経済的自由のススメ ~そのあと~

経済的自由を得て現役引退したあとの生き方

NextEra Energy($NEE)のマニアックな解説

こんにちは~、今村(@saki_imamura)です。

ちょっと前にこんなツイートをしたんですが、

実はですね、NextEra Energyは今村がフロリダに住んでた頃にお勤めしていた会社です。8年ほど勤めてました。

リーマンショックの影響であたしが所属していた課が丸ごと切られたという話をしましたが、あのときの勤め先はここでした、ええ。

今はどうなのか知りませんが、当時は年金積立のマッチングが現金じゃなくて自社株で支給されていたので、$NEEも(自分で買ったことはありませんが)会社に在籍していた当時からずーっと保有しています*1

……てことで、せっかくなので、NextEra Energyの紹介でもしておこうかなと思います。ツイートした記事以外でも最近はNextEra Energyが出てくる記事をチラチラ見かけるし、なんか注目されてるみたいですしね。

勤めてたのはもう10年くらい前の話だし、機密情報を持っているというわけでもないですが、元社員として知ってることを交えて書いておくので、再生可能エネルギーや蓄電池関連に投資している人や投資を考えている人は、よかったら参考にしてくださいませ。

NextEra Energyの概要

NextEra Energy, Inc.は、電力会社や再生可能エネルギー事業者を子会社に持つ、フロリダの持株会社です。こういう組織になっています。

出典:NextEra Energy Annual Report 2018(PDFが開きます)

FPL(Florida Power & Light Company)

南フロリダをサービス地域とする電力会社です。

500万件以上の個人や法人に電力を供給していて、規制されている電力会社としてはアメリカ最大級です。

もともとFPLがあり、それが事業拡大し続けた結果できたのがNextEra Energyです。FPLは今でもNEEの営業利益の6割を担っています。

NEER(NextEra Energy Resources)

FPL Groupの再生可能エネルギー部門としてFPL Energyが設立され、それが風力発電でアメリカ最大手となり*2、のちにNextEra Energy Resourcesと改名されました。

現在、NEERはアメリカ各地とカナダで風力、原子力、太陽光、天然ガス、石油発電所を建設・運営する卸電気会社となっています。今では太陽光発電でもアメリカ最大手となり、蓄電システムも提供しています。

ちなみに、FPL GroupがNextEra Energyになったのは、FPL EnergyがNextEra Energy Resourcesと改名された1年後くらいの話です*3

NEECH(NextEra Energy Capital Holdings)

NEERのクリーンエネルギーの販路を拡大するため、NextEra Energy TransmissionやNextEra Energy Servicesという他の子会社も設立されました。前者が北アメリカで送電システムを開発・建築・運営・維持し、後者が電力が自由化されている北アメリカ地域で電力の小売業を行っています。

そしてNEERとこれらを全部まとめて保有するために設立されたのがNextEra Energy Capital Holdingsです。

NextEra Energy Partners($NEP)

NextEra Energy Partnersは、$NEEとは別に$NEPとして上場していますが、NEERの子会社です。

基本的にNEPRは、1)NEEの再生可能エネルギー発電施設を買い取り*4、2)そこから得るキャッシュフローで配当を出し、3)投資家から資金を集める*5という役割を担っています。

一方、NEERは発電施設をNEPに売ることでさらに発電施設を建設する資金を得ています。

Gulf Power Company

フロリダ北西部をサービス地域とする電力会社です。ジョージア州の電力会社Southern Company($SO)から買収したばかりです。

顧客数は46万件ほどなので規模はそれほど大きくありませんが、NEEのフロリダのサービス地域を拡大する形になっています。

NextEra Energyの今までの成長

一応今までのリターンをS&P500と比べて見てみるとこんな感じです。

(青=NextEra Energy、オレンジ=S&P500)

過去10年

過去3年

2019年

リターンも悪くないし、安定感がありますね。

NextEra Energyの強み

では、なぜNEEはリターンも悪くなくて安定感があるのか?

公益事業+再生可能エネルギー事業の二本立て体制

上で見た通り、NEEは、FPLとGulf Powerを含む規制された電力事業と、NEE Resources・Transmission・Servicesを含む自由化された電力事業の二本立てになっています。そして、この体制自体が「悪くないリターンと安定感」を生み出すポイントになっています。

前者の公益事業が安定的な収益を生み出し、後者の再生可能エネルギー事業が成長を生み出せるからです。

しかも、二本立てではあるけれど、ノウハウや技術は大きく重なっているので、前者で長年積み重ねてきた送電の技術や品質みたいな基本ノウハウは後者で再生可能エネルギーを販売する際の武器になり、後者で新しく開発した再生可能エネルギーの技術は前者で再生可能エネルギーの割合を増やす原動力になっています。

なので、公益事業が再生可能エネルギー事業に安定感を与え、再生可能エネルギー事業が公益事業の成長を促しているという部分も大いにあります。

安定のFPL

先に述べた通り、FPLは料金規制がある側の電力ビジネスです。

料金規制というのは、具体的には

  • 数年ごとに「Rate Case」と呼ばれる料金のレートを決定する公聴会が開かれ
  • FPLが先数年の予算案とこれまでの実績を提示し
  • 州の公益事業委員会(PSC)が一般市民などの声も聞きながらそれを検討したうえで
  • FPLの電気料金のレートを決定する

というプロセスで行われます。

PSCの目的はできるだけ良いサービスをできるだけ低い価格で住民に提供することなので、ここではFPLの実績が判断の大きな要因になります。

そして、FPLの顧客満足度はアメリカ南部でもずっとトップクラスなのです。

J.D. Powerによる個人のお客様満足度調査(左)と法人のお客様満足度調査(右)↓

出典:2019 Electric Utility Residential Customer Satisfaction Study | J.D. POWER2019 Electric Utility Business Customer Satisfaction Study | J.D. POWER

さらに、料金のレートもFPLはフロリダの民間電力会社の中でずっと最安のポジションを保っています。

出典:2018 Comparative Rate Statistics (by PSC)(PDFが開きます)

市営や組合の形態をとっている電気サービスを入れてもFPLはフロリダ内で1、2位を争う安さです。

つまり、PSCとしてもFPLの予算案には文句をつけにくいということなんですね。

また、そもそもレートは資本利益率が9.6%~11.6%になる計算で決められるので、きちんと計画通りに物事が進めば一定の利益は保証されているようなものなんですが、FPLはこの「きちんと計画通りに物事を進める」というのが上手い会社です*6

なので、資本利益率が11%くらいのところで承認されたとしても実行力がマズければ結果が9%台で終わる可能性もある一方、FPLはわりと許される資本利益率の上限に近いところで実際に利益を出すパターンが多いようです。

あと、これはNEEの実力とは関係ないんですが、フロリダは経済も人口も拡大傾向が強い州です。だからサービス地域自体が広がらなくても顧客数は伸び続けています。

電力会社をバックに持つ再生可能エネルギー事業

これは「二本立て体制が良い」をもう少し掘り下げた話になります。

風力発電や太陽光発電は天候に依存するため、発電量をコントロールしにくいという問題があります*7

なので、電力会社レベルで風力や太陽光を送電網に組み込む際は、発電量をコントロールできる他の発電施設と組み合わせたり、蓄電システムを設置したりすることが必要になるんですが、この辺のノウハウを現在進行形で実践し、向上させているのがFPLというわけです*8

おそらく、ですが、再生可能エネルギーの組み込み方という点で、FPLという大手が行っている最先端の事例と実践のデータを提示できるのはNEERの大きな強みなんじゃないですかね。

特に、蓄電システムは住宅やビジネスでの設置よりも「Front-of-the-Meter(=電気の検針メーターの手前)」と呼ばれる電力会社側での設置が大きく成長すると予想されています。

出典:The battery decade: How energy storage could revolutionize industries in the next 10 years

だとしたら、「電力会社部門もあり、蓄電システムも提供している再生可能エネルギー会社」というのはこの市場に売り込む際の最強のポジションになり得るのではないかと。

このような組み合わせの体制の会社は他の再生可能エネルギープレイヤーの中にはあまりいないですしね*9

連携を効率化させる人材育成

話は変わって、NEEに関する記事を読んでいると、経営陣を「ベンチ要員が充実」と評していることがたまにあります。

では、なぜベンチ要員になり得る人がたくさんいるのか?

それはおそらく、NEEには「Rotation」と呼ばれる慣習*10があるからじゃないかなと思います。

一定のレベルの管理職まで行ってRotationに選ばれた人には、他の部や課の同レベルの管理職の業務をOJT的な形で順に学ぶ機会が与えられます。1つの部署に1ヶ月とか2ヶ月とか滞在して業務を学ぶんですが、複数の部署を続けて一気に回るので、全部終わるのに何ヶ月もかかるという大掛かりなものです。

誰かがRotationに行ってしまうとその人のポジションは長期間空いてしまうので、代打が入ります。他の部署の管理職レベルの人が代打でやってくることもよくあります。

実際、今村が在籍していたマーケティング部でも、部長が産休後そのままRotationに突入する形で1年くらいいなくなったので、違う部署から代打の人が来ていました。

そんな感じで、一定の管理職以上の人はお互いの部署の経営を実務レベルで知っていることが多く、ちょっとくらいなら代打もできちゃう勢いなのです。 

また、専門職に対しても、担当の部署やプロジェクトが変わると内容に応じてOJTを1週間くらいかけて集中的にしてもらえる「Onboarding」という慣習がありました。

今村はRotationは経験しませんでしたが、Onboardingは何度もしてもらって社内の様々な業務を学びました。マーケティングアナリストだったくせにコールセンターとか発電所とか営業とかITとかの業務の知識が多少なりともあるのはこのおかげです。

NEEが様々な部署を連携させて物事を進めていくのが上手いのは、裏にこういう文化があるからじゃないかなと思います。

ハリケーン対策と復旧作業体制

フロリダはハリケーンの通り道となることが多い州で、実際NEEには(というかFPLには)周到なハリケーン対策と復旧作業体制のプランがあります。

これもなかなか面白くて話そうと思えば結構話せるんですが、今改めて株価の動きをハリケーンの被害と合わせてざっと見てみたところ、ハリケーンの被害はあんまり株価に影響していないようでした。

影響があんまりないというのもある意味すごいし、安定の理由のひとつになりそうです。

では、なぜあまり影響がないのか?

