こんにちは~。暑さにすっかりやられている今村です。
もうね、夏が来たのはわかったから一回休憩入れて欲しいです……。
みなさんは大丈夫ですか?熱中症とか気をつけてくださいね。
さて、昨日こういうのをツイッターで見かけて、
マンハッタンにあるAmazon Prime Nowの配送センター。商品がランダムに保管されていて、注文が入るとコンピューターが商品をピックアップする最短ルートを提示する仕組み。あたしが見学したチェスターの配送センターも似た感じ。 https://t.co/pT8JQPaB7b
— 今村咲 (@saki_imamura) 2018年7月17日
あらー、チェスターのAmazon配送センターのレポート書くって言ってて忘れてたよ……と思ったので、また優先順位が引き下げられちゃって忘れ去られちゃう前に書いておこうと思います。
ツアーは「スマホ、財布、車の鍵のみ持ち込み可能、スマホは所持してて良いが、録音、録画、写真すべて禁止」という状態だったので、残念ながら自前の配送センター内部の画像はありません。
また、ノートとペンも持ち込みできなかったので、レポートは全てツアーが終わってから車に戻って記憶に残っていたことを書き出した今村のノートだけを頼りに書いています。
そんなこんなのレポートですが、一応頑張って書いたので、まあ読んでってください。
- チェスターのAmazon配送センター(RIC2)
- セキュリティ
- 環境
- 一連のプロセス
- 座標による在庫管理
- 守備範囲が決まっている商品回収係
- トヨタ生産方式の応用
- テトリス的な荷積みの技
- おまけ:Amazon配送センターのビデオ
- まとめ
チェスターのAmazon配送センター(RIC2)
今村が見学してきたのは、バージニア州チェスターにあるAmazon配送センターです。小型家電、オフィス用品、書籍、その他一般の小型商品を取り扱っている施設です。
Amazonでは、アパレル商品に特化した配送センター、大型商品に特化した配送センター、Amazonパントリー用の配送センター、Prime Now用配送センター、Amazon Fresh用配送センターなど、用途別に様々な配送センターがあります。
広さもわりと様々で、チェスターの配送センターRIC2は120万平方フィートある大規模な配送センターです。
120万平方フィートって、フットボール場28個分だそうです。東京ドームで言うと2.4個分くらい。
現地に着いてパッと見ただけで、今村は広大な駐車場の端まで行って配送センターのビル全体の写真を撮るのを諦めましたね。そのくらいの広さです。
↑諦めて正面のロゴだけ撮った写真
セキュリティ
ツアー参加者の出入りもそうですが、従業員の出入りも厳しくしています。
入口にはフルハイト・ターンタイプのセキュリティゲートがずらっと並んでいて、その奥には空港にあるような金属探知機のゲートがあります。
ツアー参加者は金属探知機の方はやらなくてオッケーでしたが、従業員は入るときも出るときもチェックされるそうです。
↑ツアー参加者がもらった入場許可証
環境
配送センターに入って最初に気づくのは騒音です。地下鉄で電車が常に行き交っているような音がします。
これはあちこちでベルトコンベアが結構なスピードで動いてるからなんですが、声を張り上げないと会話できないレベルです。
実際そのままだとツアーガイドが何を言ってるのかわからないので、ツアー参加者は全員ヘッドホンでガイドの声を聞く形でした。
働いてたらストレスになりそうと思ったんですが、慣れちゃうんでしょうかね?
↑支給されたヘッドホン
一連のプロセス
配送センターの一連のプロセスは以下の通りです。
- Amazonが直接販売する商品とFBAでマケプレ出店者が販売する商品が搬入されてくる
- 搬入されてきた荷物を開封し、商品をひとつずつバラして棚に入れる。このとき、ランダムに入れて「座標」で保管場所を記録する
- Amazon.comで誰かが何かをポチると、その商品の在庫のうちどの座標にあるものを出してくるべきかをシステムが判断する
- システムの指示に従ってその座標の棚の担当員が商品を回収し、ベルトコンベアに乗せて次の行程へ送る
- 顧客ごとの注文がまとめられ、仕切りがあるキャスター付きの棚に入れられる
- 棚をすぐ隣にいる梱包係のところに移動する
- システムが箱のサイズを判断するので、梱包係はシステムの指示に従って梱包し、ベルトコンベアに乗せる
- すぐ先で、宛名シールを貼る装置が重量が想定通りか確認し、宛名シールを貼る
- ベルトコンベアが発送方法によってパッケージを自動で仕分けし、荷積みの場所へ送る
- 荷積み係がパッケージをトラックに積み込む
座標による在庫管理
上のツイッターにあるPrime Nowの配送センターの映像でも説明してますが、Amazonでは、商品の在庫は予めバラして倉庫内で散らばるようにランダムに棚に入れています。
理由は2つ。
1つは、この方が効率的に注文された商品を出せるからで、もう1つは、倉庫管理的な視点から、スペースを効率的に使うのが重要だからとのことでした。*1
