今村の米国株の投資のやり方は基本的に「良質な銘柄を割安になったところで買ってあとは放置」というスタイルです。
一応、1年に2回くらい保有株をそれぞれざっと見直ししますが、9割は「このまま放置」のカテゴリーに入ってしまうので何もしません。*1
このときに「これはもう売る」と決めたものがあれば代わりになる銘柄を探しますし、市場が全体的に下がってる時にも何か割安に買えるものがないか物色することもあります。
また、何か買いたい銘柄があるときに、代わりに売ってもいいと思える銘柄があるかざっと保有株を見ることもあります。
でもそれ以外は放置。これを繰り返してるだけなので簡単です。
こちらの記事にも書いているように本質を見るというのがポイントですが、短期的な指標や決算報告などはまず見ないので、労力やストレスもあまりありません。
具体的なステップとしては、
- 優位性がある銘柄のリストを割安順に眺めて自分に合った銘柄をピックアップ
- 概要で実際の優位性を確認
- チャートの見た目で株価の変動を確認して選ぶ
これだけです。
……というわけで、市場に張り付いてるのは面倒、「買って放置方式」でアメリカ株に投資したいという人のため、具体的に今村がどの情報をどう使ってどういう基準で投資してるのか説明します。
Economic Moatがあり割安な銘柄から探す
Economic Moatとは
Economic moatとは、ウォーレン・バフェットが提唱したコンセプトで、経済的な堀、つまり、競合他社から事業を継続的に守る優位性を意味します。以下の5つがEconomic Moatになり得る具体的な特徴です。
- ネットワーク効果: 利用者が増えるとそれが更に利用者を呼ぶ特徴があるビジネス。利用者が増えて使える店舗も増えてくると利便性が向上して更に利用者が増える効果があるクレジットカードが良い例。
- 無形資産:ブランド名や特許。それがあるだけで他社が生産できないものを生産できたり、同じ製品でも他社よりも高く売ったりすることができる。
- コストの優位性:競合他社が真似できない特殊なコストの優位性。スケールや資源へのアクセスなど。
- 切り替えコスト:一旦使いはじめると他に乗り換えするのが大変なタイプのサービスや商品を提供するビジネス。企業向けのITシステムとか、資産運用サービスなどが良い例。
- 効率的規模:少数の企業が特定のニッチマーケットを既に支配していて、他社が参入しようにもコストが見合わない状態。
Economic moatがある企業は長期にわたって優位性を保つことができるため、継続的に高い利益を計上できる可能性が高くなります。つまり長期投資に向いているということです。
Morningstar StockInvestorで銘柄を絞り込む
では、どうやってEconomic moatがある銘柄を探すのか?
今村がこのためにフィルターとして参照してる情報がMorningstar StockInvestorです。
Economic moatがある銘柄に投資するというスタンスでモーニングスターのレポートをもとに2つのポートフォリオが運用されているのですが、どんな銘柄が検討されているか、どういう理由でどの銘柄を売買したかなどの解説を読むことができます。
実際に売買があったり新しいアナリストレポートが出たりするとメールでお知らせが届きますし、毎月月刊レポートも発行されます。*2
全て英語なので英語が苦手な人には使いにくいかもしれませんが、英語ができなくても会員用のサイトで簡単に銘柄を絞り込むことができます。*3
銘柄を絞り込むために利用するのは以下の3つのリスト。
- Tortoise Portfolio:Morningstar StockInvestorが運用しているポートフォリオの1つ。Tortoise(カメ)をイメージしてゆっくり着実に資産を増やすことを目指しています。
- Hare Portfolio:Morningstar StockInvestorが運用しているもう1つのポートフォリオ。Hare(ウサギ)をイメージして成長株を狙って資産を増やすことを目指しています。
- Tortoise & Hare Watchlist:TortoiseとHareのファンドマネージャーが注目している銘柄のリストです。
2017年9月現在、Tortoiseに21銘柄、Hareに19銘柄組み込まれています。このうち3銘柄が被っているので、両方合わせて37銘柄になります。
Watchlistには現在143銘柄入っていますので、この3つのリストを使うことで、検討対象銘柄を計180社に絞ることができます。
割安なものだけを検討対象とする
でも現在割高なものを検討しても仕方ないので、ここからさらに割安なものだけに絞り込みます。
このリストにある「Fair Value $」がモーニングスターのアナリストによる理論価格です。そして理論株価に対する現在の株価が「Price/Fair Value」なので、この列のヘッダーをクリックすればリスト中の銘柄を割安順に並べ替えできます。
「Price/Fair Value」が1.0以上のものは今は割安ではないということなので、この時点で検討対象から外します。2017年9月現在だと検討対象は97社まで絞られました。
ちなみに、3つのリストはダウンロードすることもできます。
自分の投資スタイルに合う銘柄をピックアップ
では、割安順に並んだ銘柄を他の指標と合わせて見ながら自分の投資スタイルに合うものをピックアップしていきましょう。
Fair ValueやPrice/Fair Value以外にTortoise & Hare Watchlistで確認できる指標には以下のようなものがあります。
- Morningstar rating:現在の株価と理論株価を比べて不確実性を盛り込んだ指標。まずまずのリターンがあると思われるものは★3つ、自己資本コストを大きく上回るリターンがあると思われるものは★5つとなります。
- Economic moat:economic moatの大きさ(Wide=広い;Narrow=狭い)
