経済的自由のススメ ~そのあと~

経済的自由を得て現役引退したあとの生き方

投資リスクに対する考え方を変えれば投資も変わる

以前から、日本の人ってあんまり投資しないのかな?となんとなく思ってたんですが、昨日たまたまこの図表を見かけて、え~っ、こんなに投資してないの??とビックリしました。

資金循環の日米欧比較

出典:日本銀行調査統計局『資金循環の日米欧比較』(PDFが開きます)

日本の家計の金融資産のうち、なんと半分以上の52.4%が現金か預金で、債務証券、投資信託、株式等は全部足しても16%です。これに対してアメリカでは現金・預金が13.8%、債務証券、投資信託、株式等の合計は52%なので、「現金・預金」と「投資」の割合がほぼ逆とわかります。

今村は、日本に帰ってきて日本円で稼ぐようになってからどうしていいのか分からない日本円が現金と預金のカテゴリーで若干増えていましたが、それでも完全にアメリカ寄りです。

なんでだろう?と考えて、これはリスクに対する考え方が違うせいなんじゃないかと思ったので、今日はちょっとその辺について書きます。

根本的な国民性の違い

どこで見かけた統計だったか思い出せないのできちんと引用できないんですが、一般的に日本人のリスク許容度は他の国の人に比べてかなり低いです。

リスク回避の傾向が強すぎて物事がなかなか進まないという話はよく聞きますし、日本では金融商品も元本割れする可能性があるものを避ける人が多いと聞きます。あたしが見た統計では、たしか日本人よりリスク許容度が低かったのはドイツだけだったと思います。

対して、リスク志向でリスク許容度がぶっちぎりで高かったのはアメリカです。確かにアメリカには「とりあえずやってみろ!失敗して学べ!」みたいな価値観があり、コツコツ地道にやるとかよりもリスクをとることを良しとする傾向があります。まあ、もともと祖国を捨てて新天地を求めてやってきた人たちが作った国ですしね。

とにかく、こういう根本的な価値観の差が金融資産の扱い方の差に現れているのは間違いないと思います。

リスクをどう考えるか

でも価値観だけじゃない気がします。

むしろ、価値観を裏付けする考え方なのかもしれませんが、何をリスクと見るか、リスクをどういう視点から考えるかなどにも差がある気がします。

なので、ここからはアメリカ寄りの割合で金融資産を持っている今村が個人的にどうリスクについて考えているか説明します。

機会費用

リスクについて考えるとき、「元本割れする可能性がある」とか「換金性が低い」とかリスクそのもののことだけを考えても意味がありません。

「そのような特定のリスクをとれる状況なのか」とか「それに見合うリターンが期待できるのか」のような、自分の状況やリターンと合わせて考えないとリスクを比較することができないからです。そして、このときに一緒に考えるべきなのが機会費用(opportunity cost)です。

機会費用とは、何かを選択することによって選択できなくなるものの価値のことです。

例えば、1時間働いたら1万円分の価値を生み出すことができる人が時給1,000円の仕事を1時間した場合、機会費用1万円を費やして1,000円稼いだということになります。それなら1,000円払って他の人に時給1,000円の仕事をしてもらい、自分は1万円の価値を生み出すことに専念した方がまし、と言えます。

特に日本のウルトラ低金利の状態で、普通預金や定期預金に自分の金融資産の半分以上を置いておくというのは、あたしにとってはそういう意味ではコストでしかありません。機会費用の方が大きいとしか思えないからです。

全体的なリターン

投資案件を1つずつ検討した場合、株のような価値が上下するものは元本割れする可能性もゼロになってしまう可能性もあるので、リスクがものすごく高く見えてしまいます。一方、元本割れがなく、一人あたり元本1,000万円まで保証される預金はものすごく安全に見えます。

でも例えば株の銘柄数を1から10へ増やしたら?