まず第一に、上で話したFPLの予算案にハリケーン対策プロジェクトがしっかり盛り込まれているというのがあります。

設備の耐久性を上げるとか街路樹を常にきちんと剪定しておくとかそういうのですが、今まで低コストで良いサービスを提供してきた実績があるため、この辺りにお金をかけてもPSCや住民の理解を得やすいのです。

第二に、FPLには復旧作業の費用に充てるための積立資金があります。こちらも予算に組み込まれている項目です。

ハリケーンが多い州の大手電力会社が災害保険を買おうとするといくらかかるのかは知りませんが、自社で積立をして自己保証する形をとることでコストをかなり下げていると聞いています。 

まとめ

……てことで、昔勤めていたことがあるNextEra Energyについて、役に立つかどうかは別として、マニアックな解説をしてみました。

今村は、もともと大学ではホテル経営学を学び、卒業後はリゾート関係の会社で勤めていたので、今振り返っても、電力会社で働いていたなんて我ながら変な経歴だなぁ、人生どこでどんな知識を拾えるかわからないもんだなぁ、としみじみ思います。

でも、こういう知識が積み重なって、投資家としての今の自分がいるのかもしれません。

みなさんは、自分の勤め先を投資家目線でマニアックに解説できますか?

*1:厳密にはリストラ後時点で $NEE のポジションが大きすぎたので半分くらい売りましたが、残りの半分は10年以上経った今でもそのまま放置しています。

*2:社員だった頃、よく「フロリダが拠点なのになんで太陽光がメインじゃないんだ?」と聞かれましたが、フロリダは湿度が高く雲が多いので、その分効率が劣るんですね。カリフォルニアやニューメキシコのように乾いていて雲がない場所でやれば効率は上がるんですが、乾いている地域では砂埃でパネルが汚れることが多く、水不足なので洗うコストもバカにならないという問題があったりします。今は技術がかなり発展してコストは下がっていますが。

*3:前後関係はうろ覚えですが、FPL GroupがNextEra Energyに改名された頃に、FPLが石炭火力発電所の建設を提案するも住民に大反対されて見送るという出来事がありました。この「当時の最新技術では石炭が一番妥当なオプションだったにも関わらず、民意を得られなかった」という事件が、NEEをさらに再生可能エネルギー方面に向かわせることになったんですが、このときの幹部の切り替えの速さには社員だったあたしもびっくりした記憶があります。

*4:最近はNEE以外からも買収してるみたいです。

*5:再生可能エネルギー事業に特化していて、$NEEと比べても配当率が高いという位置づけです。

*6:どこがどう上手いのかは勤めてた今村にもピンポイントで説明できないんですが、NEEはエンジニア気質がとても強い会社で、その良いところが全部出てる、みたいな感じです。計画自体もかなり周到にやっているだろうと思います。

*7:今後、蓄電がもっと大規模なレベルで発達すれば状況は変わると思いますが、発電はまだ基本的にリアルタイムで供給を需要に合わせなくてはならないビジネスです。

*8:ここ数年、今まで他のオプションと比べて効率がいまいちとされていた太陽光発電施設をFPLのテリトリーでも増やしています。これを理由に料金レートも引き上げされました。

*9:もともとソーラーパネルのメーカーであるとか、タービンのメーカーであるようなケースが多い気がします。Berkshire Hathawayの子会社であるBerkshire Hathaway Energyは電力会社のMidAmerican Energyを子会社としているのでNextEra Energyに似ていますが。

*10:どういう条件を満たした人がどの時点で対象になるのかなどの規定は聞いたことがないので、人事部が主導になっている正式な人材育成プログラムではなくて、上司の判断で調整が行われる個別のキャリアプランニング的なものと認識しています。

小売業でちょっと面白い TJX CompaniesとRoss Stores

ちょっと前ですが、こういうツイートをして、

その直後に、TJ MaxxとかRossに馴染みがある日本人ってあんまりいないかもなぁ、紹介の記事でも書くかなぁ……と思ってこれを書き始めてたんですが、温泉に行ったらなんだかどうでも良くなってしまって放置していました。

でも、今朝ツイートをするためにニュースを眺めてるときに「ディスカウント小売業者のBig Lots*1($BIG)のQ3の業績が良くて云々……」って記事をちらっと見かけて、あー、やっぱりTJXとRossの記事出しておこう、と思ったので、終わらせて出しときます。

 

ここ数年の小売業界の変動って結構すごいですよね。

でも、TJXとRossって、そんな中であまり変化しないままなぜか成長しているという、ちょっと興味深い案件だったりするんですよ。

小売業界に興味がある人は話のタネにでも読んでいってください。

概要

TJX CompaniesもRoss Storesも、有名ブランドの衣服、バッグ、靴などを大幅に値下げして販売するディスカウントショップを経営している会社です。

The TJX Companies, Inc.($TJX)

↑メリーランドにあったTJ Maxx。

「TJ Maxx」と「Marshall's」の名前でアメリカやヨーロッパでディスカウントショップを展開しています。また、有名ブランドの家具やインテリア商品を大幅ディスカウントで提供する「HomeGoods」「Home Sierra」「Winners」をアメリカとカナダで展開しています。

創業:1987年

本社:マサチューセッツ州フレーミングハム市

CEO:Ernie Herrman

↑入るとこんな感じ。Rossより小綺麗だけどわりと無造作な陳列。

↑バッグのコーナー。わりとテキトーにかけてある。

Ross Stores, Inc.($ROST)

↑シアトルの街なかにあったRoss。店舗の内部は警備員のお兄さんが怖くて撮れなかったけど、「これでいいの?」状態だった。笑

「Ross Dress for Less」の名前でアメリカで中間層をターゲットにした店舗を展開しています。似たようなビジネスモデルでRossより若い層や所得が低い層をターゲットにした店舗「dd's Discounts」を展開しているのはRossの子会社です。

創業:1982年

本社:カリフォルニア州ダブリン市

CEO:Barbara Rentler

今までの成長

だいぶ前ですが、こんなツイートをしました。

JC Penny、Nordstrom、Macy'sなどのデパートが苦戦しているなか、食品や日用品がメインでネット販売にも対応しているWalmartやTargetは健闘しているという話でした。

TJXとRossは食品や衛生・洗剤などの日用品の販売はしていません。どちらかと言うとデパートに近い商品のラインナップです。ネット販売はしてるようですが、たいしたことないみたいです。

ですが、上の図にTJXとRossを足してみると、両社ともWalmartと似たレベルで健闘しているのが見て取れます。

と言うか、期間をもっと長くして過去10年間で見てみると、RossとTJXはむしろWalmartよりも大きく成長していたりします。

ちなみに、RossなんかはこんなランキングにIT企業と肩を並べて入ってたりします。

なんだこりゃ?って感じじゃないですか、これ?笑

強さの秘密

一体なぜこの2社は強いのか。

TJXとRossのビジネスは、1)メーカーから過剰在庫や訳あり商品を安く買い取り、2)定価から大幅値下げして各店舗で売る、というシンプルなモデルで成り立っています。

でも、よく見るとなかなか良くできたモデルだったりします。

メーカーとの関係

通常、小売業者はメーカーに商品を発注する際、

  • 返品の特権
  • 販促費を加味した割引
  • 一通り揃ったサイズや色
  • 各店舗への商品配送
  • 長い支払い猶予期間(Macy'sなどだと120日)

などを要求します。でも、TJXやRossは

  • 返品の特権なし
  • サイズや色が全部揃っていない売れ残り商品でも訳あり商品でもOK
  • 流通センターへまとめて商品配送
  • 短い支払い猶予期間(30~40日以内)

という感じで、メーカーが処分したい在庫をメーカーにとって有利な条件で引き受けます。そしてその分商品を安く仕入れているわけです。

また、TJXやRossの店舗ではどのブランドが売られているか宣伝しておらず、どのメーカーがどんなものを処分しているか大々的にはわからないので、ブランドのイメージを守りたいメーカー側としても商品を処分しやすい仕組みになっています。

このようなメーカーとの関係がすでに出来上がっているので、他のディスカウント業者が入り込みにくいというのもあります。

店舗

TJXもRossも、わりと広いけれど雑然とした、ブランド物を扱ってる感じがしない店舗を展開しています。

上で述べた通り商品の宣伝は店舗でしていないので、マネキンなどもないし、ディスプレイらしいディスプレイもありません。基本的には棚やラックがずらーっと並んでいて分類分けだけしてある商品が無造作に置いてあるだけというパターンの店舗の方が多いです。

カットソーもセーターもみんなハンガー掛けだし、靴売り場とかもそこにあるサイズしかないので自分で勝手にためし履きするんですが、みんなテキトーに棚に戻してるのでごちゃごちゃになってたりします。

要は、その手のことには一切お金をかけていない、ということです。確信犯的に。

ちなみに、個人的にはTJX系の店の方がやや小綺麗にしている確率が高いという印象ですね。Ross系はまじで「こんなんでいいの?」っていう店舗があったりします。

立地としては、街の中心部に小さめの店舗があることもありますが、どちらかと言うとスーパーなんかが入っているショッピングセンターにあることが多いです。車で乗り付けてすぐ買い物できるパターンです。

集客

TJXもRossもテレビやラジオなどで「ブランド物をお値打ち価格で!」みたいなざっくりとした宣伝はしています。

アメリカ国内でも店舗はわりとあちこちにあるし、実際、ブランド物を安く売っている店として良く知られています。

でも、TJXやRossの客足が止まらないのは、宝探し的な要素があるからです。

  • どんなブランドのどんな商品があるという宣伝が全くないので、何があるのかは行ってみないとわからない(同じ市内でも店舗Aと店舗Bでは在庫が違うことも多い)
  • その時その時にメーカーが処分したものが入ってくるので、行くたび商品のラインナップが違う
  • ざっくり分類されてはいるが、基本的に商品は無造作に置いてあったり掛けてあったりするだけなので、文字通り「掘り出し物」を探さなくてはならない
  • そして実際にブランド物が安いので、何か見つかれば満足感がある

今村は個人的には宝探し要素はまあどっちでもいいんですが、

  • それなりのものを安く買える
  • 服、靴、バッグ、雑貨など、一通りのものを1か所で買える
  • ショッピングセンター的な場所にあるので、モールのように巨大駐車場に車を停めて店まで頑張って歩く必要性がない

という、時短的な理由でわりと利用していました。

TJXとRossの複占的関係

TJXもRossもメーカーの処分品(=限定品)を扱っているので、そもそも同じ系列店舗でも在庫が大きく違ったりするんですが、TJXとRossもやっぱり多少異なるラインナップになります。

