経済的自由のススメ ~そのあと~

経済的自由を得て現役引退したあとの生き方

Forbesによるジェフ・ベゾス氏のインタビュー記事をまとめました

みなさん、台風21号は大丈夫でしたか?

今村んちはカーポートの屋根が吹っ飛んだりしましたが、とりあえずそのくらいで済みました。やれやれです。

今回の台風はアメリカのハリケーンの強度で言うと5段階あるうちのカテゴリー3に相当するものだったんですが、カテゴリー3だと日本はこうなるのかぁという観点でなかなか興味深いものがありました。

 

まあそれはどうでもいいんですが、今朝こんな記事を見つけました。

www.forbes.com

Forbesがジェフ・ベゾスと独占インタビューしてまとめた記事です。

特にすごい新情報はないんですが、なかなか面白いです。Amazonやベゾスに興味があって英語が読める人は読むことをオススメします。

へぇー、何が書いてあったのか知りたいなぁ、でも英語は苦手なんだよな……っていう人は、今村が頑張って要点をざっとまとめておいたのでこっちを読んでいってください。

 

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*インタビューの書き起こしではなくてForbesの編集者がインタビューをもとにまとめた記事です。引用してるところだけがベゾスの言葉で、あとはForbes編集者のまとめです。「Forbesの2018年9月30日号の掲載記事」とは書かれていないので、雑誌にはこの記事じゃなくてインタビューの書き起こしが掲載されてるのかもしれないです。ちょっとその辺はよくわかんないです。

大きさに制約がない市場

「事実上、市場の大きさに制約がない。市場が限られているビジネスはいろいろあるが、うちはそういう問題は全くないんでね」とベゾスは言う。

実際、ベゾスは既存の事業に関連した分野にAmazonを大きく拡大していく能力に長けている。

少し前にウォーレン・バフェットもインタビューしたが、「80年近く株式市場を見てきたうえで、一番目覚ましいビジネスだと思ったのは?」と尋ねたとき、「今まで見てきたなかで一番見事な業績なのはおそらくジェフ・ベゾスが今までしてきたこととこれからするであろうことだ」と答えていた。

制約なしで事業展開できる要因は以下の3つだ。

  1. Amazonはもともと収益より成長を重視することで有名な企業だが、実際に収益を無視して始めたAWSが大きな事業に成長した実績などで株主の信頼を得ているため、ほぼ自由に資金の再投資先を決めることができる
  2. Amazonが成長するためにはスケールの大きさが必須であるため、実際にそのような攻める姿勢が求められている
  3. 小売業とオンラインビジネスサービスで優勢だが、この2つはほぼ全部のセクターに関連しているためどの方向へでも事業展開ができる

手の内を見せないスタイル

大きな支出枠の中に隠しておいたり無関心を装ったりして新しい取り組みについてなかなか手の内を見せないのがベゾスのスタイルである。

公の場で発言することも少なく、インタビューの数も少ない。

トランプ大統領に攻撃されていても反応しない姿勢を貫いており、「去年Facebookが直面した政治的苦悩から学んだことはあったか」との質問には、それについては話す気はないという意志を示すかのように一拍おいてからきっぱり「ない」と答えている。

「ビッグデータの企業になりつつあるのでは?」という質問に対しても「Amazonをそういう企業だと思ったことはないね」と答えている。

Yesという言葉の重要さ

一般的な企業のやり方についてベゾスは「下級管理職の誰かが試してみたいアイデアを思いついたとするだろう?そうすると上司の承認を得て、その上司の承認を得て、その上司の承認を得て……ってやらなくちゃいけない。その中で一人でも『No』って言ったらこのアイデアはお蔵入りするわけだ」と言う。

そのため、Amazonでは複数のやり方で「Yes」へたどり着けるようにしている。

1つは「対面通行ドア方式」で、次に進むか進まないかを段階的に決断し、途中で賢明でないと判断されると下に戻されるやり方。実際、数えきれないアイデアの取り組みが部署レベルで行われている。失敗も歓迎される。

もう1つは「一方通行ドア方式」で、こちらは会社の方向性を変えるレベルの取り組みに適用される。ここではベゾスが以下の観点からプロジェクトを検討する。

  1. 斬新さがあるか(他社のマネはしない)
  2. 拡張性があるか(最終的に大きなスケールでできないのであればダメ)
  3. シリコンバレーで通用するレベルのROIがあるか

この3つを満たす場合、以下の2つのモデルのどちらに当てはまるか考える。

  1. 今ある顧客のニーズに応えられるもの
  2. 顕在化していないニーズを掘る必要があるもの

顕在化していないニーズを掘り起こす

Amazonが巨大企業に成長したのは顕在化していないニーズを掘り起こしてきたからである。

オンライン本屋で満足せず、DVDやおもちゃなどに拡大し、今では小売業全般の商品を販売している。

さらに内部で培ったテクノロジーやロジスティックの技術をサービスとして提供することで、Mechanical Turk、Fulfillment by Amazon、Amazon Pay、そしてAWSなどにも事業を拡大していった。

取り組みながら学ぶ

このように顧客志向でアイデアを出して取り組むことで生まれるのがスキルだ。

2007年にKindleのアイデアが出た際、内部からは「うちはソフトウェア企業だ、ハードウェアは難しい」という反対意見が出たが、「ハードウェアも作れる企業になることを目指すべきだから学び始める必要がある」というベゾスの意見で取り組むことになった。

結果、Kindleは成功し、Fireスマホなど失敗もあったが、のちにはEchoを開発できるほどになった。

「今ではハードウェアの経験値はあがってきたが、当時はそんなスキルはなかった。辛抱強くなくちゃいけない。スキルを学ぶためだけの時間なんてないからね。なにかを成熟させるには時間がかかることもある」とベゾスは言う。

そして今学んでいることは?

