経済的自由のススメ ~そのあと~

経済的自由を得て現役引退したあとの生き方

投資方針や戦略をたてるときに考えたい自分のライフサイクル

みなさん、どんな考えや方針を持って投資してますか?

改めてそう言われると明確な方針なしでなんとなくやってるなぁとか、なかなか自分の方針が固まらないんだよなぁっていう人、いませんか?

または、一応方針はあるけど貫いてないなぁとか、方針や戦略はあるけどこれでいいのか自信がないんだよなぁっていう人。

そんな人にちょっと考えてもらいたいのが、自分のライフサイクルです。

投資の方針や戦略は自分のライフサイクルとともにシフトしていくべきものです。また、どんな方針が正しいかは自分がライフサイクルのどの時点にいるかによって変わってくるものです。

ですから、そういう認識を持てば、今なかなか固まらない方針をどの方向で固めるべきか見えてくるかもしれないし、今の方針でいいのかどうかも分かってくるかもしれません。

……というわけで、今日は投資と自分のライフサイクルについて書きます。

事業のライフサイクル

まずその前に、事業のライフサイクルについておさらいします。

一般的に、事業には(1)導入期、(2)成長期、(3)成熟期、(4)衰退期、という起業して、事業拡大して、安定して、途中でなんらかの形の経営革新がない限りいずれは衰退していく……というサイクルがあります。

経営革新があれば半分成熟した状態で成長期が延々と続く場合もあるし、衰退しかかってももう一度復活することもあります。実際のそれぞれの期間の長さは様々です。

で、このサイクルに株式的な視点を加えると、こんな感じになります。↓

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もちろん上場しない企業もあるし、Berkshire Hathawayみたいに何が何でも配当は出さないっていう企業もあります*1

でも、だいたいのイメージとしては、導入期後半から成長期前半くらいに上場して、最初はとにかく事業拡大に集中するため収益は主に事業に再投資、そして事業が安定してくるにつれて徐々に株主還元が始まるという展開になります。

投資家の視点で言うと、銘柄の将来性の見極めがしやすいかどうかという意味で、導入期の企業への投資が一番リスクが高く、成熟期で実績も配当も長期間に渡って可視化された企業への投資が一番リスクが低くなります。

でもリスクが低くなるとともに、当然ですが期待できるリターンの幅も狭くなってきます。

自分のライフサイクル

さて、次は自分のライフサイクルですが、ここでは年齢と収入・支出ベースで見たライフサイクルを上の「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」にあてはめて考えていきます。

要は自分の人生に残された投資期間と投資するうえで新しく投入できる資金の移り変わりを考えるわけです。

例えば今村は自分のライフサイクルを、

  • 導入期はもう終わっていて、
  • 現在の「生活費+アルファ稼いで投資に回すよ!」という状態は成長期で、
  • 「あとは今ある資金を運用するだけで老後の資金は作れるから、生活費分だけ稼いでればいいや」という段階に移ったら成熟期の前半に入った状態、
  • 「ここからは労働所得なしで生活できるよ」となったら成熟期の後半、
  • で、「死ぬまでにお金を使い切るぞ!」となったら衰退期

……という感じで考えています*2

人によっては、給与がこれ以上あがらないと思った時点で成熟期と定義したいかもしれないし、子供がいて一旦大学費などで投資に回す資金がなくなる時期があると予想される人は成長期が一時期途切れてのちに再開するというシナリオになるかもしれません。

その辺は自分に合わせて考えればオッケーです。

自分のライフサイクルを考える意味

でもなぜ自分のライフサイクルが投資と関係あるんでしょう?

それは、長期的なリスクとリターンという観点で考えたときに自分のライフサイクルと投資を関連付けた方が投資の最適化を図れるからです。

簡単にまとめるとこんな感じです。↓

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資産も入金力も増加傾向にあり、残された投資期間が長い成長期は、人生で一番リスクをとっても良い時期です。そしてこの時期の主な目的は資産形成です。

一方、資産が減少傾向で入金力がゼロ、そして残された投資期間もほとんどないという衰退期は人生で一番リスクを回避すべき時期です。この時点の目的は生活資金を繰り出すことです。

つまり、ライフサイクル的に考えると、若い頃はリスクをとってキャピタルゲインを狙い、歳をとるにつれてリスクの最小化を図ってインカムゲインを狙うのが最適ということになります。

リスク許容度は人によって違うので、実際にどれくらいのリスクをとるかは人によって異なってきますが、人生というスパンで見たとき、どのレベルのリスクで始まったかに関わらず歳とともに自然とリスクを減らしていくことになるという考え方です。

