以前からみんなのクレジットのお金のバラ撒き方にはいろいろ疑問がありましたが、やっぱりというか、証券取引等監視委員会が3月24日に金融庁に行政処分を行うよう勧告しました。
今日はどういうことなのかざっと見て、投資家として学ぶべきことについて考えます。
証券取引等監視委員会の発表
以下が証券取引等監視委員会が出した発表です。
株式会社みんなのクレジットに対する検査結果に基づく勧告について:証券取引等監視委員会
分かりやすいように概要図もあります。これ。↓
出典:証券取引等監視委員会(PDFが開きます)
今回問題になっている事項
親会社と関連会社への貸し付け
上の図にある「甲グループ」とは、みんなのクレジットの親会社と関連会社です。
「不動産ローンファンド」や「中小企業支援ローンファンド」と称して出資を募集していましたが、貸付先のほとんどはみんなのクレジットの親会社と関係会社だったとのこと。
ファンド出資金の状況
そしてファンドに出資された資金の管理として問題になっているのが以下。
- 既に償還された17本のファンドのうち、10本のファンドの償還金の原資としてまだ償還期限に達していないファンドの資金が使われていた
- キャッシュバックキャンペーンの原資として、親会社へ貸し付けていたファンド出資金がみんなのクレジットへ還流されていた
- 親会社に貸し付けしたファンドの出資金が、みんなのクレジットの代表取締役の白石氏の指示により彼の預金口座および彼の債権者の口座に送金されていた
- 親会社の増資にファンド出資金が充てられていた
貸付先及び担保に係る誤解表示
以下が指摘されています。
- 親会社や関係会社への貸付けであるにもかかわらず、複数の不動産事業会社等に貸付けして貸倒れリスクを分散しているかのような誤解を与える表示をしていた
- 担保の大半が、信用リスクによっては価値が大きく下がる可能性がある親会社の発行する未公開株式だった
- 担保が設定されていない貸付けもあった
- それにもかかわらず、ファンドの貸付債権が保全されているかのような誤解を与える表示を行っていた
親会社の財務状態
そして、最大の貸付先となっていた親会社の財務状態にも問題が。
- 平成28年5月末から11月末の間、毎月多額の損失を出し続けて累計赤字を増加させていた
- 同年8月末から10月末の間は債務超過状態だった
- 同年11月末に、みんなのクレジットのファンド出資金を使った増資によって債務超過を解消していたが、5月以降ファンドから多額の資金を借り入れていたことから短期借入金が流動資産を大きく上回っている
これに対する証券取引等監視委員会の見解は、親会社に対して貸し付けられたファンドは返済が滞る可能性が高い、ということです。
ソーシャルレンディング投資家として学ぶべきこと
貸付先が明らかにされない状況がどれほど問題なのか今回の件で実証されてしまったわけですが、今村は個人的には、これを機に時代遅れの貸金業法を見直す動きが業界や行政で出てくるんじゃないかと期待しています。
で、とりあえずそれまで投資家としてどう考えるべきかですが、以前もちょっと書いていますが
やはり案件だけでなく仲介会社自体もしっかり見極めること、これが今回の件で一番再確認することであり学ぶべきことでしょう。
みんなのクレジットについては、
- 異常なレベルでお金をばら撒いていた
- そしてそのわりにはファンドの募集に時間がかかっていて、満額になることもほとんどなかった
- サイトの会社情報や代表取締役の情報が乏しかった
- ファンド自体の情報も最小限だった
というように、何を原資にお金をばら撒いているのか、どうして募集に時間がかかって満額にもならない仲介会社を通して資金を集めたい借り手がいるのか、どうして会社や代表取締役の情報が少ないのか、など、普通に考えておかしい点が以前からたくさんありました。
それを踏まえてハイリスクだと認識しながらキャッシュバックによるハイリターンを狙うという選択はもちろんアリだったと思いますが、きちんと考えずキャッシュバックなどだけ見て投資するというのはダメ、ということです。
つまり、当事者意識を持ってきちんとした会社経営をしていることが垣間見られるか、情報提供に関して積極的か、などをチェックしたうえで案件の内容を確認すべきということです。
ちなみに当事者意識についてはこちらでも書いています。
「ダメな会社の法則」でソーシャルレンディングの会社を比較してみました
まとめ
平成28年11月末現在、みんなのクレジットでは償還期限が来ていないファンドは56本あって出資金は約17億6000万円にもなるそうです。これがどうなるかはよくわかりませんが、なるべく投資家に被害が出ないことを祈るばかりです。
今回、1つの業者に関してこういうことが起こりましたが、ソーシャルレンディング業界自体はこれからも急速に成長していくと思います。どの仲介会社が生き残っていくのか、どんな新しい会社が出てくるのか、楽しみです。