そしてこのランダムな保管を可能にしているのが、棚がどの建物内のどの縦列のどの横列にあって、収納場所がその棚の端から何番目の列の何段目にあるかというのをアルファベットと数字のコンビネーションで示した「座標」です。
スペースを無駄にしないで入れられる場所にテキトーに商品を入れて、座標情報が入ったQRコードをスキャンするだけでオッケーというわけです。面白いですね。
守備範囲が決まっている商品回収係
ツイッターで紹介したPrime Nowの配送センターでは、システムが1人の顧客の注文品を集める最短ルートを提示して回収係が注文品を全部集める形になっていました。
でも、チェスターの配送センターでは、商品回収の担当者ごとに守備範囲が決まっていて、自分の棚にある商品しか集めてこない仕組みになっていました。
顧客ごとの注文をまとめるステップはそのあと別に行います。
どうしてそうなっているのかについて詳しく突っ込んだ質問はできなかったんですが、おそらく、守備範囲が決まっていると、担当者も座標を見ただけでどのあたりなのか瞬時に見当をつけられるようになり、回収のスピートが上がるんじゃないかと思います。
また、食品を買う場合のように複数アイテムの注文でなく、単品注文の方が多くて顧客ごとの注文をまとめるステップがたまにしか起こらないのであれば、別にしておいた方が効率的になりそうです。
トヨタ生産方式の応用
なんとなくAmazonは古典的な手法は使わないイメージだったのでちょっと意外だったんですが、チェスターの配送センターではトヨタ生産方式がしっかり応用されていました。*2
例えば、カンバンで工程間の流れを管理しているとか、工程に異常があった場合はアンドンで周知するとか。
あとカイゼンにも力を入れているとのことで、定期的に従業員が集まって、どうしたらもっと効率を上げられるかコンテストをしたりしていると言っていました。
チェスターの配送センターの棚は下の方の段は引き出し型になっているんですが、これも「棚の下の方に入っているものは落ちやすく、落ちると間違った座標に戻されてしまうことがある」ということからカイゼンされた結果なんだそうです。
テトリス的な荷積みの技
一番最後の工程は、注文されたパッケージをトラックに積んで発送することですが、このときいかに
- すばやく
- 隙間なく空間を無駄にしないで(テトリス状に)
- ダメージを最小化する形で(大きな箱を使ってトラック内に壁を作るなど)
荷積みできるかというのがポイントとのことで、実際に練習用のシミュレーションセットがありました。
ツアーでも「誰かやってみたい人!」とガイドさんに言われて、子供が3人がかりでトライしてましたが、これはなかなか頭を使う作業だなぁと見ていて思いました。
シミュレーションでは空箱だったので子供たちも軽々運んでいましたが、実際は重いものもあるでしょうしね、大変です。
ゆくゆくはテトリスの最適解はAIに計算させて、それをアームロボに実行させたらいいんじゃないですかね。
ちなみに、Amazonにはいろいろなサイズの箱がありますが、全てテトリスしやすいように計算して作ってあるとのことでした。なるほどねー。
おまけ:Amazon配送センターのビデオ
自前の内部画像がないので、代わりに参考になりそうなビデオを2つ置いておきます。(どちらもチェスターの配送センターではないです。)
最初のビデオでは配送センター内の音がよくわかります。背景でずっと聞こえてるこの音です。
2:11あたりで見える風景もチェスターの配送センターに似ています。
ここに出てくる棚を運ぶオレンジのロボットはチェスターでは導入されていませんでした。(なぜか聞きたかったけど聞くチャンスがなかった……)
逆に、こちらでは人間が宛名シールを貼っていますが、チェスターでは機械がやっていました。↓
次のビデオは、アリゾナ州フェニックスの配送センターです。チェスターと大きさも同じだし、0:42~0:45あたりで出てくる棚の様子もほぼ同じです。
ホントにこんな感じで棚が延々と向こうの方まで並んでるんですよ!あとここの棚もチェスターのように下半分は引き出しっぽくなってますね。
1:17あたりに「座標」とバーコードも出てきます。
宛名を貼る機械は2:02あたりで出てきます。↓
まとめ
正直言って、ツアー自体はちょっと物足りない感じでした。
ヘッドホンを着用してガイドの説明を聞く形だったため、基本的に向こうの話を一方的に聞くだけで、ほとんどこちらから質問することができなかったんですよね。
途中で「あっ、あれは?」とか「これどうなってんの?」とかいろいろあったんですが、聞けないことが多かったです。
でも、配送センターってこうなってるのかっていうのがざっくりわかったのは面白かったし、Amazonが株主総会で「梱包にはまだまだイノベーションの余地がある」と言っていたのも「あー、なるほどね~」と思いました。
各工程内でいろいろ工夫したり、全体の工程を改善したり、はたまた配送センターのネットワーク自体を進化させたり、やれることはいくらでも出てきそうですし、規模がバカでかいのでちょっとの改善でも結構なコストカットができる可能性があるな、と。
今後どう変わっていくのか楽しみです。