また、これは両社が意図的にやってることなのかどうかは知りませんが、TJXとRossはお互いわりと近い場所に店舗を構えているパターンが多く、同じショッピングセンターの敷地内にあるケースもよくあります。

なので、TJX系の店とRoss系の店をはしごする客がかなり多いです。

つまりお客は「片方に行ったらついでだからもう片方も行く」とか、「片方に気に入るものがなかったからもう片方にも行ってみる」とか、「あのショッピングセンターは両方あるからどちらかに欲しいものがあるはず」みたいな思考になるわけです。

そういう意味では、TJXとRossは競合と言うより仲良く複占という感じがします。

在庫管理

両社ともコンスタントに多くのメーカーから買い取りを行っています。

実際にどうやって管理してるのかは知りませんが、その時にある限定的商品から売れそうなものを選りすぐって仕入れてきて、たくさんある店舗に振り分けているわけなので、その辺の経験値やシステムはなかなか真似できないもののはずです。

あと、流行ものだけを仕入れているわけではなく、定番というかベーシックなデザインのものも季節に合わせてのちのち販売するため仕入れているんですが、それでもその辺の小売業者より在庫の回転率が早く、生鮮食品も混じっているTargetのようなレベルの回転率だったりします。これもなかなか真似できないことです。

景気変動の影響

ディスカウントストアってわりと景気の影響を受けにくいことが多いんですが、TJXとRossもわりとそんな感じです。

まとめ

てことで、店舗に行かなきゃわからない宝探し的な要素を持つディスカウントストアという、世の中の実店舗離れのトレンドとは別の場所にいる TJX Companiesと Ross Storesの紹介でした。

余り物とか訳あり商品とかで在庫が構成されてるし、在庫の回転率もかなり早いので、実際問題としてオンラインストアってTJXやRossにはハードルが高いんじゃないかと思います。

でも、実物見ないとわからない部分があるからこそ客は実店舗に来るんだろうし、在庫の回転率が早いからこそ客は飽きずに何度も店に足を運ぶんじゃないですかね。

ちょっと前にもこんなニュース記事があったけど、

はなからそういう戦いに参加していない小売業者もいるということです。

ビジネスって面白いですね。

*1:Big LotsはTJXやRossにちょっと似てますが、品揃え的に全く同じ土俵にいない、というのが今村の印象です。

レイ・ダリオの金融危機に関するインタビューをまとめました

こんにちは~、今村です。

昨日こういうツイートしました。

実は、このツイートした時点では記事の真ん中にある動画(インタビューの最初の4分)だけしか観ていませんでした。でもその後記事の一番下にあるフルバージョンを全部観たらわりといろんなことを話していて、もしかしてみんなも知りたいかな?と思ったので、一応まとめておきました。

よかったら参考にしていってください。

市場経済のサイクル

彼の新書「A Template For Understanding Big Debt Crisis」に詳しい説明があるそうなんですが、歴史を遡って今までの市場経済のサイクルをすべて調べたレイ・ダリオ氏によると、市場経済サイクルというのは、毎回異なった側面があっても必ず同じ段階を踏むそうです。

インタビュー中「サイクルには6段階ある」と何度か言っていて「各段階については説明する時間がないから本を読んでくれ」と言っていましたが、最終的には

【成長によって十分返済が可能な状況で債務がある、という健全な経済】

              
【過去の成長をもとに徐々に不合理な将来の成長を見込んで実際の成長で十分返済できない債務が蓄積する、というバブルの始まり】

                                                 
【インフレに関係ないため中央銀行がそれに対応せずバブルが増長、というバブルの本格化】

……みたいな感じでサイクルは進む、と説明しています。

現在のサイクルの段階

ここで「今、企業債務が増加しているがもうバブルか?」と聞かれます。

これについては、ダリオ氏は「企業の収益に対する債務返済のレベルがまだ(リーマンショック前の)2007~2008年のレベルには程遠い」と述べ、「(野球で言う)7回。あと2年ほど続くだろう」と言っています。

今回の状況に似ている債務危機

その後、過去の債務危機として1935~1940年と2008~2009年の2つの期間を挙げて、過去100年の間に金利がゼロになったのはこの2回だけだと説明しています。

そして、1935~1940年と2008~2009年の2回とも

  1. 政府が紙幣を増刷
  2. 資産の値段が上昇
  3. 市場が上昇
  4. 貧富の差が拡大

というように事が進展したが、ポピュリズムが台頭した1935~1940年は特に現在の状況に似ていると述べ、現在の経済格差が過去最大になっていることを大きな問題として挙げていました。

深刻な社会的・政治的な問題になる可能性

ダリオ氏は、一定以上の裕福層だけが資本主義の恩恵に預かることができていて大衆はその恩恵に預かることができていないと指摘し、そのため広がり続けている経済格差は今後大きな社会的・政治的問題になると警告しています。

特に資金が足りていない年金やヘルスケアが大きな問題となり、市場が大暴落しないとしても成長は減速し、経済は厳しくなるだろうと言っていました。

効果的な金融政策の有無

さらに「うまく経済をコントロールできる金融引き締めなど存在しない、だからリセッションが起こるのだ」と断言しています。

金利をこれ以上下げることはできないし、量的緩和もできるところまでやってしまっているし、ポピュリズムの影響もあるため、効果的な金融政策はあまり期待できないそうです。

政府ができること

ここで「では今できることは何だ?」と聞かれ、ダリオ氏は「(バブルは)必然だからその後いかに対応するかを今から考えておくべきだ」と答えています。

具体的には、もっと自由に対応できる環境が必要だと言っています。

今まで金融危機が起こったたびに新しい規制などを作ってより安全な金融システムを作ってきたが、それが逆にできないことを増やしてシャドウバンキングシステムを作り出しているそうです。

「金利をいま上げておいて後からまた下げればいいのでは?」というコメントには、「ダメ、ダメ、ダメ、一旦上げたら市場すべての金利システムが影響されてしまうから」と却下しています。

そして必要な金融政策について「日本も特にそうなんだが、政府が金融資産を買い上げるだけではなく、個人レベルの購入を促進しなくてはならない」と述べています。

バブルは必然なのか?

……とここで、「金融危機は必然だと言っているがそうなのか?」と聞かれます。

「賃金も上がりつつあるし、このまま良い具合に成長が続いたら経済格差も少しはましになるんじゃないか?」と。

これに対し、ダリオ氏は「いや、必然だ」と答え、国レベルで大衆の雇用の機会と生産性を高める取り組みをしないとダメだと主張しています。

ちなみに「ベーシックインカムとかそういうことではなくて?」と聞かれてましたが、その質問はスルーして、「必然だ、毎回必ず同じ6つの段階を踏むんだ」と言っていました。

ポピュリズムとコミュニケーション

ここで話が変わって「2009年の金融危機では確かに金融機関の救済措置はあったが大衆を直接支援する措置はなかった。でもなぜそういう措置になったかもっときちんと大衆に伝えていたら今のポピュリズムの状態は変わっていたと思うか?」と聞かれていますが、ダリオ氏は「大衆は理論ではなく感情で動く。それにそもそも全員がテレビを観て状況を理解しようとしているわけでもない。彼らが理解できるのは自分たちの現実だ」と答えています。

そして「特に右・左、持つ者・持たざる者など両極化が進むと対立が激しくなって一層感情的になる。暴力的になることもある」と警告しています。

国際的な緊張関係

国際的な緊張関係の問題もある、とダリオ氏は言います。

1935~1940年の金融危機の前にアメリカと緊張関係にあったのは日本だったが、今回は中国が問題になっているとのこと。

中国にとって関税自体はそれほど大きな問題ではなく、それよりも中国のトップダウン型国家の価値観とアメリカのボトムアップ型の国家の価値観が衝突していることが問題だそうです。今後それが長期的な敵対関係に発展すると経済影響も大きくなるとのこと。

締めくくり

最後に「現状を1936年や1937年と比べるとどうだ?」と質問され、ダリオ氏「そこまで酷くないが、余剰資金がなくなってきていて法人税減税の効果も出尽くしている。リスク・リターンとしてはネガティブに傾いてきているから、投資家は以前よりディフェンシブになるべき」と述べ、「政府は金利を急上昇させてはならない」と述べています。

また、資金不足の年金やヘルスケアに関連して債券の発行が増えるが、それによって準備通貨としてのドルの力にも影響が出る可能性があるとしています。

おまけ

……ということで、レイ・ダリオ氏の見解はこんな感じでした。

ちなみに、去年の11月にこういうツイートをしたんですが、

これで見るとS&P500はまだ大体青色の点線の辺りで推移しています。まあビミョーに点線を超えてるかもしれませんが、非合理なレベルではないです。

収益に対する債務返済の割合で見ているダリオ氏とは根拠がちょっと違いますが、「まだバブルじゃない」という見解で言うとダリオ氏と一致していますね。

 

役に立ったかわかりませんが。とりあえず。

ではでは。

Forbesによるジェフ・ベゾス氏のインタビュー記事をまとめました

みなさん、台風21号は大丈夫でしたか?

