経済的自由のススメ ~そのあと~

経済的自由を得て現役引退したあとの生き方

原油をめぐる今までの背景、現状、今後

お久しぶりです~。

1ヶ月に1本のペースでブログを書いてると言いつつ何も書かずに3月が終わってしまった今村です、こんにちは。

新型コロナの感染拡大、株式市場の暴落など、世間はいろいろ大変なことになってますが、みなさんどうですか?

今村は、9.11のせいでリストラされ、その後リーマンショックのせいでまたリストラされているんですが、振り返ってみると「リストラその1が全く想定していなかった業界に転職するきっかけになり、リストラその2がフリーランスになるきっかけになって今の自分がある」みたいなところがあるので、今回もこれがきっかけで何か面白い展開が生まれる可能性はあるかもなぁ、ちょっとワクワクするなぁ、と思っています。

大変な状況はいつか終わるし、これがなければ生まれなかったであろう良いものも生まれると思うので、「This, too, shall pass.」と唱えて乗り切りましょう。

 

さて、今日久しぶりにブログを書こうかなと思ったのは、この記事を読んだからです。

www.foreignaffairs.com

原油に関するニュースもたまにツイートしてますが、簡単な話ではないことが多く、120字のツイートでは伝えにくいなぁと思っていました。

そしたら、この記事がわかりやすくまとめてくれていました。

で、ああ、そうか、これをもとにして、今までツイートしなかった情報も含めてブログ記事を書けばいいのか、と思ったので、早速そうすることにします。

今までの背景

今までの背景がわかっていると現状を理解しやすくなるので、まず背景。

原油の世界需要は2009年からずっと伸びています。でも需要の伸び率は新型コロナに関係なく2017年から下がってきています。

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出典:https://www.cnbc.com/2020/04/01/5-charts-that-explain-the-saudi-arabia-russia-oil-price-war-so-far.html

それに対応すべく、ロシアとサウジアラビアが中心となったOPEC+が2017年1月から生産量を制限して供給調整をしてきていました。

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出典:https://www.cnbc.com/2020/04/01/5-charts-that-explain-the-saudi-arabia-russia-oil-price-war-so-far.html

一方、そんなOPEC+諸国を横目に、シェール革命の恩恵を受けたアメリカは原油市場のシェアを拡大し始め、2018年には世界最大の生産国にまでなりました。

ロシアやサウジにとっては面白くない展開です。

特にロシアは、アメリカが強気でロシアに制裁を仕掛けられるのはシェールオイルがあるから(=ロシアの原油に依存しなくていいから)だとわかっているので、面白くないはずです。

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出典:https://www.cnbc.com/2020/04/01/5-charts-that-explain-the-saudi-arabia-russia-oil-price-war-so-far.html

そんなこんなしてる中、新型コロナ感染が中国で拡がり、需要の大幅減少を見込んで原油価格が下落してきました。

IMFの推計によると、サウジアラビアは、もともと1バレル80ドルあたりを切ってくると財政赤字を避けるのが厳しい状態です。なので、サウジは価格の下落に歯止めをかけるためにさらに生産量を制限することをOPEC+に提案しました。

でも、1バレル42ドルで財政黒字を保てるロシアは、新型コロナ感染の拡大がどれほどの規模と影響になるのか6月まで様子見することを主張しました。

こうしてOPEC+が決裂し、その後サウジは価格が下がる分を埋め合わせることを理由に増産を発表し、これを受けたロシアも増産する決断を下したため、原油価格は暴落したというわけです。

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出典:https://www.cnbc.com/2020/04/01/5-charts-that-explain-the-saudi-arabia-russia-oil-price-war-so-far.html

今後どのような展開になるのかはわかりませんが、よく言われているのは、アメリカも減産に協力しなければロシアとサウジアラビアは減産に同意しないかもしれないということです。 

アメリカの対応

じゃあアメリカが減産を約束すれば済む話なのでは?という感じですが、アメリカにとってそれはあんまり簡単な話ではなかったりします。ロシアやサウジアラビアと違って、政府に自国の原油生産量をコントロールする権限がないからです。

生産量を規制できるのは州ごとの規制委員会で、例えばアメリカの原油の4割を生産しているテキサス州の規制委員会には「無駄が出ることを防ぐため」という理由で生産を制限する権限があります。ただ、そのような制限はここ半世紀なされたことがなく、たとえ権限を行使しようとしても賛否両論となって簡単に実施できないだろうと言われています。