自分のライフサイクルに合わせた投資のメリット

「成熟期の後半頃からはリスクを最小化していって安定のインカムゲインを狙う」ということのメリット(というか必要性)は説明するまでもないと思います。

でも「成長期は人生で一番リスクをとってもいい時期だからリスクをとれって短絡的すぎじゃない?」と思う人もいるかもしれないですね。

それは正論です。相応のメリットがなければリスクをとる意味はありません。

なので、自分の成長期に、リスクをとってあえて成熟期の事業ではなくまだ成長期の事業に投資し、それを長期間保有するメリットを挙げておきます。

  • 今キャピタルゲインを楽しんで後にインカムゲインが楽しめる可能性がある
  • 成長期で企業が収益を全て事業に再投資している間は、配当所得(とそれに伴う税金)が発生しないので投資の効率が良い
  • 配当が出ない限り、資金の再投資先を探す必要がない
  • インカムゲインで生活資金を賄おうとするとかなりの資産が必要になるので、若い頃にキャピタルゲインの恩恵を受けて資産形成を進めておくと、のちのち大きく有利
  • 配当が出るようになってから株価と配当利回りが徐々に上がってきた場合、実質の利回りがかなり高くなる(株価100ドルで配当利回りが2%でも、買値が20ドルだったら実質の利回りは10%になる)

もちろんこれらは「買った銘柄がハズレじゃなかった」という条件を満たして初めて得られるメリットですし、ハズレる可能性もあります。

でも、若い頃であればそもそもの投資額が比較的小さいはずなので、ハズレて失う金額も少ないはずです。

また「リスクに慣れる」という、ちょっと数値化は難しいけれどかなり価値がある経験を積むこともできます

歳をとるにつれて取ることができるリスクは減る一方です。なので、若い時点できちんと計算したリスクをとるスキルを身につけてリスク許容度をあげておくと有利になり、人生通してのリターンがかなりプラスになるはずです。

自分のライフサイクルを反映したポートフォリオ

さて、ここまで銘柄レベルで話してきましたが、これは自分が成長期ならグロース株ばかりを集めろということではありません。

自分のリスク許容度に合ったレベルで全体を見たときにライフサイクルが反映されるようなイメージでポートフォリオを組む、ということです。

そもそも全部の銘柄が自分が思ったように成長する保証はないので、構成的にキャピタルゲインを狙うものの割合とインカムゲインを狙うものの割合を徐々にシフトさせていけば良いと思います*3

ちなみに、今村の「グッと来る銘柄を買って放置」というスタイルの「グッと来る」にはそういう意味もあります。

自分がどういう状況にいるかによって何にグッと来るかが微妙に変わってくるからです。例えば、今村のポートフォリオは現在キャピタルゲイン寄りですが、フリーランスに転向したばかりでまだ仕事が起動に乗っていなかった頃に買ったP&Gが混じっていたりします。(笑)

市場が強気か弱気かということよりも自分の状況が強気か弱気かということを考える、というわけです。

まとめ

自分のライフサイクルが全てというわけではないですが、たまにマクロ的視点で自分の投資人生を考えてみるのも悪くありません。

現在自分がいる位置は長い目で見るとどうなのかをたまに確認すれば、たとえ市場が上下しても一喜一憂したり自分の投資方針を曲げたりしないですみますからね。

 

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リスクについてはこちらでも書いています。 

www.saki-imamura.com

あと、なんでもリスクをとればいいというわけではなく、Economic Moatがある銘柄がオススメ。ちょっと内容は古いんですが、Visaを例にしてこちらで説明しています。 

www.saki-imamura.com

また、ある程度の年齢になったら相続についても考えておくのがオススメです。 

www.saki-imamura.com 

*1:2017年の株主総会でバフェット氏が「今後は配当を出すこともあり得る」と発言したので将来的にはあるかも。

*2:追記:2018年に「これからは労働所得なしで生活できるよ」という成熟期の後半に入ったにもかかわらず、楽しいから減らしつつもダラダラ仕事しています。追記その2:2019年に現役引退しました。

*3:追記:今村は2019年に現役引退して「衰退期」に入りましたが、予想より早かったので残された投資期間がまだまだあること、そして思ったよりも資産形成ができた上での引退だったこともあり、ポートフォリオの構成はまだそれほどインカムゲイン寄りになっていない状態です。なので、アーリーリタイアを目指している人にはライフサイクルの考え方は完全に当てはまらないかもしれません。