経済的自由のススメ ~そのあと~

経済的自由を得て現役引退したあとの生き方

やりたいことを見つけて仕事にすると実際どうなるかという話:後編

はい、これ↓の後編です。

やりたいことを見つけて仕事にすると実際どうなるかという話:前編 - 経済的自由のススメ

1万時間後の成果

1万時間の法則ってありますよね?

特定の分野で一人前になるには1万時間は勉強や練習をしないとダメだという法則です。マルコム・グラッドウェルがOutliers*1という本で提唱した法則ですが、あの本が出たのは2008年11月、あたしがリストラされる直前でした。

で、リストラ後、急に時間がたくさんできて本を読みまくっていたときにこの本もたまたま読んでいたので、翻訳の仕事が楽しくて仕方なくて早く一人前になりたかったあたしは、その教え通りにとりあえず1万時間翻訳することにしました。とにかくどんどん案件をこなし、開いてる時間は勉強に費やして1万時間稼ぎました。

 

……みっちり3年かかりましたがw

 

でも結論としては、1万時間の法則、ホントです。

3年経ったころから今のレベルの年収が安定的に稼げるようになり、仕事のスタイルも確立されてきて、自分の仕事にも自信が出てきて、取引先を選べるようになり、車で言ったらクルーズコントロールで走ってるような状態に到達しました。

石の上にも3年って言いますが、あれはつまりこういうことなんじゃないですかね?

ただし「その3年間はとにかくがむしゃらにやること」っていう条件付きですが。

スィートスポットにたどり着かない

クルーズコントロール状態になってからは、あたしの「翻訳が好き」の意味が少し変わってきました。

慣れてしまったこともあり、当初の自分の脳の働き方に対する面白さはだいぶ薄れてきて、代わりに脳の心地良さみたいなものが生まれてきました。自分では、脳科学などで言われる「フロー」ってやつはこれなんじゃないかと思ってます。

フローについては茂木健一郎さんがこんな感じで説明してます。

茂木健一郎 公式ブログ - フローとゾーン - Powered by LINE

でも毎回、ではないんですよねー。

これは翻訳するもとの原稿に大きく左右されます。

わかったようなわからないような文章を雰囲気だけで偉そうに書いてる原稿って日本語ではよくあるんですが、そういうのにあたるとフローどころかもの凄く辛い。

一方、例えばもう本として出版されてる原稿(=プロの校正者が直した原稿)のように、伝える意義がある内容をきちんとした日本語できちんと理論的に書いてる原稿にあたるとすごく幸せになります。そういう原稿を訳していると頭の中を清らかな小川が流れていくような感じになります。ほんとに。

あと、人生のスイートスポット的な分析をすると、あたしの場合「意義」が欠けている気がします。

もちろんクライアントの役に立ってるはずだし、クライアントが最終的に出版したものを読んだ読者の役にも立ってるはずですが、間に翻訳会社が入っていることもあり、通常あまりフィードバックはありません。終わったあともどこでどう出版されたのかとかよく分からないことがほとんどです。*2

それに加えて最近は「もっと安く、もっと早く」そして「何かクレームが来たら(実際はもっといろんな人が工程に関わっていて、翻訳者の納品物とクライアントへの最終納品物は違うのに)責任は全て翻訳者が負う」みたいなやり方を強制されることが多く、そういう面での不満もあります。

できるかできないかという問題ではなく、そういうやり方を強いてくる人たちと働きたくないという意味で。

改めて自分はどうしたいのか

じゃあ改めて自分はどうしたいのか?ですが。

……どうなんでしょう?

あたしは今でも翻訳自体は死ぬまでやってもいいと思っています。でも、恐らく仕事環境が先に悪化して「そこまで我慢してまでやりたくない」という事態になるんじゃないかという気がしているので、今は「なるべく続けられるだけ続けたい」という気持ちと「次に何をしたいかそろそろ目星をつけていつでも移行できるようにすべき」という気持ちが半々という感じです。

そもそもそういうのもあってこのブログを始めたんですが、両方やるには物理的に時間が足りなくて「次」の話があんまり進んでいません。*3

でも、やりたいことを見つけて仕事にするというのはプロセスであって、最終的に人生のスイートスポットまで行くかどうかに関係なく、過程自体が人生を変えるような面白い経験になるということが分かったのは確かです。

そして「なるほど、こういうアングルで行けばいいのか」と分かったので、「次」がなんであろうと恐らく大丈夫な気がします。

つまりあたしが言いたいこと

さて、こんな自分の例を出してまであたしが言いたかったのは何かと言うと、つまりこういうことです。

  • 本当のところはやってみないと分からないことが多い
  • 自分で理解している自分というのは実は氷山の一角
  • 好きなこと、楽しいこと、興味を持ったことをやるのは最強
  • ある程度時間と労力をつぎ込めば、なんでもある程度できるようになる
  • 目標を達成することを目指すだけの人生と、最終目的地が分からなくてもそこに向かう過程自体をまず楽しむ人生では、後者の方が断然濃い
  • タダでもやりたいことで一生稼げたら経済的自由の価値観が変わる

個人的には、人はなんで生まれてくるのかとか、人生の意義はなんだろうとか、そういうことの答えの1つはこの辺にあると思っています。

肉体がなければできないことをしていろいろ知るということですね。

必ずしも仕事にする必要はないけれど、やりたいことを見つけてやってみるというのは、「いろいろ知る」の中でも特に「自分を知る」最高の手段だと思います。

人は誰も自分では考えつかないようなポテンシャルを持っているものです。どうせなら1つでも多く見つけた方が人生楽しくないですか?

 

Think about it.

*1:日本では「天才! 成功する人々の法則」っていう訳書になって出てるみたいです。オススメです。

*2:文芸翻訳ではちゃんと訳者の名前が出るし、そういうことはありません。でも訳書も学者の名前で出版される学術書ではそうなるケースがほとんどです。

*3:その後、働かなくても大丈夫なレベルの経済的自由に到達してしまいました。そして翻訳に関しては思いっきり選り好みして乗り気になる仕事だけ請ける状態をしばらく続けたのち、最終的に2019年に現役引退しました。