それに、できたとしてもそれはその州だけです。他州と連携できていなければアメリカ全体で生産量を制限するのは難しそうです。

なので、減産は大手石油会社に働きかけて自主的にやってもらうしかないわけです。

実際、トランプ氏は4月3日時点でExxon、Chevron、Occidental Petroleum、Devonなど大手石油会社のCEOを招集して会合を開いています。

トランプ氏がここで減産の話を持ち出したのかはニュース記事を読んだ限りではわかりませんが、トランプ氏のコメントは「なんとかなるだろう。今の時点では海外の原油に関税を課すつもりはないが、いざとなったらそれもできる」でした。

ちなみに、4月6日時点のニュースでは、

www.cnbc.com

  • プーチン大統領が参加国合わせて1日1,000万バレル減産することを提案
  • 両国の合意は間近
  • ロシアはアメリカの原油生産者も減産に参加するようアメリカ政府と交渉している

と報道されています。 

今後

……と言うことで、一定数以上のアメリカの原油生産者がどこかで妥協してロシアとサウジアラビアに協力できさえすれば、何らかの合意が得られそうな状況ではあります。

でも減産がなかった場合どうなるのか?

まず、現状の原油価格が下がり続けば、最終的にシェールオイル生産者は生産停止せざるを得なくなります。

ロシアとサウジアラビアの原油生産コストはそれほど高くありませんが、シェールオイルは生産コストが高く、原油価格が50ドルを切ってくると赤字経営になってくるからです。

実際、Whiting Petroleumが今月の初めに破産申請しています。

IHS Markitによると、このままではいずれにせよ年末までには1日あたり300万バレルの減産となり、これに伴って250万人の雇用も失われる計算になるそうです。

また、需要がない原油を各国がそれぞれ貯蔵するにしても、4月末~5月初頭にはどの国でも貯蔵容量を超えてしまう計算です。貯蔵するスペースがなくなれば生産を止めるしかなくなるので生産はストップし、原油価格はさらに暴落します。

ちなみに、トランプ氏が一時期「石油備蓄の枠がいっぱいになるまで政府が原油を買い支える」と言っていましたが、これにかかる費用は30億ドルです。

この間の経済刺激策の2兆ドルにはこの費用は含まれていなかったので、本当に実施するなら議会の承認が別途必要となります。

まとめ

いろいろ書きましたが、ぶっちゃけ根本的な問題は新型コロナ感染のせいで止まっている経済です。原油の需要が激減していることが第一の問題なわけです。

なので、アメリカ、ロシア、サウジアラビアの3国が合意してなんらかの供給制限をしても、そして貯蔵容量が満杯になる時期を遅らせることができても、経済が動き出して需要が戻ってくるまでは厳しい状況が続く可能性は大です。

でも、ざっくり背景と現状がわかっていれば、少なくとも今後の原油関連のニュースはわりとすんなり頭に入ってきて、投資判断もしやすくなるんじゃないかと思います。

まあ最終的にはどこかで収まるので大丈夫です。

This, too, shall pass. 

4月13日時点の追記

その後、こういう結果になりました。

「どうしても40万バレルの要請は受け入れることができない、10万バレルが限界」とメキシコが頑張ったので交渉が長引いていましたが、トランプ氏が「メキシコの30万バレルはアメリカが補うということでメキシコ大統領と話をつけた」と言ったので、こういう形で落ち着きました。

トランプ氏によると、メキシコが後日アメリカに返済する形なんだそう。

世界が原油減産に向かって協力していなかったら、生産コストが高いアメリカはいずれにせよ減産せざるを得なくなっていたはずです。なので、今回のトランプ氏の立ち回りは絶妙でした。

ただし、今まで以上に世界から嫌われるパターンじゃないかと思いますが。

一方、現在日々の原油需要は2,000~3,000万バレル減少していると言われています。

なので、1,000万バレル減産しても貯蔵容量の限界に達するまでの時間稼ぎにしかならないわけですが、価格競争のために増産→原油価格暴落という事態はとりあえず終わることになりました。

あとは、貯蔵容量の限界が来るまでに需要が戻ってくるか、ですね。