経済的自由のススメ ~そのあと~

経済的自由を得て現役引退したあとの生き方

メディアのバイアスと個人のバイアス

もう12月というのが信じられない今村です、こんにちは。

わかっていたと言えばわかってましたが、やはり大統領選挙は揉めましたねぇ……。こんなにアメリカ国民にストレスを与えた大統領選挙はいまだかつてなかったんじゃないですかね。

今村は今はアメリカ在住ではないし選挙権があるわけでもないので、「どちらが勝とうとみんなが選んだ大統領を受け入れよう」と腹をくくっていましたが、それでも双方の支持者の言動を見ていてとてもストレスでした。はぁー。

またそれとは別に、報道や大衆の反応、ツイッタランドでのコメントなどを見ていて「ああ、大統領選挙の前に書いておくべきだった」とずっともやもやしていたこともありました。

ニュースメディアのバイアス、そして個人のバイアスについてです。

そう思っていたなら書けよ!って感じですが、今さら書いても遅いかも……という気がしてちょっと迷っていました。でもいつものパターンで迷っているのが面倒になってきたので、遅かろうがなんだろうが書きます。

投資や経済的自由には直接関係ありませんが、読んでもらえると嬉しいです。

ニュースメディアの位置づけと品質

一言でニュースメディアと言っても、どういう視点からどういうニュースを流しているかという意味で、ピンからキリまでのニュースメディアが世の中には存在します。

また、今は情報が溢れかえっていて誰でも簡単にニュースにアクセスして拡散できる時代です。ニュースメディアを直接見ないでインフルエンサーのキューレーションだけに頼っている人もたくさんいるんじゃないでしょうか。

つまり、どの情報源が客観的で正確なのか、個人個人がきちんと判断することが今まで以上に重要になっているということです。

フェイクニュースや情報操作も増加して手口も進化しているなか、判断が難しくなっているのは確かです。Facebook、Twitter、Google(YouTube)レベルで拡散されるニュースについての規制が議論されるのもそのためです。

でも、基本的な知識があるだけで判断はかなり楽になります。今日はまずそのツールを1つ紹介します。

Media Bias Chart(R)

今村が知る限り、一番きちんと継続的にニュースメディアの品質の評価を行っているのはAd Fonts Mediaです。

Ad Fonts Mediaは「消費者にニュースメディアの品質を伝え、ニュースメディアを間接的に良くしていこう」という趣旨で設立された公益法人です。Meida Bias Chart(R)というメディアの客観性と正確性を一覧にしたチャートに関するライセンスや教育資料などの売上や寄付金を資金として運営されています。

2020年6月版のチャートは以下の通り*1

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Source: Ad Fonts Media
  • バイアス(横軸):中心が中立的なニュースメディア、右へ行けば行くほど右派寄り、左へ行けば行くほど左派寄りのニュースメディア
  • 信頼性(縦軸):上から「事実の一次情報」→「事実の二次情報」→「詳細な分析、または二次情報と分析」→「分析または信頼性に当たり外れがある二次情報→意見または信頼性に当たり外れがある二次情報」→「一方的または不完全なストーリー、または不公平な主張」→「プロパガンダ、または誤解を呼ぶ情報」→「不正確または捏造情報」という評価で、上の方が信頼性があるニュースメディアで下のほうが信頼性がないニュースメディア
  • 緑の破線領域:一番信頼性が高いニュースメディア。分析や解説など主観的要素が多少混じっていても、事実の部分は正確であり、また中立性もある程度保っている
  • 黄色の破線領域:当たり外れがあるメディア。分析の比重が増えてきて主観的な傾向が見えてきている
  • オレンジ色の破線領域:信頼性が低いメディア。中立性がなく、正確性にも欠けていることが多くなってきている
  • 赤色の破線領域:信頼性がないメディア。

ロゴが重なっちゃって見にくい部分もありますが、

  • ニュースメディア業界全体を俯瞰する
  • 自分が読んだり見たりするメディアを選ぶ
  • どういう前提でニュースを読めばいいのか判断する

という意味のツールとしてとても有用です。

Ad Fonts Mediaではインタラクティブなバージョンもウェブサイトで公開していますので、チャートを拡大したり、どこか特定のニュースメディアの位置を検索したい場合はこちらを使うと良いです。テレビメディアとウェブメディアが別々になっていないなど、公式の印刷版とはちょっと違いますが、データ自体はこちらの方が新しいようです。

