経済的自由のススメ ~そのあと~

経済的自由を得て現役引退したあとの生き方

両親にエンディングノートを書いてもらうことにしました

あたしが25年間のアメリカ生活に終止符を打って日本に戻って来たのにはいろいろな理由があるんですが、その中の1つが「あたしがアメリカで死んだら日本の家族にもの凄く迷惑がかかる」でした。というのも、当時、何年も原因不明の体調不良に悩まされていて、それが年々悪化して「このまま行ったら死ぬか、障がい者レベルの動けない人になるわー」っていうところまで来ていたので。それで自分が死んだり動けなくなったりしたらどうなるか考えるようになり、マズイと思ったわけです。

葬式どうするかとか遺体どうするかとかね、ちょっと現地の友人に軽く頼んでおけるようなことじゃないじゃないですか。でも英語がろくにできない日本の家族にそんな難易度高いことさせるの無理です。動けなくなって介護とか必要になっちゃっても同様。それに故人の不動産、車、家財一式なんかを異国で売ったり処分したりするのだって大変です。

でもそんなこんな考えてるうちに、結局救急車で運ばれる羽目になっちゃいました。でまあ最終的には原因が分かって手術して回復したんですが、自力で不動産、車、家財一式すべて処分して日本に戻って来てからは、今後自分に万が一のことがあっても迷惑があまりかからないようにエンディングノートを書かなきゃとずっと思っていました。

さらに、すっかり元気になって自分の心配が減ってきてからは逆に両親のことが心配になってきて、両親にもエンディングノートを書いて欲しいと思うようになりました。

……てことで(←前置き長い)、自分のエンディングノート書いて親にもそれぞれ自分のエンディングノート書いてもらうことにしたので、今日はその話をします。

まずエンディングノートについてざっと勉強

一応ざっと勉強しておこうと思って「失敗しないエンディングノートの書き方」を事前に読みました。

最近エンディングノートを書く人が増えているようですが、書き始めても中途半端になっていたり、きちんと書いていないのでのちのちトラブルになるケースもあるようです。その理由の1つは遺言と区別がついていない、または遺言と同じような効果を期待しているということ。よく考えればわかることのような気もしますが、そんなこと考えないんですよね、普通。で、考えないままエンディングノート書くから難しくなったり、きちんと書けていなくてトラブルが起こる、と。

遺言や遺書との違い

なので、まず違いを確認。

  • 遺言: 遺言者の死後に本人の意志が尊重されて実現されることを目的としたもの。民法に定める方式に従って書くことで法律上の効力を持つ。遺産に関しては、法定相続と違うことをしたい場合は遺言が必要。その他法的効力をもとに実現させたいことがあるときも遺言が必要。
  • 遺書: 自分の死後に特定の相手に読んでもらう個人的なメッセージ。法的効力はなし。
  • エンディングノート: 終活ツール。自分の人生、人間関係、資産などについて棚卸して、万が一のことがあった場合の事務的事項や人生の終え方に関する希望を記すもの。法的効力はなし。

トラブルになり得るケース

そしてトラブルになるのは以下のようなケースです。

  • 法定相続人以外の人に遺産を残すなど、法定相続と異なる希望をエンディングノートに記しているが遺言がなく、法的効力がないため遺族が揉める
  • エンディングノートに選択肢がチェックされているが、詳細や意図が分からずどう実行すればよいのかで親族が揉める
  • なんらかの事情でエンディングノートに記されている希望に沿うことができないのだが、どうしてそのような希望だったのか理由がわからないために親族がどの代案にするかで揉める
  • エンディングノートを書いていたことを知っている親族がいない

エンディングノートは遺言ではないので、記された詳細はあくまでも参考として使われることになります。つまり、尊重はしてもらえるかもしれないけれど、関係者同士が内輪もめしたらどうにもならない、ということです。なので、(1)自分の希望を理由も含めてきちんと説明することと(2)揉めることを想定して必要であれば遺言を書くことが必要です。そういう意味では、例えば普通に法定相続通りに遺産を分けようと思っていても自分の法定相続人たちが揉めるだろうと想像できる場合は、遺言を一筆書いておくと自分の死後に家族内で諍いが起こりにくいかもしれません。

そしてどのエンディングノートにしようか検討

エンディングノートのタイプ

エンディングノートは、普通に出版社やNPOから発行されているものの他に、地方行政が住民に配布しているもの、相続相談業者や葬儀業者が自社の宣伝を兼ねて無料で配布しているもの、ネットでダウンロードできるものなどいろいろあります。

業者が作成するものはやはり営業目的なので内容に偏りがあることが多いようです。地方行政が作るものはもっと中立的で意外と使えるらしいのですが、うちの地域では提供されていませんでした。それでいろいろネットで見てみたんですが、ダウンロードして人数分プリントアウトするのが面倒、何ページにも及ぶのでプリントアウトしても管理しにくい、それにどれがいいのか比べるのが大変すぎてそもそも選べないという理由から普通に出版されているものをAmazonでポチることにしました。

