経済的自由のススメ ~そのあと~

経済的自由を得て現役引退したあとの生き方

ブランドが動詞化する条件

こんにちは~、今村です。

昨日、こんなツイートをしました。

で、なんとなくその後もいろいろ考えてたら、ちょっと書き出して整理したくなったので書きます。

人生の役に立つような記事ではないので、まあ読んでも読まなくてもどっちでもいいです。

でも、マーケティングとか英語に興味がある人にはまあまあ面白いかもです。暇つぶしの読み物としても悪くないかもです。

まず結論

暇じゃないから読みたくないけどなんとなく結論だけは知りたいという人がいるかもしれないので、今村説の結論を先に書いときます。

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ブランド名が動詞になる基本条件は4つ。

  1. そのブランド商品やサービスに新規性があり
  2. 結果、限定的な消費者行為や現象を引き起こすもので
  3. ある程度ヒットして普及しており
  4. ブランドのネーミング自体がもともと音的に動詞にしやすいものであること

すべてを満たす必要があるが、

  • 4だけ満たされていない場合は、ブランド名自体が動詞にならなくても、ブランド名から派生した動詞が生まれることがある

また、例外的に、

  • ブランドが引き起こす事象がとても特殊な場合は、音的にイマイチでも動詞になることがある

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以上です。

ここから先はたんなる事例の羅列です。

コメントはすべて今村個人の知識や意見で、なんの科学的検証もありません。

基本条件を満たして動詞になったブランド

Google

日本語でも「ググる」としっかり動詞になってますが、英語でも「Google it(ググれ)」という感じですっかり動詞として定着しています。

検索エンジンは一応Google以前にもいろいろあったので、新規性の条件が当てはまらないようにも思えるかもしれませんが、Googleの検索アルゴリズムは当時革新的でした。だから、他の検索エンジンとは違うという新規性があり、それが結果的にGoogleを検索エンジンのトップに押し上げました。

Googleという音も動詞にしやすかったと思います。

検索と言えば、Yahoo!も自社ブランドを動詞化しようとして「Do you Yahoo?」という広告を打っていたことがありました。でも定着しませんでしたね。

その理由には、Googleの検索革命のもとでYahoo!などの検索の新規性が一気になくなったというのと、Yahooという音自体にも動詞になる素質がなかったというのがあるんじゃないかと思います。

「Yahoo」って、何か他の単語を聞き取り損ねたかな?と思っちゃう音じゃないですか?「Did you yahoo?」と言われたら「Did I what?」と聞き返してしまいそうです。

Uber

Uberもわりとすぐに動詞になったブランドだと思います。日本でも「ウバる」という言い方を聞くようになりました。

アプリを使った配車サービスはそれまではなかった概念で、対応する動詞もありませんでした。だから「I'll get a cab by using the Uber App」みたいになっちゃうわけですが、それなら「I'll uber」と言っちゃう方が簡単だったわけですね。

じゃあなぜ、Lyftは動詞になっていないのか*1

これは「Lyft」が「Lift」と同じ音で紛らわしいからだと思います。「I'll lyft」も「I'll lift」も同じにしか聞こえないので、やっぱり「You'll do what?」と聞き返される羽目になりそうです。

Uberという名前はドイツ語の「über」から来ているそうですが、おかげで他の英単語と間違うような紛らわしさがなかったのかもしれません。

最近は、Uber Eatsを使う場合でも「I'll uber it」みたいな感じでUberを動詞にするのをよく聞きます。その時の文脈によってUberなのかUber Eatsなのか簡単に判断できて問題ないため、このような用途の拡大が起こっているんだと思いますが、今後Uberが処方箋の配達など別の分野にもビジネス拡大していったらどうなるのか、ちょっと注目です。

Zoom

Zoomはコロナのおかげであっという間に動詞になりました。

ビデオ会議自体はZoom以前からいろいろありました。なので、新規性は乏しいと言えば乏しいのかもしれませんが、今までになかったレベルでの用途が爆発的に増加したという意味で新規性の条件を満たしたような気がします。

あと、複数人が同時に同じサービスを使わなくてはならない、という意味で、Zoomが動詞になるのは必然的だったのかもしれません。参加者全員が「Zoomを使ってミーティングする」という情報を共有していないといけないわけなので。

実際、ビデオ電話が最初に出てきたころ主流だったSkypeも動詞になっていますが、あれはSkypeを使ったビデオ電話という意味の動詞になっていて、ビデオ電話すること自体を示す動詞にはなっていません。