今村んちはカーポートの屋根が吹っ飛んだりしましたが、とりあえずそのくらいで済みました。やれやれです。

今回の台風はアメリカのハリケーンの強度で言うと5段階あるうちのカテゴリー3に相当するものだったんですが、カテゴリー3だと日本はこうなるのかぁという観点でなかなか興味深いものがありました。

 

まあそれはどうでもいいんですが、今朝こんな記事を見つけました。

www.forbes.com

Forbesがジェフ・ベゾスと独占インタビューしてまとめた記事です。

特にすごい新情報はないんですが、なかなか面白いです。Amazonやベゾスに興味があって英語が読める人は読むことをオススメします。

へぇー、何が書いてあったのか知りたいなぁ、でも英語は苦手なんだよな……っていう人は、今村が頑張って要点をざっとまとめておいたのでこっちを読んでいってください。

 

f:id:sakiimamura:20200721141356p:plain

*インタビューの書き起こしではなくてForbesの編集者がインタビューをもとにまとめた記事です。引用してるところだけがベゾスの言葉で、あとはForbes編集者のまとめです。「Forbesの2018年9月30日号の掲載記事」とは書かれていないので、雑誌にはこの記事じゃなくてインタビューの書き起こしが掲載されてるのかもしれないです。ちょっとその辺はよくわかんないです。

大きさに制約がない市場

「事実上、市場の大きさに制約がない。市場が限られているビジネスはいろいろあるが、うちはそういう問題は全くないんでね」とベゾスは言う。

実際、ベゾスは既存の事業に関連した分野にAmazonを大きく拡大していく能力に長けている。

少し前にウォーレン・バフェットもインタビューしたが、「80年近く株式市場を見てきたうえで、一番目覚ましいビジネスだと思ったのは?」と尋ねたとき、「今まで見てきたなかで一番見事な業績なのはおそらくジェフ・ベゾスが今までしてきたこととこれからするであろうことだ」と答えていた。

制約なしで事業展開できる要因は以下の3つだ。

  1. Amazonはもともと収益より成長を重視することで有名な企業だが、実際に収益を無視して始めたAWSが大きな事業に成長した実績などで株主の信頼を得ているため、ほぼ自由に資金の再投資先を決めることができる
  2. Amazonが成長するためにはスケールの大きさが必須であるため、実際にそのような攻める姿勢が求められている
  3. 小売業とオンラインビジネスサービスで優勢だが、この2つはほぼ全部のセクターに関連しているためどの方向へでも事業展開ができる

手の内を見せないスタイル

大きな支出枠の中に隠しておいたり無関心を装ったりして新しい取り組みについてなかなか手の内を見せないのがベゾスのスタイルである。

公の場で発言することも少なく、インタビューの数も少ない。

トランプ大統領に攻撃されていても反応しない姿勢を貫いており、「去年Facebookが直面した政治的苦悩から学んだことはあったか」との質問には、それについては話す気はないという意志を示すかのように一拍おいてからきっぱり「ない」と答えている。

「ビッグデータの企業になりつつあるのでは?」という質問に対しても「Amazonをそういう企業だと思ったことはないね」と答えている。

Yesという言葉の重要さ

一般的な企業のやり方についてベゾスは「下級管理職の誰かが試してみたいアイデアを思いついたとするだろう?そうすると上司の承認を得て、その上司の承認を得て、その上司の承認を得て……ってやらなくちゃいけない。その中で一人でも『No』って言ったらこのアイデアはお蔵入りするわけだ」と言う。

そのため、Amazonでは複数のやり方で「Yes」へたどり着けるようにしている。

1つは「対面通行ドア方式」で、次に進むか進まないかを段階的に決断し、途中で賢明でないと判断されると下に戻されるやり方。実際、数えきれないアイデアの取り組みが部署レベルで行われている。失敗も歓迎される。

もう1つは「一方通行ドア方式」で、こちらは会社の方向性を変えるレベルの取り組みに適用される。ここではベゾスが以下の観点からプロジェクトを検討する。

  1. 斬新さがあるか(他社のマネはしない)
  2. 拡張性があるか(最終的に大きなスケールでできないのであればダメ)
  3. シリコンバレーで通用するレベルのROIがあるか

この3つを満たす場合、以下の2つのモデルのどちらに当てはまるか考える。

  1. 今ある顧客のニーズに応えられるもの
  2. 顕在化していないニーズを掘る必要があるもの

顕在化していないニーズを掘り起こす

Amazonが巨大企業に成長したのは顕在化していないニーズを掘り起こしてきたからである。

オンライン本屋で満足せず、DVDやおもちゃなどに拡大し、今では小売業全般の商品を販売している。

さらに内部で培ったテクノロジーやロジスティックの技術をサービスとして提供することで、Mechanical Turk、Fulfillment by Amazon、Amazon Pay、そしてAWSなどにも事業を拡大していった。

取り組みながら学ぶ

このように顧客志向でアイデアを出して取り組むことで生まれるのがスキルだ。

2007年にKindleのアイデアが出た際、内部からは「うちはソフトウェア企業だ、ハードウェアは難しい」という反対意見が出たが、「ハードウェアも作れる企業になることを目指すべきだから学び始める必要がある」というベゾスの意見で取り組むことになった。

結果、Kindleは成功し、Fireスマホなど失敗もあったが、のちにはEchoを開発できるほどになった。

「今ではハードウェアの経験値はあがってきたが、当時はそんなスキルはなかった。辛抱強くなくちゃいけない。スキルを学ぶためだけの時間なんてないからね。なにかを成熟させるには時間がかかることもある」とベゾスは言う。

そして今学んでいることは?

そんなベゾスが今学んでいることの1つがヘルスケアだ。

ベゾスは去年、バフェットとJPモーガン・チェイスのCEOジェームズ・ダイモンとともに、低コストでよりよいヘルスケアを社員に提供するプロジェクトを始めることを発表した。

「これは非営利のプロジェクトだから全く別だ」とベゾスは言うが、続けて「(彼らと開発する)打開策はNGO内に留まるが、各社が独自の取り組みを行うことは自由だ」とも言っている。実際、Amazonは6月にPillPackの買収を発表している。

もう1つは広告業だ。

Amazonの今年の広告収益は80億ドルに達するのではないかという勢いであり、これは去年のほぼ倍の額である。

消費者の購買意欲を予想しなくてはならないGoogleやFacebookに対し、Amazonは顧客が何を買ったのか、何を買うつもりなのかも分かっていることを考えると当然の展開ではある。

広告表示をすることに関しては、「(今まで培ってきた顧客との信頼関係は)非常に貴重なものだからこれを台無しにするようなことは決してしない。(信頼関係が)事業を拡大させてくれるのだからね」とベゾスは言っている。

Amazon Goの可能性

去年話題になったのはWhole Foodsを買収したことだったが、それよりも興味深い取り組みは1月に開店したAmazon Goである。

数々のAmazonの事業が1つにまとまったらどうなるかという可能性を示しているからだ。

Whole Foodsの買い物客のデータを網羅し、日々洗練されていくアルゴリズムやハードウェアをAIという形で使い、どの商品を手にとってどの商品を戻したか判断するカメラやセンサーの技術を使い、Amazon Payを利用して決済する。

ヘルスケアや広告がAmazonの新しい事業の柱になる可能性だとすると、Amazon GoはAmazonの様々な事業を横につなぐ可能性だと言える。

一番の肝となるAmazonプライム

一番重要な要素はプライムである。

もともとは会員費という収入をもたらすマーケティングのツールでしかなかったが、会員に特典や特権を提供することで次々と隣接商品やビジネスに展開していくツールとなっている。

プライム・ビデオやプライムデーが年々拡大されているのはそのためであり、こうしたプライム会員にアクセスするためにFBAの出店者はAmazonに手数料を払っているのである。

プライムの即日配送に対応するための物流拠点は、もともとAmazonのビジネスモデルにそぐわなかった食品などの分野への進出を支えることにもなっている。

つまり、本業の動力源となりつつ新しい市場展開の道を作るプライムは、単体ではビジネスとして成立しないが、Amazonの各事業をつなぐ中枢神経系のような役割を果たすようになっているのである。

AIとEcho

Amazon Goが今までつながっていなかったビジネスをつなげたように、AIもクラウドから小売まで様々なビジネスを一層つなげていくであろう。

Amazon.comの売り上げを伸ばし、コンテンツを活用しているEchoの成功にもそれは見て取れる。

「他のたくさんのテクノロジーに比べたときに一番興味深いのは、機械学習がいかに横展開可能かということだ。ビジネスでも行政でも、実際なんであろうと(機械学習を使って)改善することが不可能な分野は1つもないからね」とベゾスは言う。

長期視点の計画図

HQ2の場所については年内に決定するとのことだが、働く場所についてベゾスは「年々どこでも良くなってきている」と言っている。

「きちんとやり方を定めれば計画図に沿って働くことができるから、同じ建物にいる必要はない。同じ都市でなくても同じタイムゾーンでなくても構わない」

ベゾスが日々行っているのはほとんどこの「計画図」の作成のみである。日々の運営は全て部下に任せている。

ベゾスは自分の仕事に関して「今のことに引きずり込まれることはほとんどないね。自分は2、3年先のことを考えているし、幹部もほぼ全員そういう設定」と述べており、「四半期の決算報告後に『すごいね、素晴らしい四半期だ』と友人に言われるんで『ありがとう、でもあの四半期は3年前に出来上がってたからね』と返している。今も2021年の四半期の1つの計画を立てているところ」と説明している。

「アイデアを出すのが仕事。皆で座って1つのアイデアについて考えることもできるが、1時間で100個のアイデアを出してこのホワイトボード埋めることもできる。ブレインストーミングをしない週があるときはオフィスで『おい、お前ら、手伝ってくれよ』と文句を言ってますね」とのこと。

 

イノベーションするか、ジェフ・ベゾスにイノベーションされるかのどちらかだということをアメリカのビジネス界は心しておくべきだ。

Amazonの配送センターを見学してきました

こんにちは~。暑さにすっかりやられている今村です。

もうね、夏が来たのはわかったから一回休憩入れて欲しいです……。

みなさんは大丈夫ですか?熱中症とか気をつけてくださいね。 

さて、昨日こういうのをツイッターで見かけて、

あらー、チェスターのAmazon配送センターのレポート書くって言ってて忘れてたよ……と思ったので、また優先順位が引き下げられちゃって忘れ去られちゃう前に書いておこうと思います。 

ツアーは「スマホ、財布、車の鍵のみ持ち込み可能、スマホは所持してて良いが、録音、録画、写真すべて禁止」という状態だったので、残念ながら自前の配送センター内部の画像はありません。

また、ノートとペンも持ち込みできなかったので、レポートは全てツアーが終わってから車に戻って記憶に残っていたことを書き出した今村のノートだけを頼りに書いています。

そんなこんなのレポートですが、一応頑張って書いたので、まあ読んでってください。

チェスターのAmazon配送センター(RIC2)

今村が見学してきたのは、バージニア州チェスターにあるAmazon配送センターです。小型家電、オフィス用品、書籍、その他一般の小型商品を取り扱っている施設です。

Amazonでは、アパレル商品に特化した配送センター、大型商品に特化した配送センター、Amazonパントリー用の配送センター、Prime Now用配送センター、Amazon Fresh用配送センターなど、用途別に様々な配送センターがあります。

広さもわりと様々で、チェスターの配送センターRIC2は120万平方フィートある大規模な配送センターです。

120万平方フィートって、フットボール場28個分だそうです。東京ドームで言うと2.4個分くらい。

現地に着いてパッと見ただけで、今村は広大な駐車場の端まで行って配送センターのビル全体の写真を撮るのを諦めましたね。そのくらいの広さです。

↑諦めて正面のロゴだけ撮った写真

セキュリティ

ツアー参加者の出入りもそうですが、従業員の出入りも厳しくしています。

入口にはフルハイト・ターンタイプのセキュリティゲートがずらっと並んでいて、その奥には空港にあるような金属探知機のゲートがあります。

ツアー参加者は金属探知機の方はやらなくてオッケーでしたが、従業員は入るときも出るときもチェックされるそうです。

↑ツアー参加者がもらった入場許可証

環境

配送センターに入って最初に気づくのは騒音です。地下鉄で電車が常に行き交っているような音がします。

これはあちこちでベルトコンベアが結構なスピードで動いてるからなんですが、声を張り上げないと会話できないレベルです。

実際そのままだとツアーガイドが何を言ってるのかわからないので、ツアー参加者は全員ヘッドホンでガイドの声を聞く形でした。

働いてたらストレスになりそうと思ったんですが、慣れちゃうんでしょうかね?