丁寧に選んでいけば全部が元本割れしたりゼロになってしまう確率は減っていきます。そしてたとえリターンがマイナスの銘柄があったとしても、その一方で市場を大きく上回る銘柄があって全体のリターンが十分プラスになるという確率が増えていきます。更に、保有期間が伸びれば、統計的に言ってもプラスになる確率は高まります。

そこまで考えて預金と比べると、株式投資のリスクはそれほど高くなくなり、低リスクvs.高リスクという視点は、低リターンvs.高リターンという視点に変わってきます。

個人的には、1銘柄に投資する元本の上限額を決めていて常に複数の銘柄を保有しているので、長い目でみてリターンが預金レベルまで下がることはありません。そうなると必要以上の現金を預金しておく意味がない、ということになります。

分散投資 vs. 集中投資

さて、「銘柄数を増やす」というのはつまり「分散投資をする」ということなのかと言うと、それはちょっと違います。

よく、投資先を四等分に国内株式、国内債券、海外株式、海外債券に分けるとか、値動きが逆のものを組み合わせるとかありますが、今村はそういう「どれが当たるかハズレるか分からないからとりあえず全部買っておこう」という考え方は「投資」ではなくて単なる「賭け」でしかなく、つまりはリスクでしかないと思っています。

「どれかハズレてもどれか当たるだろう」という前提で投資資金を割り振るのではなく、「これならどれも当たる可能性が高い」というポートフォリオを組む方が合理的という考え方です。

もちろん、100%当たることはまずないので、結果的にはハズレが出ることもあるでしょうが、最初から「これが下がるときはこっちが上がるから」という相殺を組み込む意味はあまりないと思っています。

きちんと自分が理解して投資案件として、有望と考えられるものだけに投資するやり方で案件数を徐々に増やしていく、というのがまずあって、そのあとに1つの産業に偏らないように種類を広げていくとか、成長株と安定株を混ぜるとかを考えていく方が断然効率がいいはずです。

リスクにどう慣れるか

最初のリスク許容度の話に戻りますが、これは半分「慣れ」です。

「ああ、このくらいは普通に下がるもんなんだな、そしてじっと待ってれば戻ってくるもんなんだな」という経験を積むとリスクに対する見方が変わってきます。

若い時から

若くて稼ぎも少ない時に投資に資金をまわすのは簡単じゃないかもしれないですが、若いころから少しずつ投資を経験している方が将来有利です。

複利運用的に考えて始めるのが早いほうがいいというものありますが、それよりもっと大きなポイントは、若いとやり直しがきくということです。失敗しても長期的な目でみて深刻なことになりにくいということです。

少額で練習してきた人が徐々に入金力をつけてくるケースと、資産相続や退職金などでまとまった金額が入ってきてから初めて本番勝負するケースでは、前者の方が有利なのは当然です。最初は失敗が多くて当然なら、若いうちに失敗しておいた方がダメージが少ないし、そこで学んだことを将来活かせます。

少額から

若くなくても少額で練習すれば大丈夫です。

リターンが出ても出なくても、「これは授業料」と割り切れば自分の投資行動を客観的に見て学ぶことができます。そして、日常的な変動に慣れながら金額を増やしていけば、多少の値動きは気にならなくなります。

具体的に言うと、±1%の値動きは日常の誤差のようなものだとした場合、10万円投資して1,000円分の値動きをコンスタントに経験してから100万円投資して1万円分の値動きを体験するのと、いきなり1万円分の値動きを体験するのでは、同じ1%でも体感するリスクが違うということです。

まとめ

リスクには、本質的でどうしても避けられないものと、理解と経験が足りないゆえに感じてしまう体感的なものがあります。

本質的なものは最初から避ける、またはきちんとヘッジするなどの対処をすれば良い、そして本質的でないけれど一般の人はリスクと感じているところにはチャンスがある、と考えれば、投資に対する意識も変わるんじゃないでしょうか?