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ソーシャルレンディングって大丈夫なの?と思う人へ

みなさんも知ってるとおり、今村はソーシャルレンディングで投資しています。個人的には、ソーシャルレンディングには様々な利点があり、まだまだポテンシャルもあって今後もどんどん伸びると思っています。でもその一方、日本のソーシャルレンディングには構造的な問題もあり、怪しい会社や案件が出てくる可能性も十分あると思っています。

ソーシャルレンディングを始めたばかりの頃、簡単に会社を選ぶときに考えることについて一応調べてまとめました。

知っておくべきソーシャルレンディング市場の現状と仲介会社を選ぶヒント

でも、最近こういう経営してて大丈夫なのかと思うような会社も出てきて、投資詐欺との境界線は何だろう?みたいなことを考えるようになりました。で、これはもう少ししっかり細かいところまで知っておくべきだと思ったので、さらに調べました。今日はそれをまとめますので、ソーシャルレンディングって大丈夫なの?とか、どうやって投資詐欺と見分けられるの?と思ってる人も参考にしてください。

日本のソーシャルレンディングの仕組み

まず、どうして日本のソーシャルレンディングは融資先に関する情報開示ができずに一見怪しいのではないかと思わせるようなシステムになってしまっているのかの説明を兼ねて、その仕組みをざっとおさらいします。

日本のソーシャルレンディングの仕組みを図にするとこんな感じです。↓

Social lending scheme in Japan

貸金業法

日本では、金銭の貸付を「業」として行ってローン契約を結ぶには貸金業者として登録しなければなりません。「業として行う」というのは反復・継続する意志を持って行うということですから、例えば投資家が運営会社を介さずに直接融資先に貸付したいと思った場合、貸金業者として登録しなくてはならないということになります。

でも、貸金業者として登録するには、貸付業務に3年以上従事した経験者がいること、総資産が5,000万円以上あること、営業所・事業所があり固定電話があることなどの条件を満たさなくてはならないので、投資家がいちいち貸金業者として登録するのは無理な話です。これが貸金業者として登録している運営会社が間に入らなくてはならない理由です。

金融商品取引法

運営会社は第二種金融商品取引業者としても登録しています。これは投資家から資金を募り、その資金を貸し付けて得た利益を配当するために金融商品取引法に基いて匿名組合契約を結ばなくてはならないからです。ソーシャルレンディングでファンドを買ったことがある人は匿名組合契約を見たことがあるはずです。

ちなみに、第二種金融商品取引業者として登録するには、資本金が1,000万円以上、業務に関する十分な知識・経験を有する役員・従業員の確保や組織体制の整備などが条件となります。組織体制には営業部門から独立したコンプライアンス部門(または顧問)などが含まれます。

この仕組みの問題点

時代遅れの貸金業法

このように、上のような仕組みでソーシャルレンディングが行われるのは貸金業法による制限があるからですが、運営会社が投資家に対して融資先が誰なのか明示できないのも貸金業法による制限です。融資先を示した形で資金を募ると投資家が貸金業を行っているかたちになってしまい、貸金業法に違反してしまうからです。

借手としては名前を伏せてもらっているために返済が遅れてもイメージダウンに繋がらなくて都合がいいのかもしれません。でも普通に考えたら、融資先が誰なのか知ることができないまま出資を決めなくてはならないという金融商品はおかしいですし、融資先を開示して実質的に不公平な問題が出るのかというと、出ないと思います。

要はソーシャルレンディングという形態が新しくて、現状の貸金業法が対応できていない、または適切な法律がないままソーシャルレンディングが発展し始めてしまった、ということなんでしょう。

融資先が誰か分からないという問題

時代遅れの貸金業法については今後改善されることを祈るしかないんですが、それまでさしあたって考えなくてはならないのは、融資先を明示しなくていい状況(実際は明示してはいけないからしないのですが)というのは詐欺を生みやすい環境になり得るということです。

少し前にも、クエストキャピタルマネジメントという会社の投資詐欺の話がニュースになりました。これは「独自のコンピュータシステムが瞬時に市場の動向を判断して利益を出す」と謳って芸能人や著名人たちに100億円以上出資させていたけれどそのファンドは全く実態のないものだった、という話でした。

実態のないファンドをでっち上げて資金を募り、その一部を「見せ金」として配当することを繰り返す、いわゆるポンジ・スキームですが、最初からこのような投資詐欺を行うつもりだった場合、融資先を「明示できない」というのは都合のいい環境でしかありません。

あたしがやたらとキャッシュバックされると不安になるのはこういうことを思うからです。安愚楽共済牧場なんかも破綻する前は「こんなにもらっていいの?」というレベルの特典をオーナーに配布していたと聞きます。

投資家が取ることができる対策

じゃあソーシャルレンディングで詐欺に遭わないようにするにはどうすればいいのか?