↑支給されたヘッドホン

一連のプロセス

配送センターの一連のプロセスは以下の通りです。

  1. Amazonが直接販売する商品とFBAでマケプレ出店者が販売する商品が搬入されてくる
  2. 搬入されてきた荷物を開封し、商品をひとつずつバラして棚に入れる。このとき、ランダムに入れて「座標」で保管場所を記録する
  3. Amazon.comで誰かが何かをポチると、その商品の在庫のうちどの座標にあるものを出してくるべきかをシステムが判断する
  4. システムの指示に従ってその座標の棚の担当員が商品を回収し、ベルトコンベアに乗せて次の行程へ送る
  5. 顧客ごとの注文がまとめられ、仕切りがあるキャスター付きの棚に入れられる
  6. 棚をすぐ隣にいる梱包係のところに移動する
  7. システムが箱のサイズを判断するので、梱包係はシステムの指示に従って梱包し、ベルトコンベアに乗せる
  8. すぐ先で、宛名シールを貼る装置が重量が想定通りか確認し、宛名シールを貼る
  9. ベルトコンベアが発送方法によってパッケージを自動で仕分けし、荷積みの場所へ送る
  10. 荷積み係がパッケージをトラックに積み込む

座標による在庫管理

上のツイッターにあるPrime Nowの配送センターの映像でも説明してますが、Amazonでは、商品の在庫は予めバラして倉庫内で散らばるようにランダムに棚に入れています。

理由は2つ。

1つは、この方が効率的に注文された商品を出せるからで、もう1つは、倉庫管理的な視点から、スペースを効率的に使うのが重要だからとのことでした。*1

そしてこのランダムな保管を可能にしているのが、棚がどの建物内のどの縦列のどの横列にあって、収納場所がその棚の端から何番目の列の何段目にあるかというのをアルファベットと数字のコンビネーションで示した「座標」です。

スペースを無駄にしないで入れられる場所にテキトーに商品を入れて、座標情報が入ったQRコードをスキャンするだけでオッケーというわけです。面白いですね。

守備範囲が決まっている商品回収係

ツイッターで紹介したPrime Nowの配送センターでは、システムが1人の顧客の注文品を集める最短ルートを提示して回収係が注文品を全部集める形になっていました。

でも、チェスターの配送センターでは、商品回収の担当者ごとに守備範囲が決まっていて、自分の棚にある商品しか集めてこない仕組みになっていました。

顧客ごとの注文をまとめるステップはそのあと別に行います。

どうしてそうなっているのかについて詳しく突っ込んだ質問はできなかったんですが、おそらく、守備範囲が決まっていると、担当者も座標を見ただけでどのあたりなのか瞬時に見当をつけられるようになり、回収のスピートが上がるんじゃないかと思います。

また、食品を買う場合のように複数アイテムの注文でなく、単品注文の方が多くて顧客ごとの注文をまとめるステップがたまにしか起こらないのであれば、別にしておいた方が効率的になりそうです。

トヨタ生産方式の応用

なんとなくAmazonは古典的な手法は使わないイメージだったのでちょっと意外だったんですが、チェスターの配送センターではトヨタ生産方式がしっかり応用されていました。*2

例えば、カンバンで工程間の流れを管理しているとか、工程に異常があった場合はアンドンで周知するとか。

あとカイゼンにも力を入れているとのことで、定期的に従業員が集まって、どうしたらもっと効率を上げられるかコンテストをしたりしていると言っていました。

チェスターの配送センターの棚は下の方の段は引き出し型になっているんですが、これも「棚の下の方に入っているものは落ちやすく、落ちると間違った座標に戻されてしまうことがある」ということからカイゼンされた結果なんだそうです。

テトリス的な荷積みの技

一番最後の工程は、注文されたパッケージをトラックに積んで発送することですが、このときいかに

  • すばやく
  • 隙間なく空間を無駄にしないで(テトリス状に)
  • ダメージを最小化する形で(大きな箱を使ってトラック内に壁を作るなど)

荷積みできるかというのがポイントとのことで、実際に練習用のシミュレーションセットがありました。

ツアーでも「誰かやってみたい人!」とガイドさんに言われて、子供が3人がかりでトライしてましたが、これはなかなか頭を使う作業だなぁと見ていて思いました。

シミュレーションでは空箱だったので子供たちも軽々運んでいましたが、実際は重いものもあるでしょうしね、大変です。

ゆくゆくはテトリスの最適解はAIに計算させて、それをアームロボに実行させたらいいんじゃないですかね。

ちなみに、Amazonにはいろいろなサイズの箱がありますが、全てテトリスしやすいように計算して作ってあるとのことでした。なるほどねー。

おまけ:Amazon配送センターのビデオ

自前の内部画像がないので、代わりに参考になりそうなビデオを2つ置いておきます。(どちらもチェスターの配送センターではないです。) 

最初のビデオでは配送センター内の音がよくわかります。背景でずっと聞こえてるこの音です。

2:11あたりで見える風景もチェスターの配送センターに似ています。

ここに出てくる棚を運ぶオレンジのロボットはチェスターでは導入されていませんでした。(なぜか聞きたかったけど聞くチャンスがなかった……)

逆に、こちらでは人間が宛名シールを貼っていますが、チェスターでは機械がやっていました。↓

youtu.be

次のビデオは、アリゾナ州フェニックスの配送センターです。チェスターと大きさも同じだし、0:42~0:45あたりで出てくる棚の様子もほぼ同じです。

ホントにこんな感じで棚が延々と向こうの方まで並んでるんですよ!あとここの棚もチェスターのように下半分は引き出しっぽくなってますね。

1:17あたりに「座標」とバーコードも出てきます。

宛名を貼る機械は2:02あたりで出てきます。↓ 

www.youtube.com

まとめ

正直言って、ツアー自体はちょっと物足りない感じでした。

ヘッドホンを着用してガイドの説明を聞く形だったため、基本的に向こうの話を一方的に聞くだけで、ほとんどこちらから質問することができなかったんですよね。

途中で「あっ、あれは?」とか「これどうなってんの?」とかいろいろあったんですが、聞けないことが多かったです。

でも、配送センターってこうなってるのかっていうのがざっくりわかったのは面白かったし、Amazonが株主総会で「梱包にはまだまだイノベーションの余地がある」と言っていたのも「あー、なるほどね~」と思いました。

各工程内でいろいろ工夫したり、全体の工程を改善したり、はたまた配送センターのネットワーク自体を進化させたり、やれることはいくらでも出てきそうですし、規模がバカでかいのでちょっとの改善でも結構なコストカットができる可能性があるな、と。

今後どう変わっていくのか楽しみです。

*1:ツイッターで紹介したPrime Nowの配送センターの映像では、わりと棚がスカスカな印象がありますが、たぶん回転が早いからだと思います。チェスターの配送センターの棚はわりとしっかりスペースが使われてる印象でした。

*2:トヨタ方式自体はアメリカでもよく使われています。今村も会社勤めしてたころ「改善とは……見える化とは……」みたいなレクチャーをアメリカ人から受けました。(笑)

Home DepotとLowe'sを偵察してきました

書きたいことはあると言いつつ全然記事が書けてない今村です、こんにちは。

写真の整理が面倒すぎて、こういう事態になっています。 

今日は重い腰を上げて、Home DepotとLowe'sの写真を整理しました。

言いたいことを伝えるのに使う画像としてはなんとなくイマイチかなぁという感じだったんですが、実際にHome DepotもLowe'sも店舗を見たことないし比べたこともないっていう人にはまあ役立つかなと思ったので、今日は言いたいことは言いたいことで言って、写真はその後におまけ的にアップしておこうかなと思います。

言いたいことは、1990年台半ばくらいからユーザーとしてHome DepotとLowe'sを見てきた今村の今までの印象はどうだったか、そして数年ぶりにアメリカに戻ってその印象がどう変わったかという話です。

大局的な流れが見えて面白いかもしれないので、Home Depot(HD)やLowe's(LOW)に投資してる人・投資を考えてる人は是非読んでいってください。

Home DepotとLowe'sの成り立ちの違い

Home Depotは、今村がよく買い物するようになった1990年台の半ばくらいの時点ですでにDIY用品の大型ストアとして確立していました。どの街に行っても大体ある感じだったと思います。

一方、この頃はまだLowe'sは全然見かけませんでした。

Lowe'sは、企業としてはHome Depotより歴史が長いはずです。でも、最初から「DIYや住宅リフォームなどの部品・ツール・資材がなんでも揃う大型店」という構想で創業したHome Depotとは違って、Lowe'sはずっと小型の店を展開していたようです。

Lowe'sが現在の大型ストアに方向転換したのは、時代の流れとともに大型ストアの代表みたいなHome DepotやWalmartに潰されそうになったからです。

今村の今までのHome DepotとLowe'sの印象

1990年台の後半か2000年の始め頃(←うろ覚え)にかけて、Home Depotと同じ形態の大型ストアとしてのLowe'sが次々と現れるようになりました。

Lowe's自身がはっきりとそのように宣伝していた覚えはないんですが、このとき消費者が感じていたLowe'sの位置づけは「ちょっと小ぎれいなHome Depot」だったと思います。

「工事中」とか「建設現場」みたいなイメージのオレンジを基調とする無骨なHome Depotに対して、Lowe'sは青を基調にして赤のアクセントを入れた、DIYをちょっとおしゃれにしたようなイメージで打ち出してきたわけです。

実際、店内もHome Depotだと「工事中」的な雑なイメージがあった一方、Lowe'sはわりと整然と片付いているイメージでした。

品揃え的にも、Home DepotはDIYを普段からやっている人やリフォームや修理などを請け負っているプロの業者向けの商品を揃えている感じだったんですが、Lowe'sはどちらかと言うと、Home Depotのような店にはあまり行かない人が抵抗なく入って買い物しやすいような品揃えにしているという感じでした。