そんなベゾスが今学んでいることの1つがヘルスケアだ。

ベゾスは去年、バフェットとJPモーガン・チェイスのCEOジェームズ・ダイモンとともに、低コストでよりよいヘルスケアを社員に提供するプロジェクトを始めることを発表した。

「これは非営利のプロジェクトだから全く別だ」とベゾスは言うが、続けて「(彼らと開発する)打開策はNGO内に留まるが、各社が独自の取り組みを行うことは自由だ」とも言っている。実際、Amazonは6月にPillPackの買収を発表している。

もう1つは広告業だ。

Amazonの今年の広告収益は80億ドルに達するのではないかという勢いであり、これは去年のほぼ倍の額である。

消費者の購買意欲を予想しなくてはならないGoogleやFacebookに対し、Amazonは顧客が何を買ったのか、何を買うつもりなのかも分かっていることを考えると当然の展開ではある。

広告表示をすることに関しては、「(今まで培ってきた顧客との信頼関係は)非常に貴重なものだからこれを台無しにするようなことは決してしない。(信頼関係が)事業を拡大させてくれるのだからね」とベゾスは言っている。

Amazon Goの可能性

去年話題になったのはWhole Foodsを買収したことだったが、それよりも興味深い取り組みは1月に開店したAmazon Goである。

数々のAmazonの事業が1つにまとまったらどうなるかという可能性を示しているからだ。

Whole Foodsの買い物客のデータを網羅し、日々洗練されていくアルゴリズムやハードウェアをAIという形で使い、どの商品を手にとってどの商品を戻したか判断するカメラやセンサーの技術を使い、Amazon Payを利用して決済する。

ヘルスケアや広告がAmazonの新しい事業の柱になる可能性だとすると、Amazon GoはAmazonの様々な事業を横につなぐ可能性だと言える。

一番の肝となるAmazonプライム

一番重要な要素はプライムである。

もともとは会員費という収入をもたらすマーケティングのツールでしかなかったが、会員に特典や特権を提供することで次々と隣接商品やビジネスに展開していくツールとなっている。

プライム・ビデオやプライムデーが年々拡大されているのはそのためであり、こうしたプライム会員にアクセスするためにFBAの出店者はAmazonに手数料を払っているのである。

プライムの即日配送に対応するための物流拠点は、もともとAmazonのビジネスモデルにそぐわなかった食品などの分野への進出を支えることにもなっている。

つまり、本業の動力源となりつつ新しい市場展開の道を作るプライムは、単体ではビジネスとして成立しないが、Amazonの各事業をつなぐ中枢神経系のような役割を果たすようになっているのである。

AIとEcho

Amazon Goが今までつながっていなかったビジネスをつなげたように、AIもクラウドから小売まで様々なビジネスを一層つなげていくであろう。

Amazon.comの売り上げを伸ばし、コンテンツを活用しているEchoの成功にもそれは見て取れる。

「他のたくさんのテクノロジーに比べたときに一番興味深いのは、機械学習がいかに横展開可能かということだ。ビジネスでも行政でも、実際なんであろうと(機械学習を使って)改善することが不可能な分野は1つもないからね」とベゾスは言う。

長期視点の計画図

HQ2の場所については年内に決定するとのことだが、働く場所についてベゾスは「年々どこでも良くなってきている」と言っている。

「きちんとやり方を定めれば計画図に沿って働くことができるから、同じ建物にいる必要はない。同じ都市でなくても同じタイムゾーンでなくても構わない」

ベゾスが日々行っているのはほとんどこの「計画図」の作成のみである。日々の運営は全て部下に任せている。

ベゾスは自分の仕事に関して「今のことに引きずり込まれることはほとんどないね。自分は2、3年先のことを考えているし、幹部もほぼ全員そういう設定」と述べており、「四半期の決算報告後に『すごいね、素晴らしい四半期だ』と友人に言われるんで『ありがとう、でもあの四半期は3年前に出来上がってたからね』と返している。今も2021年の四半期の1つの計画を立てているところ」と説明している。

「アイデアを出すのが仕事。皆で座って1つのアイデアについて考えることもできるが、1時間で100個のアイデアを出してこのホワイトボード埋めることもできる。ブレインストーミングをしない週があるときはオフィスで『おい、お前ら、手伝ってくれよ』と文句を言ってますね」とのこと。

 

イノベーションするか、ジェフ・ベゾスにイノベーションされるかのどちらかだということをアメリカのビジネス界は心しておくべきだ。