貸金業と第二種金融商品取引業者の登録を確認

元本保証できないはずなのに保証しているとか、あり得ない金利を謳っているとか、そういう業者を避けるのは当然ですが、それ以外で最初に見るべきなのはこれでしょう。貸金業者または金融商品取引業者として本当に登録されているかは金融庁が出している名簿を見ればわかります。きちんと登録していないソーシャルレンディングの会社の話は今のところ聞いたことはありませんが、今後たくさん新しい会社が出て来てソーシャルレンディングが広がっていけば、どさくさに紛れて詐欺が出てくる可能性はあるのではないかと思います。

*maneo系列のソーシャルレンディング事業者はmaneoに金融商品取引業を委託していて第二種金融商品取引業者として登録していないこともあります。

*親会社・子会社間の貸付は貸金業の登録は必要ないので、そのような形をとっている場合は貸金業者として登録していないこともあります。

日本貸金業協会と第二種金融商品取引業協会の登録を確認

日本貸金業協会と第二種金融商品取引業協会はそれぞれ自主規制団体です。入会は任意ですので入会していなくても全く問題はないのですが、入会している業者は理論的には自主規制に準拠しているということになります。また、消費者としては、何か問題があった場合にそれぞれの協会を通せば苦情処理や紛争解決がしやすくなるはずです。

日本貸金業協会の会員かどうかは日本貸金業協会の名簿を見ればわかります。また、日本貸金業協会のサイトでは、無登録でありながら架空の登録番号や別の登録業者の登録番号を詐称している、実在する登録業者の会社名や登録番号を不正使用している、実在する登録業者の会社名に類似する会社名や登録番号を使用して関連会社等を装っているなどの行為が判明した悪質業者のリストもあります。

第二種金融商品取引業協会の会員かどうかについては、こちらの名簿を見ればわかります。投資家の視点から言うと、運営会社との取引は金融商品取引法に基いて行われるわけですし、万が一運営会社と何か問題があった場合は第二種金融商品取引業協会が委託している証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)に相談することになるので、できれば運営会社には第二種金融商品取引業協会に入会していて欲しいところです。

会社の信頼性や経営状況について考える

どこの系列の会社なのか、誰が出資しているのか、代表取締役をはじめ役員たちは誰なのかなど、これだけ見るだけでも結構会社の印象が違ってきます。例えば大手の企業が出資している会社は、代表取締役が100%出資してワンマンで経営している会社と比べて相応の監視があるはずです。

あと、自社のウェブサイトで役員や本物の従業員が顔出ししている会社は良いパフォーマンスを見せる傾向がある、というような話を聞いたことがありますが、融資先を明示できないなど制限があってもそれ以外の情報は出来る限り開示していて社員も顔出ししている会社と自社のウェブサイトには最低限の情報しかなくググってもそれ以上出てこない会社を比べたら前者の方が信頼できるのは当然です。

実際の経営状況は、会社によっては一定の財務情報を開示していることもあるのでそちらを見ることもできますが、会社がどのようなPRを行っているかやどのようにファンドへの出資を募集しているかを観察しているだけでも見えてくるものがあります。

例えば、新規登録や新規登録者による初めての出資に対するキャッシュバックなどは普通に顧客獲得のための経費として考えられますが、単に出資そのものを促進するためのバラマキ的キャッシュバックがビジネスを経営する上で合理的な戦略と言えるのかは疑問です。そしてその場合、そのような経営をしている会社を信頼して投資を続けて大丈夫なのかということを考えるべきです。大丈夫かもしれないし、大丈夫じゃないかもしれない。それは分かりませんが、しっかり考えて意識的に決断するのが大事です。

ファンドに組まれた案件をしっかり理解する

なるべく情報が多いものを選び、内容をしっかり確認すべきです。そして、融資先の審査がどのように行われているか、貸し倒れにならないようにリスク回避としてどのような手が打たれているか、万が一貸し倒れとなった場合にどのような資金回収が行われることになっているのかなどをきちんと確認しましょう。

リスクを回避するアプローチで設定した案件、想定リスクを最初から組み込んでリターンを得るアプローチで設定した案件、担保や保証で万が一の事態をカバーする案件などやり方はいろいろありますので、パッと見て印象で判断しないできちんと理解してから判断することです。ポイントはきちんとリスクと向き合って対策をとっているファンドかということ、そしてそのやり方やリスクのレベルに応じたリターンがあるかということです。

まとめ

元本の保証があってほぼ100%安全とされる金融商品ではまともなリターンを得ることができません。一方、まともなリターンを得ることが可能な金融商品に100%安全なものはありません。

なので、ここで重要なのは理解して自分なりにきちんと考えることです。もちろんそれが面倒な場合は、投資を通じてまともなリターンを得るのは諦めて勤労所得を得ることだけに専念するという道もありますし、投資を単なるギャンブルとみなして当てずっぽうに賭けに出るという選択もあります。でも、経済的自由を目指す人はある程度の労力を費やしてでも投資リスクを理解し、リスクとリターンをあわせて検討した戦略をもとに投資すべきです。それに、遠回りに見えても結局はこの方法が一番効率的なのではないかと思います。

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ソーシャルレンディングの会社の概要一覧はこちらでどうぞ。

ソーシャルレンディングの会社比較:2016年9月版(Part 1)

ソーシャルレンディングの会社比較:2016年9月版(Part 2)