Interactive Media Bias Chart - 2 - Ad Fontes Media

いくつかのニュースメディアについてのコメント

ではツールを紹介したので、それを踏まえて、参考までにいくつかのメディアについてコメントしておきます。

AP、Reuters

上のチャートの頂点に君臨しているのがAP*2とReutersです。

幅広い分野のニュースを早く、正確に、簡潔に報道するのが特徴のメディアで、ビジネスや経済のニュースもを真っ先に報道することが多いです。その結果、他のメディアにもよく引用されています。

ただ、あまり分析や解説がニュースに含まれず*3情報量が最低限なので、各ニュースの持つ意味は自分で考える必要があります。

CNBC、NBC、MSNBC

CNBCは今村が毎朝ツイートするニュースの主な情報源なので、なぜCNBCなのかにもちょっと触れて、NBCとMSNBCとの違いについても少し書いておきます。

以下、上のチャートではわからないのでインタラクティブ版からCNBC、NBC、MSNBCだけ抜き出してみました。

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Source: Ad Fonts Media

NBCはアメリカの3大テレビネットワークの1つです。あと2つのABCやCBSに比べると若干左寄りですが、信頼性としてはABCやCBSと同じくらいのメディアです。

対してCNBCは、NBCと同様NBCUniversal News Groupの傘下にあるメディアですが、アメリカのビジネスニュースや世界の経済ニュースに特化しています。わりと中立的なポジションにいますし、信頼性も悪くありません。今村がCNBCを主に見ている理由の1つはこれです。

またAPやReutersと違って、CNBCはニュースそのものだけでなくニュースが持つ意味のざっくりした解説も記事に盛り込んでいることが多いです。これが今村がCNBCを利用する2つ目の理由です。

MSNBCは、もともとMicrosoftとNBCが共同で設立したメディアです。のちにMicrosoftがオンラインニュースの部門をNBCUniversal News Groupに売却したので、現在はNBCUniversal News Groupの傘下になっていますが、MSNBCは自他とも認めるリベラルメディアになっているのでちょっと別物という感じです。

MSNBCのテレビ部門(一番初めの図参照)はウェブ部門より更に左寄りで、大統領選挙の報道でも言わなくていいレベルでトランプ陣営をけなしてました。今村は「左寄りは何と言っているか?」という視点で見るとき以外は見ないですね。

その他、緑の破線の領域にあるニュースメディアあれこれ

Bloomberg、Financial Times、Market Watch辺りもビジネスや経済のニュース情報源として悪くないです。今村もたまに見ています。

これらでなくてCNBCのニュースをツイートするのが多い理由は、単にCNBCの方がわかりやすいグラフが入っていることが多く使いやすいからというだけだったりします。

New York Times、Washington Post、WSJなども良いニュースメディアだと思います。詳しく掘り下げた記事が多いので、詳しく知りたいときに読むと良いです。

今村がこれらのメディアをツイートすることがほとんどないのは、単にツイッターでまとめられる情報量じゃないからですね。

緑の破線の領域外にあるニュースメディア

緑の破線領域だけでもたくさんの良い情報源があるので、基本的にはわざわざそれ以外のメディアを見る必要はないのでは、というのが今村の意見です。

オレンジ色の破線領域にあるメディアについては、極右派・極左派のメディアがどんなプロパガンダやデマを流しているかという観点であれば、見に行く価値はあるかもしれません。

いずれにせよ、インフルエンサーだろうがなんだろうが、信頼性が低く偏見のあるメディアの情報を拡散している人が言っていることは(意図せずやっていることもあるかもしれませんが)あまり信用しないようにした方が良いです。