エンディングノートに含まれるのは一般的に以下のような内容です。

  • 履歴、人生史、家系などについて書く欄
  • 財産、負債、保険、年金などについて書く欄
  • 家族・親族、友人・仕事関係の連絡先について書く欄
  • 持病・既往歴、かかりつけ医、常用薬などについて書く欄
  • 介護、任意後見、終末医療などについての希望を書く欄
  • お葬式やお墓についての希望を書く欄
  • 遺品についてや遺書があるかについて書く欄
  • 自分の思いを綴る欄

大体どのエンディングノートにも一般的な項目は入っていますが、出版者や著者によってどの項目に重点が置かれていて詳しく書き込めるようになっているかが多少違ってきます。なので、自分にとって書いておきたい情報が多い項目が何か、そしてどの項目がそれほど重要でないかによって選ぶエンディングノートが変わってきます。

検討したエンディングノート

コクヨ エンディングノート もしもの時に役立つノート

Amazonでベストセラー1位になっています。書き込みやすそうだし、カバーもついていて耐久性も良さそうです。コクヨには「遺言書キット」や「からだを大事にするノート」などエンディングノートと併せて使うと良さそうなものもあるので、セットで買いたい人にはいいかもしれません。写真などのデータを入れたCD-Rを保存するポケットもついています。個人的にはCD-Rなんてもう使わないのでそれはどっちでもよかったんですが、必要事項がバランス良く入っていて書きやすそうだと思いました。

もしもノート

コクヨとどちらにしようか迷ったんですが、今回はこのエンディングノートにしました。あたしの主な目的は(1)お互いになにかあったときに必要事項を探す手間を省くことと(2)万が一の事態のときに関するお互いの希望を事前に知っておくことで、目標はズバリ「親にとにかく必要最低限のことを書いてもらうこと」だったので、「難しそう」とか「何を書いていいか分からない」とか思わせないで、「このくらいなら簡単に書ける」と思ってもらえるものはどれかという視点で選びました。

人生を振り返るとか、思い出を語るとか、家族に対する気持ちを伝えるとか、今回どっちでもいい項目は少なくて、必要最低限のことが簡単に事務的に書ける感じです。内容的にはコクヨとほぼ同じですが、ページ数がコクヨの半分の32ページ、カバーなどもなくて仰々しくない、アナログな親に「CD-Rに写真データを入れておきましょう」などと提案しない、というのがポイントでした。

もしもの時に安心!エンディングノート

上記2つは2010年に出版されたものですが、こちらはもう少し新しくて2015年に出版されたものです。だからかもしれませんが、スマホのパスワードやウェブサイトのIDなどについて書く欄もあるようです。今回は「あたしも同じものを1冊書くから2人も書いてね」と両親に言う設定なのであえてそういうのが入っていない「もしもノート」を選びましたが、自分だけが書く場合はこういう方がいいかなと思いました。

ナカバヤシ プレシャスエンディングノート ~私の大切なノート~

個人的にはパッと見て「これは違う」と思ったので厳密に言うと検討していませんが、自分史や思い出、家族や友人へのメッセージを重点的に書きたい人、または資産や負債についてあまり書くことがなかったり、介護や終末医療などもまだ詳しく考えられなくてチェック方式で簡単に済ませたい人にはこちらがいいかもしれません。

エンディングノートを両親に手渡して記入のお願い

……ということで、もしもノートを自分の分、両親の分、妹の分と4冊購入し、妹にはAmazonからギフト設定で送りつけ、両親には直接手渡して「あたしも妹も1冊ずつ書くから、2人も1冊ずつ書いてくれる?」とお願いしました。

その際、事前に学んだことを踏まえて以下を説明しました。

  • 遺言のような法的効力はないということを念頭に置いて書く
  • 鉛筆で書いてOK
  • 少しずつ書けばOK(もしもノートには項目ごとに日付を入れられる)
  • あえて言えば緊急時に必要なものから書いていく
  • 考えが変わったら訂正してもOK
  • 自分の選択についてなるべく理由を書く

結果、わりと前向きに受け止めてもらえました。なので、「あたしも今月末くらいを目処に一通り書くから、そっちもそれくらいで一通り書いてみて」と一応期限もきっておきました。ふー。

まとめ

まだ頼んだだけだし、もちろん自分も1冊書かなくちゃいけないので、ここで終わりというわけじゃないんですが、ずーっとやらなくちゃと思っていたことをとにかくやり始めたというだけでかなり気が楽になりました。

みなさんは自分に何かあったとき大丈夫ですか?また、自分の家族に何かあったときどうしてあげればいいのか分かっていますか?是非一度考えてみてください。

 

 

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