一番の違いは店員でした。

Home Depotの店員さんたちは、みんな自分で好きなようにデコったオレンジ色のエプロンをしてカジュアルに客の相手をしている、という感じでした。いかにも普段から日曜大工をしてそうなオジサンたちもたくさんいて、とにかくこの人たちに聞けばなんでもわかる、というイメージでした。

実際「こういうことをしたい」と言えば、「じゃあこれを買ってこうしろ」とすぐ答えが出てくるんですよ、Home Depotは。

Lowe'sの店員さんたちはと言うと、落書きなどないキレイな赤いベストを着て、客には型通りの対応をしてくれる、という感じでした。

難しいことを聞くとわからないと言われるけれど、とりあえず礼儀正しい、というパターンです。

Home DepotとLowe'sの使い分け

Home Depot派の言い分

DIY用品を買うようになった時期にLowe'sはまだ大型ストアとしてメジャーじゃなかったこと、そしてその後は不動産投資を始めたためにリフォームや修理を行う機会が多かったこともあり、今村はずっとHome Depot派でした。

今村の周りの人間も、どちらかというとDIYしたり業者を入れてリフォームしたりする人が多かったんですが、みなHome Depot派でした。

業者の人たちも、少なくとも今村がリフォームや修理で雇った人たちに関しては、みんなHome Depotで資材を仕入れてました。

業者たちがどういう理由でHome Depotを選んでいたのかは、尋ねたことがないのでわかりません。でも今村個人としては、DIYするときの道具には実用性だけを求めていておしゃれ要素は求めていなかったというのがHome Depot派だった理由です。

DIYでおしゃれにしたいのと、おしゃれにDIYをしたいのは別、というわけです。

実用 vs. おしゃれの視点

じゃあ道具もかわいく揃えてやりたい場合はLowe'sに行っていたのか?というと、行っていませんでした。

例えばガーデニングとか、ちょっとかわいい感じで道具を揃えて、植木鉢とかも少しおしゃれなものを買いたい場合に行っていたのはTargetでした。

そういう観点で言うと、Home Depotよりちょっと小ぎれいな程度のLowe'sじゃ足りなかったので。

利便性の視点

……ということで、今村個人の話で言うと、Lowe'sは「大した買い物ではないけれどホームセンター的なところに行く必要があり、ルート的にHome Depotに寄るよりLowe'sに寄ったほうが楽」というときだけに行く場所でした。

いや、意外とそういうパターンはあって、結構行くことはありましたよ。

ただ、たぶん一回の買い物が20ドル以上になったことはLowe'sではなかったんじゃないかなと思います。

今村の今回の印象

さて、ここまでを踏まえて、数年ぶりにHome DepotとLowe'sを見てきた今村の印象の変化なんですが。 

Lowe'sはHome Depot化しています。 

まだ多少はLowe'sの方がHome Depotより小ぎれい感があるのは確かです。

通路にあまりモノが置かれていないとか、全体的な「倉庫感」がHome Depotより少ないとか。

でも今回Lowe'sを見た今村の印象は「うわ、"色違いのHome Depot"みたいな感じになってきてる!」でした。

細かく商品を比べたり実際に店員さんに相談して買い物をしてみたわけではないので、単なる印象と言えば単なる印象なんですが、「なんでそういう印象になったんだろう?」と考えてみて一つ気づいたのは「ロゴに赤が入ってない」でした。

つまり、Lowe'sは意図的にHome Depot寄りに路線変更してるのでは、ということです。

今村の考察

差別化しないという戦略

もともとHome Depot派だった友人にも今どっちに行っているか聞いてみたんですが、「ここ数年はもうどっちが近いかで選んでるねぇ」「特にどっちがいいってことはなくなってきたねぇ」という反応でした。

やっぱりそうなのか……という感じです。 

今村は個人的には、Lowe'sがイマイチHome Depotに勝てずに来た理由は「Home Depotよりは小ぎれいだけど、おしゃれ・こだわりのDIY顧客層にアピールできるほどおしゃれではない」という、本質的に需要がないビミョーなニッチで差別化しようとしていたからだと思っています。

大型店じゃないことにこだわっていたせいで大型店としての参入が遅れたのと同じパターンだなぁ、世の中を見て柔軟に対応する考え方がない経営陣なんだなぁ、と思っていました。

そして、Lowe'sがそういう企業ならHome Depotは逆に安泰だ、とも思っていました。 

でも、Lowe'sが差別化をしない戦略に切り替えてHome Depot化してくるとなると、将来的に話はちょっと違ってくるかもしれません。

現に一般消費者にとってHome DepotとLowe'sの差は「どちらが自分に近いか」だけになってきている様子ですし。

今後も進むに違いないHome Depot化

「Lowe'sは意図的にHome Depot化を狙っているんじゃないか」と今村が思うもう一つの理由は、Lowe'sの新しいCEOとして5月末に発表されて7月2日付で就任したMarvin Ellison氏です。

この人、それまではJ.C. PennyのCEOしてたんですが、その前は何してたか知ってます?

Home Depotの経営幹部です。2002年から2014年まで。 

今年の始めにLowe'sを改革するためにD.E. Shawが立ち上がりましたが、

Marvin Ellison氏がCEOに就任したのはおそらくこれの流れでしょう。(取締役を3人増やしてNiblock氏を退任させてEllison氏をCEOとして任命)

だとすると、Home Depot化も表面的なものだけに留まらないと考えるのが妥当です。

だとすると……。

だとすると……。

まとめ

大きな流れの感覚、わかりました?

D.E. Shawが具体的にどんなビジョンを持ってLowe'sの改革を進めてるのか知りませんが、あたしが想像している方向性で行くのなら、わりといいところまで行くかもしれないと個人的には思っています。

なので、今後はそういう目でHDとLOWを見ていくつもりです。

参考になれば。

おまけの写真集

今回見たHome Depotは駐車場が2階建てになっているタイプでした。上が2階から見た図で下が1階の入口です。

でもこれ、あんまりないタイプなので、単に今村が見てきた店舗の写真という認識で見てください。Lowe'sと比べたい場合はHome Depotの画像検索をすれば普通のがたくさん出てきます。

 Home DepotもLowe'sも売り場部門は基本的に同じです。こちらはガーデニング関連の売り場。

モデルキッチンやカーペットなどのサンプルも両者とも同じような感じで豊富に揃えています。

Home Depotの右の写真はキッチンのリフォームの相談・見積もりをしてくれる店員さんたち。

Lowe'sの左の写真は冷蔵庫とか調理台とかの設置を手配してくれる店員さんです。

レジもほぼ同じ。まあこの辺は前から同じでしたが。

中央に店舗を横断する通路があって垂れ幕状の案内が出ているのも前から同じでした。

Home Depotの方が通路にモノが置いてあってちょっとごちゃごちゃしてるのわかります?

テキトーにその辺の通路の写真も撮ってきました。両者とも移動階段があって、頼むと店員さんが上のモノを降ろしてくれます。

木材売り場では、両者とも顧客(主にプロの人たち)がトラックを横付けして直接資材を積み込めるように専用出口を設けています。写真ではわからないけど。

Bed Bath & Beyond(BBBY)を偵察してきました

日本に帰ってきてまだバタバタしている今村です、こんにちは。

でも、まだアメリカで見てきたもので記事にしたいことが結構あるんですよねー。

なのでここからは時間とあたしの記憶力の戦いになると思うんですが、どうなんでしょうね……。正直、記憶力が時間に勝てる気がしないのでちょっと不安です。あははは。 

一応書きたいと思ってるのはこの辺。

  • Home Depot vs. Lowe's
  • Whole Foods Market vs. Trader Joe's
  • Walmart vs. Target
  • Amazon配送センター
  • Amazon Books vs. Barnes & Noble

でも実は「Bed Bath & Beyond(BBBY)も見てきて欲しい」とリクエストされてたんですよねー。なので、今日はとりあえずそっちについて書きます。

Bed Bath & Beyondってどんな店?

ベッドルームやバスルームのものだけでなく、キッチン用品やリビングの装飾品など、家電や家具以外の雑貨系のものはほとんど揃えられるお店です。

↑バスルームとベッドルーム関連の商品。

ロケーション

通常、Bed Bath & Beyondを見つけられる場所は大きめのショッピングセンターの一角です。Walmart、Target、Kohl's、TJ Maxx、Michaelsなど、大きめの店が並んでいて大きな駐車場があるようなショッピングセンター。

シアトルのダウンタウンでも一応見かけましたが、普通は公共交通機関から離れていて車でしか行けないような、広い土地のある場所にあります。

広さ

広さ的には、WalmartやTargetには到底かなわないけど、TJ Maxxとかあの辺りの店くらいです。大抵2階建てになってるKohl'sのワンフロア分くらい。

↑入ってすぐ見える風景。わりと広いスペースにびっしり商品が並ぶ。

Macy'sとかデパートのベッドルーム、バスルーム、キッチン用品の売り場を足したのと同じくらいじゃないかと思います。

品揃えとサービス

デパートで同じようなものを売ってる売り場と大体同じくらいの広さでも、品揃えはBed Bath & Beyondがデパートを圧勝します。Bed Bath & Beyondは天井近くまで商品を積み上げているので。

↑バスリリーやボディブラシだけでもいろいろ。商品が天井近くまである。手前に脚立が見える(左)。ヘアケア商品も大きなドラッグストアと同じくらい(もしくはそれ以上)の品揃え(右)。

↑枕と羽根布団の売り場(左)とタオル売り場(右)。

カーテンとかデパートではあんまり取扱いがない商品も扱っていたりします。

↑カーテン売り場(左)とBBQセットやお庭用家具(家具的なものはこれだけ。右)

あと、デパートであるようなブライダルレジストリー*1のサービスもあったりします。

↑ブライダルレジストリー(左)。ちょっと変わったアイデア商品も多い(右)。

値段とクオリティ

値段はざっくり今村の印象で言うと、デパート>Bed Bath & Beyond>Target>Walmartです。セールとかはあんまり多くないです。

クオリティ的にはBed Bath & Beyondはデパートレベルのものも多く、Targetレベルのものも入っているかな、という感じ。品揃え的に幅が広いので自然とそうなります。

