先週は「就活辞めて新卒フリーランスで生きてく!」と若者が宣言したことに対していろんな大人がいろんな意見を出して盛り上がってましたねー。
きちんと考えてないとか、会社勤めしとけとか、フリーランスは副業でやれとか、そういうのが多かったような気がしますが。
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これに関するあたしの意見は(まあどっちでもいいんですが、一応)
- たしかに彼のプランは(現時点では)甘いし、突っ込みどころ満載
- でもやりたいって本人が言ってるんだからいいじゃん
- 日本ではスティーブ・ジョブズみたいな人材が出てこないとか言うけど、こういうリスクをとって冒険したいっていう若者を励ます文化がなかったら当たり前だってば
- いや、大人がアレコレ良かれと思って言ってることも分からないでもないよ、現実問題として失敗したら這い上がりにくい社会だもんね、日本って
- でも失敗したら這い上がりにくいし実際リスクをとって冒険したい若者があんまりいない社会だからこそ、やる気満々な若者のことは「失敗してもいいから頑張れ」って大人が励ますべきなんじゃない?
……といったところです。
まあ「会社勤めやっといた方がいいと心から思ってる大人」からしたら真逆のことなんか勧められないんでしょうね。
しかし「普通の就職が自由と思えなくなってる若者」は弱い。なんせ社会経験ないわけだし、「それは甘えだ」とか「逃げてるだけだ」とか言われても基準が分からずあんまり反論できない。
で、その辺の意識のギャップがどこから来てるのかとか、今後の社会で生きていくにはどういうことを考えるべきかってことについて、新卒フリーランスしたい人もそれを批判したい人も一度読んでおくべき本が、落合陽一さんの『これからの世界をつくる仲間たちへ』です。
コンピュータテクノロジーが進化して人工知能が人間を超える時も近いと言われている今、これが人間や社会をどう変えつつあるのかを「便利になった」「効率的になった」という表面的な次元だけで考えるのでなく、もっと根本的な次元で理解することが大切と説き、ホワイトカラー労働者が人工知能に取って代わられるであろう未来に備えて何を目指すべきか語っています。
これから社会に出る若い世代の人たちには、
- いろいろな知識を広く浅く持っているだけで、何の専門性も独自性もない「意識だけ高い系」になるな
- ガッツや気合で勝負するな
- コンピュータに効率的に運用される人にならず、強いモチベーションを持ってコンピュータをツールとして使えるようになれ
- 自分を肯定して己の価値基準を持て
- オンリーワンでナンバーワンになれ
- 考え続けるための思考体力をつけろ
- ……
などと具体的にどう生きるべきか説明しています。
親の世代に対しては、
- コンピュータやインターネットのもたらす技術的・文化的変化によって具体的に何が起こるか理解しているか?
- 理解していないために子供に見当違いな教育をしていないか?
などの疑問を投げかけ、
- 英語教育よりも母語で自分の考えを明確かつ論理的に伝えられる能力の方が重要になること
- プログラミングを習わせることなども同じで、それより価値があるシステムを考えだすことができるかが重要になること
などを例に挙げ、ホワイトカラー教育ではだめだと説いています。
個人的には、インターネットで人と人とを繋ぐことによって総当り戦的に集合知を出したり(ウィキペディアなど)作業の処理をしたり(クラウドソーシング)しても、結局コスト破壊に繋がるだけで、人がインターネットに並ぶ商品になってしまうだけだという話がかなり刺さりました。
翻訳を仕事としていて仕事自体は楽しいけど、ランサーズみたいな叩き売りに参加することは絶対したくないし、未来はあるのかとなんとなく疑問に思ってたけど、改めてやっぱり今後の身の振り方考えていかないとダメだと思いましたね。
あと、以前やりたいことの探し方について書いたことがありますが、
落合氏も意義についての考え方として、好きなことややりたいことに価値があるのかを考える5つのポイントについて説明しています。 なるほどね、と思わせます。
……ということで、「会社勤めしといた方がいいと思う大人」と「なんとなく普通の就職じゃマズイ気がすると思う若者」の意識の差には、テクノロジーによる変化の感じ方の差もあるのかもしれません。
ホワイトカラーの仕事で安定を得てきた経験をもとに(それが続くと仮定して)語る視点
vs.
そんな経験はなくてただコンピュータと競うことになる未来に自分の未来を重ねて不安に思う視点
と見たら、ギャップがあったとしても当然ではないかと。
つまり、「新卒フリーランス vs. 就職」みたいな本質的じゃない議論なんてしてないで、今後のIT世界で自分はいかに生き延びていくかをまず考えるべきなんじゃないですかね。
そのうえで、大企業のリソースを使った方が有利だと思う人は就職すればいいし、独自性を追求するのにフリーランスの方がよければフリーランスの道へ進めばいいわけなんだから。
……ということで、若い人たち必読です。
これ読んで、どうして今の大人たちが勧める道じゃダメなのか、じゃあ自分はどうしたいのかじっくり考えてみてください。そうやって決めたことなら、大人に何言われてもきちんと説明できるはずなので。
そして大人たちも若い人たちがこれから直面する社会を理解するために読んでください。そのうえであなたたちが培った知恵と経験を共有してあげればきっと若い人の役に立つはずなので。