昔はコピーをとるときにはコピー機のメーカーにかかわらず「Xerox this document」のような感じでXeroxを動詞にしていました。

また、FedExで何かを送る時の動詞になっている「fedex」についても、翌日配送という当時は画期的だったサービスを紹介したということで、年配の人の間では今でもどの業者に頼むかにかかわらず翌日配送することを指して「You can fedex it」みたいな言い方をする人がいます。

年配の人と言えば、掃除機メーカーのHooverもそうですね。どこのメーカーの掃除機を使うかにかかわらず、掃除機をかけることを「hoover」という人がたまにいます。

どのサービスを使うかがコミュニケーション上で重要になるZoomやSkypeではそのような動詞の一般化は起こらないでしょう。 

変形型の動詞になったブランド

Airbnb

Airbnbはこれまでになかった宿泊施設のオンラインマーケットです。ここ数年でかなり普及して、最近上場も果たしました。

でもAirbnbは動詞になっていません。「I do airbnb」みたいな感じで、Airbnbで宿泊するという意味の名詞として使われるのは聞きますが、「I airbnb」という動詞にした言い方は今村は聞いたことがありません。

これは音がまどろっこしいからですよね。Air-bee-n'-beeという発音になるので、動詞として言いにくいんじゃないかと思います。

代わりにたまに聞くことがあるのは「I'll air-bee」のような感じに「air-bee」と短縮する形です。これなら言いやすいです。

ただ、Yahoo!と似た感じで、air-beeという音がなんとなく紛らわしい気がしないでもないです。たぶんですが、「I do airbnb」と言う人の方が「I air-bee」と言う人より多いんじゃないかなと思います。

Twitter

Twitterもそれまでになかった形で独特のユーザー行動を大きく広めたサービスです。でも、Twitterは動詞にはならずtweetが動詞になりました。日本語でも「ツイートする」って言いますよね。ついでに言うと、ツイートという行動で生まれるものもtweetという名詞で表現されます。「Jack tweeted everyday. Usually three tweets a day.」みたいな感じです。

どうしてそうなったのかはちょっとググったらわかりました。

www.businessinsider.com

ざっくりまとめると、

  • もともとTwitter社はツイートすることを「twittering」と呼んでいた
  • でもイマイチだったので「twits」に変更
  • それを「tweet」の方が良いのでは?と再度変更

という経緯だったそう。

ちなみに、Twitterという名称には、もともとはスマホのバイブレーションをイメージして「twitch」を検討していたけれど、音的にイマイチだったので辞書で見つけた別の単語「twitter」に決めたという背景があります。

つまり「twitter」はTwitterが登場する前からあった言葉なわけです*2。でも音的にイマイチだったから「tweet*3になったということですね。

Zipper

ちょっと古いところで、Zipperもそのまま動詞にはならなかったけれど変形型の動詞「zip」を生んだブランドです。

 「zip」という単語自体はもともと存在していました。名詞にも動詞にもなり、意味もいろいろあります。その意味の1つが「ジジジという音」なんですが、新しいファスナーを開発したZipperが、ファスナーを閉めるときの音が「ジジジ」なのでその商品をZipperと名付けた、というのがZipperのが始まりです。

そしたらそれが大人気となり普及し、Zipperを閉めることを「zip」と言うようになりました*4

「Twitter」もそうですが、「~er」という単語はやっぱりそのまま動詞にするには音的に使いにくいんだと思いますね。

なんにせよ、Zipperから生まれた「zip」という動詞の面白いところは、「Zipperを閉める」だけでなくて「何かをしっかり締めておく」という意味にも使われるようになっていることです。「Zip your mouth」と言えば「黙ってなさい」という意味です。

また、「zip」はジェスチャーにもなってますね。何も言わずに自分の唇をジッパーで閉じるような仕草をすれば、「My lips are sealed=他言しません」という意味になります。Zipperすごいです。

動詞にならなかったブランド

Netflix

Netflixは今ではたくさんある有料ストリーミング配信サービスの1つですが、初期の頃はDVDの郵送レンタル事業を行って名を挙げた会社でした。

定額で決まった枚数のDVDを郵便で送ってもらい、レンタル期間も何もなく好きなだけ利用して好きな時に返送すると次のDVDをレンタルできるという、当時では画期的な、サブスクの先駆け的なサービスでした。流行りました*5