↑鍋ややかんの売り場(左)。タッパーなどもたくさんある(右)。

↑お菓子作り用品の売り場(左)と食器売場(右)。

今村の考察

位置づけ

Bed Bath & Beyondは、今村もアメリカに住んでた時たまに行っていました。

でもどちらかと言うと、個人的には「気晴らしにどんなものがあるのかぶらぶら見て回る店」という位置づけで、実際にした買い物は少なかった気がします。

今村のように、あまりいろいろ物を買うのが好きじゃなくて実用的なものを良い価格で買いたい人は他の店で買うんじゃないかと。

逆に、価格のことは気にしなくて(決してBed Bath & Beyondのものが特に高いというわけではないけど)インテリアにこだわりがある人やちょっと変わった道具を買ってみたい人にはいいかも。

↑収納関連の商品売場(左)とキャンドル売り場(右)。選択肢がすごい。

↑手前は調味料入れやペーパータオル立てなどのキッチン用具、奥に見えるのはゴミ箱関連(左)。時計や絵画など壁にかけるもの関連の売り場(右)。

競合相手

ただ、そういう観点で言うと競合相手はデパートやTargetではなくなって、ちょっと良いこだわり商品とか、もう少しオシャレな商品を扱っているPier 1 ImportsとかPottery BarnとかCrate & Barrelとかになってくるんじゃないかなぁという気がします。

で、じゃあPier 1 ImportsとかにBed Bath & Beyondは勝つのか?と言うと、これは品揃えとかより、自分の家から一番近いのはどっちかみたいなロケーションや利便性に依るところが大きくなってくる感じがします。

そういう意味では、Bed Bath & Beyondは品揃えが多くて楽しい店だけど、その分キャラがない店になっている部分もあるような……。

↑ミキサー、ブレンダー、トースターなど小型の家電ならある(左)。掃除機も(右)。

ここ数年の変化

今回、今村は数年ぶりにBed Bath & Beyondに行ってみたわけですが、店舗の印象はあんまり変わっていませんでした。

商品のカテゴリや店内のレイアウトなどもほぼ同じです。

唯一新しく見かけたのはスマートホーム関連のコーナーでした。「売り場」というほどのサイズではなく隅の方にちょっとあっただけですが。

↑Amazon AlexaとGoogle Homeのスマートスピーカーとそれに対応した製品。

まとめ

どうでした?

小売業とかレストランとかの株は店舗を見ないで財務情報だけで選ぶのはなかなか難しいところもあるんですが、Bed Bath & Beyondがどんな店なのかなんとなくイメージが湧いたでしょうか? 

参考になれば嬉しいです。

*1:新郎新婦が結婚祝いに欲しいものを店内で選んで「ほしいものリスト」として登録しておくシステム

Amazonの株主総会に行ってきました

アメリカでダラダラする時間が終わってしまって寂しい今村です。こんにちは。

昨日、グーグルカレンダーに「明日はフライト」と言われて「えっ???」と固まってしまいました。

グーグルカレンダーなかったらフライトのことなんて忘れてたかも……。あははは。

まあでも、最後まで残っていた「Amazon Pop-upに行って古いKindleを下取りしてもらう」というタスクを昨日やって、ついでにecho spotも買ったので満足しました。

 

……てことで、Amazonの本社ツアーのレポートも書いたし 

www.saki-imamura.com

今日は、シアトル国際空港で日本へのフライト待つ間に株主総会のレポートを書きあげちゃおうと思います。

ちなみに今頃レポートしてますが、株主総会があったのは5月30日です。(スミマセン)

Amazonに対する抗議デモ

結論から言うと全然たいしたことありませんでした。

一応メディアも来て撮影したりインタビューしたりしてたし、警察も警備に来てましたが、傍から見ていてもAmazonに何をどうして欲しいのかイマイチわからない、あんまり統制がとれてないデモでした。

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株主総会が終わって出てきたときに会場側から見たデモ。一応警察官のおじさんたちいるけど、全員くつろぎモード。

会場とセキュリティとバナナ

会場はここでした。↓

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株主総会が終わって出てきてから振り返って撮った写真なので、半分片付けられちゃった状態ですが、右にある白いテントで

  • 身分証明書とAmazonの株主であることの証明を提示して、
  • カバンの中身を全部見せて、
  • 金属探知機(空港のセキュリティチェックにあるゲート状のあれ)をくぐって、
  • 全部クリアしたら入場許可証として胸につけるシールをもらう

……という手順を踏んでやっと入れる、という感じでした。

ちなみに、もらったシールはこれ。

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どんだけ犬好きなの、あんたたち!!!(笑)

(しかもいろんな種類のワンコのシールがあったw)

そして、テントの手前には本社ツアーのレポートで説明したCommunity Banana Standが出張してきてました。

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バナナ、もちろん貰いましたとも、ええ。

株主総会の内容

……てことで、肝心の内容*1ですが。

取締役会のメンバーの選出とか株主からの提案とかのやりとりが終わったあと、まずは「収益が右肩上がりで従業員数も増えていて云々……」という報告をざっとしてました。

この辺はちょっと調べればわかることだし、パワポのグラフに並んでいた数字はとても写しきれなかったので割愛。

そこからは、Amazonが投資している分野についての話とベゾス氏によるQ&Aでした。

Amazonが投資している分野

株主総会で、Amazonがお金と労力をつぎ込んでいると挙げた分野は以下でした。

  • Prime membership:プライムメンバーはそうでない人の倍近くAmazonで買い物するということがわかっているので、今後もプライムメンバーを増やすことに力を注ぐ
  • Prime video:プライムメンバーシップを試してもらったり更新してもらう理由として有効なので、プライム・ビデオの内容の充実にも続けて力を注いでいく
  • Alexa対応デバイス:具体的な商品の話はなかったけれど、ここにも力を注ぐとのこと。あと、現在4万ほどのスキル数ももっと増やしていくとのこと
  • Kindle:初代キンドルが発売されてから10年になるので、それを記念して新しいバージョンのKindle Oasisをリリースするつもりとのこと。あと、最近のバージョンのKindleではAudibleに対応するようになってきているけど、Audibleももっと押していくとのこと
  • インド:インドと言えば、Amazonは最近Flipkart買収合戦でWalmartに負けたけど、株主総会では「プライムメンバーも2年前に比べて増えているし、商品の売上数の半分がアマゾンマーケットプレイス経由となっていて出店者もふえている。個人のハンドメイド商品や中小企業の商品を販売する場を提供することで、インドで9万以上の雇用を生み出している」と言っていました。そしてAmazon.inの拡大には今後も力を入れていくとのこと
  • FBA:(=fulfillment by Amazon、Amazonに在庫管理・発送を代行してもらってマーケットプレイス販売できるサービス)30%の成長率で増えているので、配送センターのネットワークの強化などにも投資する
  • Whole Foods:現在すでにAmazonのプライベートブランドとしてWhole Foodsの商品が売られているが、これをもっと拡大する。また、Amazon Prime VISA cardを使ったWhole Foodsでの買い物の特典なども検討している(プライムメンバーはすでに一定のWhole Foods店舗で10%の割引を受けられるようになっている)。あと、Whole Foodsのデリバリーサービスも10箇所でテストする予定とのこと
  • Amazon Go:店舗増やすつもり
  • AWS:今や220億ドルビジネスとなり、2010年時点では61しかなかったサービスや機能の数も1,430になっている。今後も力を入れていくつもり
  • 社会貢献:ホームレスシェルターを運営する「Mary's Place」や貧困やホームレス問題に取り組むフードサービスNPO「FareStart」に対する支援、Special Olympic、教育などの分野での支援を今後も続けるつもり
  • 再生可能エネルギー:年間100万MWh発電できる風力発電所をテキサスに建設。今では28箇所で風力・ソーラー発電を行っている
  • 梱包のイノベーション:梱包に関してはまだまだ改善の余地があるのでイノベーションを続けるとのこと

ちなみに、HQ2に関する投資については、「どの都市にHQ2を作るのかは、決まっていないと言ったら決まっていません。決まったらちゃんと発表します」と言って会場の笑いを誘っていました。

ベゾス氏のQ&A

ベゾス氏によるQ&Aは、今回が21回目の株主総会であること、ずっと前から毎年株主総会に出席している長期志向の株主たちの顔が今回もちらほら見られて嬉しいというコメントから始まりました。

その後、以下のようなありきたりな話がでました。

  • 取締役会に有色人種のメンバーも加えるべき→人種ではなく能力で人選すべきなので、人種で選ぶのではなく適した人物を選ぶことを優先する
  • コロンビア川の水力発電が環境に影響している→環境調査を行っている
  • 以前勤めていた時、契約社員の契約内容に問題があったがどうなったのか→改善した

AWSの競合性

で、誰かが「AWSの乗り換えコストはどのくらいなのか?」と質問したんですが、これに対してベゾス氏の答えがAmazonらしくて笑えました。

  • 乗り換えコスト(=顧客がAWSから競合会社のサービスに乗り換えしようとしたときのコスト)についてのAmazonの考え方は、「できる限り低くして(顧客が望むなら)他社に安く乗り換えできるようにする」である。これは顧客にとって最高のサービスを提供するということに繋がる
  • ただ、一般的に顧客は複数の業者によるAPIを持つことを好まない。大体1つにまとめようとする。そのため、乗り換えコストは顧客の都合により結果的に高くなることが多い
  • また、自社用にAPIをカスタマイズするのには時間も労力もがかかるので、そもそも乗り換えを好まないことが多い
  • Amazonは、他の大手企業がクラウドコンピューティングなど検討もしていなかった頃にAWSを始めた。競合他社より大体7年くらい早く始めていたことが大きな優位性になっている

収益性を無視してみんなより早く始めることで有利な立場を確保し、一旦有利な立場を確保したら徹底的に顧客サービスに務める、という定番のやり方です。

独占禁止に関する動き

そのあと、「トランプ大統領のAmazonに対する攻撃も最近目立ってきているが、独占禁止に関してはどうなのか?」という質問が出て、これに対しては

  • 2010年時点で従業員数3万人ほどだったAmazonは、今では従業員数60万人の会社になっている。たんに成長率的な話ではなく、絶対数的な意味で大きな企業に成長してきているのだから、厳しいチェックが入るのは当然である
  • このようなことをいちいち気にしていても仕方ない

と流してました。

Mary's Placeの代表者からのコメント

たくさん手を挙げてる人たちの中から偶然選ばれての発言したわけじゃないと思うので、明らかにヤラセなんですが、Mary's Placeの代表者が以下のような報告をしてました。

