならない」と述べています。
また、資金不足の年金やヘルスケアに関連して債券の発行が増えるが、それによって準備通貨としてのドルの力にも影響が出る可能性があるとしています。
おまけ
……ということで、レイ・ダリオ氏の見解はこんな感じでした。
ちなみに、去年の11月にこういうツイートをしたんですが、
S&P500で見た1987~2000年の上げ相場(水色)と2009年から始まった上げ相場(青色)の比較。予想利益通りであれば今後はS&P500は青色の点線辺りで推移する計算で、その場合は1996年から起こった「非合理な高騰」とはほど遠いことになる。それ以上で推移したらバブルになる可能性あり。 https://t.co/KaBTXBsfhH
— 今村咲 (@saki_imamura) 2017年11月22日
これで見るとS&P500はまだ大体青色の点線の辺りで推移しています。まあビミョーに点線を超えてるかもしれませんが、非合理なレベルではないです。
収益に対する債務返済の割合で見ているダリオ氏とは根拠がちょっと違いますが、「まだバブルじゃない」という見解で言うとダリオ氏と一致していますね。
役に立ったかわかりませんが。とりあえず。
ではでは。