でも「Netflix」という言葉を動詞として使う事例は今村は聞いたことがありません。

なぜか。

これはまず「netflix」という単語自体に動詞になる素質がないというか、動詞にしにくかったというのがある気がします。

また、たとえ動詞になる素質があったとしても、「netflix」はたぶん動詞にはならなかったでしょう。

なぜなら、Netflixのサービスはストリーミング配信とDVDレンタルの2本立てだったからです。つまり「netflixする」と言っても、当時ではストリーミング配信を観ることを指すのか、DVDレンタルをすることを指すのかよくわからなかったということです。

今であればもうDVDレンタル事業はしていないので「netflixする」と言ったらNetflixで何か観ることだろうと見当がつきますが、ストリーミングで何か観る行為には新規性もなにもなく、どのストリーミングサービスにも通用する「watch it on demand」とか「stream it」というような言い方が定着してしまっています。

YouTube

YouTubeも、出てきた当時は新規性があり、大きく普及したけれど、ユーザーの行為が限定的でないためイマイチ動詞になれなかったという例です。

音的には動詞になる素質はあったんじゃないかなーという気がします。

とは言え、YouTubeは動詞にはなれませんでしたが、YouTuberという職業名は生み出しましたよね。

「特殊な行為を生み出して、その行為を行う人の名称を作ったブランド」というのも探せばいろいろあるかもしれません。

「Twitterをする人」という意味の「twitterer」を生んだTwitterもそうですね。そう言えば、日本語では「ツイッタランド」という言葉がありますが、英語ではあれは「Twitter+land」ではなくて「Twitter+universe」という発想で「twitterverse」と言います。

あまりにも特殊で動詞になったブランド

Amazon

ここまで挙げてきたのはブランドの商品やサービスが動詞になった例ですが、全く別で特殊なケースなのがAmazonです。

今村が初めてAmazonを動詞として聞いたのはほぼ3年前ですが、衝撃的だったのでツイートもしました。

 Amazonがヘルスケア業界に参入するというニュースがあったんですが、それを受けてとあるアナリストが「ヘルスケア業界がAmazonされる可能性がある」とコメントしていました。意味は上のツイート通りで、その日はヘルスケア株が軒並み下落しました。

その後も、Amazonが何か始めるとその業界が影響を受けるという文脈で「Amazoned」という言い方は何度も耳にしています。定着しているんだと思います。

ただ、Amazonは特定の業界をひっくり返すことを目的として事業参入しているわけではないので、能動態で「Amazon」と使われることはないですね。使われるのは受動態の「Amazoned」です。

よく考えると恐ろしい話ですよね。そういう意味では、Amazonはこの記事に挙げたブランドの中でも全く異色と言えます。

まとめ

一般的には「動詞化されるのはブランドの強さの証」みたいなイメージがあると思いますが、こうやって例を挙げて見てみると、強ければ動詞化されるというわけでもないことがよくわかります。

また、文中では触れませんでしたが、一般名称化すると商標権に影響が出たりするので動詞化を避けるケースがあるようです*6

とは言え、どういう形でブランドが社会で浸透していくかを考えるうえでは、ブランド名の動詞化はなかなか面白いアングルかもしれません。

どのブランドが動詞になるかを予想するのも結構楽しそうです。

Pelotonなんかは、今村個人としては動詞として使われているのはまだ聞いたことがありませんが、音的にも動詞になる素質があるんじゃないかなぁと思いますね。「I peloton everyday」とか、音的に全然違和感ないですし、むしろなんだかカッコよく聞こえます。

今後Pelotonに似たサービスが出てきても、「I kind of peloton, too(=わたしもPelotonみたいなのやってるわよ」とか言いそうですしね笑。動詞化される前に買収とかされちゃったら知りませんが。


*1:一部の人の間ではなっているのかもしれませんが、今村は聞いたことがないです。

*2:もともと動詞として「鳥がさえずる」「小刻みに震える」というような意味、名詞として「鳥のさえずり」「ハラハラ・ドキドキした状態」というような意味がありました。

*3:こちらも前から動詞として「弱々しくさえずる」という意味、名詞として「雛鳥や小鳥のさえずり」という意味がある単語でした。

*4:閉めることを「zip up」、開けることを「zip down」と言うこともあります。

*5:今村もサブスクしてました。

*6:Xeroxは一時期「コピーする=Xerox」にならないよう努力していたらしいです。