- Moat trend:economic moatの傾向(Positive=強化;Negative=弱化;Stable=現状保持)
- Stewardship:株主資本や資本配分に関する経営陣の能力(Exemplary=良い; Standard=普通; Poor=悪い)
- Uncertainty rating:理論株価の計算に含まれる要素の不確実性(Low=低い; Medium=普通;High=高い;Very High=非常に高い)
- Forward dividend yield:推定配当利回り
つまり、優良で割安、かつ自分のリスク許容度や好みに合う銘柄をピックアップする、ということです。
「Moatが強固でstewardshipが良ければ配当利回りは多少低くても成長性で期待しよう」とか「今保有している株はリスクが高いものが多いからとにかくリスクが低そうなものを選ぼう」のような感じで自分に合ったものをピックアップします。
ピックアップした銘柄のチェック
さて、この時点で検討対象として残っている銘柄はかなり少なくなっているはずです。
今村の場合はほんの少ししか割安でない銘柄も見送ることが多いので、だいたいこの時点で残るのは多くても5社くらい、既に保有しているものを除くと2、3社あればいい方になります。
たくさんの銘柄がリストに残っている人はここで優先順位を付けて、投資予算分の銘柄が決まった時点で検討をやめることができるようにするといいでしょう。
銘柄の概要を確認
Morningstar StockInvestorを購読している場合、それぞれのリストで銘柄名をクリックするとアナリストのレポートを見ることができます。
先に述べたように日本語で得られる情報より濃いので、頑張って読むことをオススメします。
でもどうしても英語が苦手で読みたくない人は、どんなことが解説されているかだけ述べますので、似たような情報を日本語で探して自分がピックアップした銘柄を検討してみてください。
- Economic moat:具体的に何がeconomic moatを形成しているのかという解説
- Valuation:理論株価の計算に含まれている要素と仮定の解説
- Risk:どのようなリスクがあるかについての解説
- Management:経営陣の能力、方針などについての解説
- Financial health:資本の状態
ここで知りたいのは、自分がこの企業にグッと来るかどうかということです。
これから何年間も保有するという前提で「多少上下してもこの企業なら信じて保有し続けられるぞ」と思えるかどうかです。
「四半期ごとの業績」や「株主構成」や「発行株式数」のようなデータを見て他社と比べたい場合は米国会社四季報を見たりしてもいいと思いますが、今村はあまりその辺は見ていません。
チャートで株価の変動を確認
この銘柄なら長期保有してもいいかも……と思えたら、チャートをチェックします。Morningstar StockInvestorではチャートは出てこないので、証券会社のサイトや株式投資情報のサイトに移動してなるべく長期の値動きをみます。
例えばこれはBerkshire Hathawayのチャートですが、1997年から2017年までの間、9.11同時多発テロやリーマン・ショックなどで下落しつつも復活して成長し続けているのが分かります。
続いて過去10年、5年、3年、1年というふうに期間を変えてどんな動きをしていたか確認します。ちなみにBerkshire Hathawayの過去1年の値動きはこの通りです。
過去20年の成長図とかなり違って、145ドルから180ドルくらいの間で動いています。
ここで考えたいのは以下。
- このくらいの幅の変動が続いても自分は平気か
- 今買うべきか
この辺りは、ここまでの過程で見てきた情報を踏まえて判断します。
以上です。そして買ったら基本的に放置、というわけです。
もっと簡単にしたい!という場合
ここまでいたって簡単な方法を紹介してきましたが、それすら面倒な人はMorningstar StockInvestorが実際に運用しているTortoiseまたはHareのポートフォリオをそっくりコピーするという手もあります。
ちなみに、S&P 500 Indexと比べたリターンは以下の通り。
また、売買があればメールで通知が来ますので、実際にコピーするのも簡単です。
Tortoise Portfolio
出典:Morningstar StockInvestor August 2017 Vol.17 No.2
Hare Portfolio
出典:Morningstar StockInvestor August 2017 Vol.17 No.2
まとめ
長期投資用の米国株の選び方として、
- 業績の数値や株式投資に関わるPER、PBR、ROE、EPSなどの指標を一切見ない
- 最初のステップですでに勝率が高い銘柄に厳選してあるので失敗する確率が低い
- 具体的な概要などは5つくらいに絞ってからしか見ないので手間もかからない
- 長期保有する前提なので一旦買ったら何も考えず放置しておいて構わない
という、とても簡単な方法を紹介しました。
Morningstar StockInvestorも今村がガチでおすすめします。
あとは基本的にやるかやらないかです。是非試してみてください。
追記:
Visaを例にして具体的に何をどう見るかについて書きました。こちらを併せて読むと分かりやすいかも。
追記その2:
2020年9月にこの記事のアプデ的なものを書きました。
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日本から米国株に投資するにはマネックス証券が便利。
*1:最近ライフサイクル的なステージが変わったので、今後はもう少し楽しんで売買増やすかもしれない。
*2:購読料は2017年9月時点で年間135ドル。
*3:ただ、日本語では手に入りにくい情報が得られるのは確かなので、今後アメリカ株に長期的に投資していきたい人はGoogle翻訳を使うなりしてレポートも参考にすることをオススメします。