個人のバイアス

少し前にNPRでこんなポッドキャストを聴きました。

hiddenbrain.org

人は、何か強い価値観を持っている場合、

  • それを真実と見なし、相反する情報を間違っていると認識しがちであり、
  • その結果その相反する情報の出どころを疑う傾向がある

という話です。心理学的な話で、様々な実験でもこの傾向は確認されています。

例えば、アメリカでは意見が真っ二つに分かれる問題として銃規制がありますが、銃規制すべきと強く思っている人にとってはそれが正しいことであり「銃規制に反対するなんておかしい」という見解になりがちで、規制なんてとんでもないと強く思っている人にとっては規制がないことが正しいことで「規制を求める人の気がしれない」という見解になりがちです。どちらにもそれぞれの言い分があり、そもそも「銃」が象徴するものが双方にとって違うので、一概にどちらが「真実」でありどちらが「真実」でないとは言えないのですが、強い信念を持っていればいるほど自己正当化の方へいってしまうわけです。

 

今回の大統領選挙でも「まさにそれ」という事例がありました。

知っている人は知っていると思いますが、トランプ氏御用達メディアはFox Newsです。Fox News(特にテレビの方)は昔から信頼性がイマイチの右寄りメディアでしたが、トランプ氏が毎晩テレビでFox Newsを観ているということもあり、ずっと前からトランプ氏応援メディア的な位置を確立していました。

ところが、大規模な選挙不正があったというトランプ陣営の主張が過熱してきたころ、そのFox Newsが、「立会人を入れずに開票して不正を行った」などの主張に対して「それは事実ではない、嘘である」と言い切ったり、トランプ陣営が裁判所に妥当な証拠を提出していないことに対して「トランプ氏を応援したくないわけではないが、証拠が出ていないは確かだ」とコメントしたりする場面がありました。

ではここで「トランプ氏応援メディア」の言うことにトランプ支持者たちは納得したでしょうか?

答えはノーです。

それだけでなく、今までずっと(信頼性がイマイチの)Fox Newsを信じていたのに、一転して「Fox News sucks!(Fox News 最悪!)」と叫んでデモ行進するトランプ支持者たちが現れるという事態まで発展しました。

そしてその後、たくさんのトランプ支持者たちがFox NewsからOAN*4に乗り換えました。

つまり、信頼性があるメディアかではなく、自分たちが信じていることを裏付ける情報を流してくれるメディアかで判断したというわけです。

まとめ

自分の価値観を持つことは大事です。

ただ、価値観というのはあくまでも自分にとっての真実であるということを覚えておかないとダメなんじゃないかなと思います。

また、そもそも自分の価値観は偏見的なメディアに影響されていないだろうかと疑うことも大事なんじゃないかと思います。

両極化が進み、お互いがお互いを頭から否定し、自分にとって都合の良いメディアだけに耳を傾けるようになったら、社会はますます上手く機能しなくなってしまいます。メディア自体もますます腐敗するでしょう。

でも、もっとたくさんの人が意識的に品質でメディアやインフルエンサーを選び、煽りに乗らないようにするだけで、かなりましになるんじゃないですかね。

 

*1:Ad Fonts Mediaさんから許可を頂いて掲載しています。

*2:ちなみに、今回の大統領選挙で今村がツイートしていた開票速報はAPのものでした。なぜAPだったのかと言うと、各州の選挙法や州内の動向事情に詳しいアナリストたちを揃え、どの時点で他の候補者の挽回が不可能になるかを計算させて当確予測を出しているAPは、大統領選挙の開票速報に関してはゴールドスタンダードと言われているからです。今回は訴訟を予想して当確予測をなかなか出さなかったニュースメディアが多く、報道がてんでんばらばらになっていましたが、普通の大統領選挙ではAPの速報が王道です。

*3:分析や解説がないというわけではなく、ビジネスや経済のニュース記事の中にあまり含まれていないという意味です。Reuters Graphicsなどにある解説は素晴らしいです。

*4:OANは最初に紹介した6月版のチャートではウェブ版のFox Newsとほぼ同じ位置にいますが、インタラクティブ版の最新データではテレビ版のFox Newsとほぼ同じ位置まで下がってきています。以前からデマを流すことで有名でしたが、100%完治を謳うコロナ治療薬があるというデマを流したということで最近YouTubeでアカウントが凍結されたメディアです。