  • Amazonが長年に渡ってホームレス問題の支援をしていること
  • Mary's Placeでは現在毎晩7,000人のホームレスにベッドを提供できるようになったこと
  • 今年はベッド数が200増えたこと
  • Amazonのビルが完成したらさらにベッド数が200増えること

報告と感謝の辞だけで質問ではなかったんですが、ベゾス氏は今後も継続的に支援することを述べてました。

次の柱となる事業

最後に「現在3つの柱となっているプライム、マーケットプレイス、AWSに続く次の柱になると期待されている事業は何か?」という質問がありました。

これに対しては、

  • インド、Amazon Studio、Alexaなど成功すれば大きな事業となるものはたくさんある
  • 「第四の柱を何にするか」ではなく「できる限り多くの種を蒔いておけば、そこから第四の柱になるものが生まれる」という考え方である。現にAWSも今では数十億ドルの事業になっているが、Amazonの経営陣は500万ドルくらいの時点でハイタッチをして喜んでいた
  • 結局のところ一番大事なのは顧客志向でビジネスを考えることである

と言っていました。

まとめ

こうやって書き出してみると、特に新しい情報はないし、今までの考え方で淡々とやってるだけという感じですよね。

そういう意味では良い株主総会だったのかなと思いました。

なんにせよ、一回自分の目でどんな感じか見れたことはやっぱり良かったです。

*1:写真も録画も録音も禁止で、警備員の方たちが監視している状態だったので、今村のノートだけを頼りに書き出したものです。大きく間違っている箇所はないと思いますが、何か抜けていたりとかはあるかもです。

Amazonの本社ツアーに行ってきました

あれも書くこれも書くと言いつつ全然レポートできてない今村です。こんにちは。

忙しかったわけではなく、以前アメリカに住んでたときやってたようなことを毎日ダラダラやってるだけなんですが、「これがしたかったのよー」っていうのと「日本に戻っちゃったらまたできなくなる!」という気持ちがあって他のことを全部捨ててました。(笑)

でも昨日で大体一通り「アメリカでやりたいことリスト」をこなし終わった気がするので、とりあえずAmazonの本社ツアーのレポを忘れないうちに書いておこうと思います。

Amazon本社ツアー概要

ここでちょっと説明した「音声ガイドツアー」っていうのをやってきました。

アプリ内で地図も出てくると聞いていたんですが、The Spheres Understoryのお姉さんに「Day 1ビルの受付で地図もらうといいよ」と言われたので紙の地図をもらってまわりました。

地図見てもらうとわかると思いますが、Amazonの本社のオフィスは1つのビルに収まっていません。キャンパス状に一定区域のビルが全部Amazonのビルになっているわけでもありません。街の一角にAmazonが入ったビルが点在している状態です。

これらのビルのうちのいくつかを音声ガイドに従って歩いてまわり、ロビーまでは大体入れるので入ってみる、という感じでした。

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出典:Take a Self-Guided Audio Tour – Amazon Headquarters Tours

ビルやAmazonロッカーに名前がついていて面白い

ツアーのスタート地点でもあるDay 1ビルの名前はここで説明したベゾスの「It's Always Day 1」という言葉からきているんですが、他のビルにもそれぞれなんらかの由来がある名前がついています。例えばこんな感じ。

  • Doppler:Amazon Echoが開発されていたときのコード名
  • Arizona:カスタマーサービスが使っているツール名
  • Houdini:Prime Nowのもともとのコード名
  • Dawson:Amazonの最初の配送センターがあったストリート名
  • Fiona:リリースされる前のKindleのコード名
  • Rufus:Amazonに最初に出勤(?)した犬の名前
  • Wainwright:Amazon.comで最初に買い物した人物の名前
  • Nessie:Amazon.comの状況をモニターしていたシステム名
  • Brazil:Amazonのウェブサイトが構築されたとき使われたツール名

あと、Amazonロッカーがいたるところにあるんですが、ひとつひとつに名前がついていました。(シアトルに着いた日にスーパーで見かけた時は名前がついてることに気づかなかったんですが、あとで写真をもう一度見たらちゃんと「hello my name is pico」と書いてありました)

住所で説明したり覚えたりしなくていいし、面白いなぁと思いました。

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コミュニティに密着している

本社ビルが街の一角に散らばっているのはコミュニティの一部であろうとするAmazonの姿勢とも関係しています。

そして実際にいろいろなことをしています。

Community Banana Stand

その1つがCommunity Banana Standです。これ↓

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あちこちで、バリスタならぬバナスタたちがバナナを無料で提供しています。Amazonの社員だけじゃなくて、通りすがりの人誰でも自由にバナナをもらってオッケーです。

今村も1本もらってついでに写真を撮らせてもらいました。

この辺りには、バナスタに会ってバナナをもらうのを日課にしている高齢者などもたくさんいるそうです。

出勤時にバナナをさっと1本掴んでビルに入っていくAmazon社員ももちろんたくさんいました。

ホームレスシェルター「Mary's Place」

今までもAmazonは「ホテルなどの物件を買う→使っていない間ホームレスシェルターを運営しているNPO「Mary's Place」に無料で提供→取り崩しが決定されるとシェルターを別の場所に移動→取り崩してAmazonのビルを建設」ということをしていたんですが、2020年に完成予定の新しいAmazonのビル内に常設のMary's Placeのスペースとしてベッド数200の施設を作ることにしています。

スペースだけでなく食料を提供したりもしていて、Amazonの社員もボランティアしたりして積極的に関わっているようです。

余談ですが、Amazonの株主総会にはMary's Placeの代表者が来ていて、いかにAmazonがシアトルの大きな問題であるホームレスへの対策に取り組む助けになっているかスピーチしてました。

地域のアーティスト

Amazonのビルの合間にはいろいろなアートが設置されてたりするんですが、これらは地域のアーティストに依頼して作ってもらっているとのこと。

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Food Truck

Amazonの本社の周辺のストリートにはたくさんフードトラックが停まっていました。ビル内にも食堂のようなものはあるそうですが、地域のビジネスをサポートするためにわざと少なめにして社員が外に出て昼食をとるようにしているからだそうです。

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無類の犬好き

現在Amazonの本社では4万人以上の社員が働いているそうですが、犬同伴で出勤してくる人は4千人以上だそうです。犬同伴出勤率10%!!!!

次々といろんな種類のワンコが飼い主さんたちとやってきてそのまま勝手知ったる様子で社員ゲートの中に入って行くのを見て、ワンコが大好きな今村はここは天国か??と思いました、ええ。

……こんな会社で勤めたかったです、まじで。

どんなに犬同伴率が高いかはこれ見てもらえればわかると思います。↓

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Day1ビルの受付の写真を撮ろうとしたらどんどんワンコがフレームに入ってきたのでシャッターを切り続けた結果、こんなことになりました。ものの1分ほどの出来事でした。(笑)

さらに、お昼どきにはまた次々とワンコたちが飼い主さんと出てきてランチだかお散歩だかに行ってました。羨ましい。

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あと、これらの飼い主さんたちとワンコたちのために、The SpheresとDay 1ビルの間にドッグランがあります。

他のビルではビル内にドッグランがあると聞いたことがあります(これは見れませんでしたが)。

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まとめ

ぐるっとAmazon本社をまわってみて感じたのは、いかにAmazonが自社ビルを点在させながらシアトルの街を良くしているかということ、そしていかに社員たちがかなり自由度が高い働き方をしているかということでした。

Amazonの社員証をつけて歩いている人たちの数は午前中わりと一定数いたので、始業時間が一定じゃないのは明らかだったし、みんなかなりラフな服装で、髪の毛が緑でもオッケーで、犬同伴でもオッケーで。

働きやすい環境を地域の人に提供して、街の開発に貢献して、ホームレスなどの社会問題にも取り組むことで、Amazonが税金などで優遇される地位を築いている面があるのは確かです。実際、Amazonに対する批判の1つは税金をあまり払っていないことです。

でも、今回現地でいろいろざっと見て、まあいいんじゃないかなと思いました。

Amazonに税金を払ってもらって行政に街を良くしてもらうより、Amazonに直接街を良くしてもらう方が効率的・効果的なんじゃないかと。

外部の人が批判していても、シアトルの人たちはAmazonの貢献度を理解してるんじゃないかな、と思いました。

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Day1ビルの中(左から、ビルに入ったところ(手前の左手にAmazonロッカーあり)、階段を上がったところにある歴代Kindleのディスプレイ、さらにエスカレーターを上がったところ)

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その他のビル(左から、Fionaの受付、Fionaのロビー、Dopplerの受付)

Starbucksの第一号店とReserve Roasteryに行ってきました(読者プレゼントあり)

ワシントンDC郊外の友人宅でダラダラしてる今村です、こんにちは。

どっか行く?という話になり、子供みたいだけど動物園とか水族館とかが好きなんだよねと言ったらスミソニアン国立動物園に連れて行ってもらえました(笑)のんびりほのぼのしてきました。

で、その後ご飯食べに行ってビール飲んで、夜はケーキ食べなからダラダラおしゃべりしてたら1日終わっちゃいました。

てことで、今日は昨日書こうと思ってたStarbucksの第一号店とReserve Roasteryのレポートをちょっと早く起きてきて書いています。

第一号店

宿から近かったので、シアトルに着いた当日に覗きに行ったんですが、長蛇の列でした。その後いつ通りかかっても長蛇の列だったので結局最終日の朝イチにReserve Roasteryで朝ごはんしたあとハシゴして中の様子を見てきました。

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看板にはもともとのスタバのロゴがそのまま使われています。

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正面から店の中を覗くとこんな感じ。

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入ってすぐ右に「First Starbucks Store」と書かれたプレートがある。

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コーヒー豆も売ってるけどダンボール箱の存在感に押されてる……。

ぐるりと見回すとこんな感じで、店内に飲食するスペースがないのでホントに買い物するだけの場所になっています。

今は巨大チェーンになっているスタバもこんな感じで始まったのね……と感慨深くなるくらい質素で使い込まれた感がありました。

Reserve Roastery

そんな第一号店と対象的なのがReserve Roasteryです。

以前の記事でもちょっと触れましたが、Reserve Roasteryはスタバ自身が「これが未来のスターバックス」と言って、スタバ店舗の最高峰に位置づけしている高級志向のストアです*1

今村はここで朝コーヒーしてきました。

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外観からして高級志向。大きくて重い扉を開けて入る。

入ってすぐに店内を見渡すとこんな感じです。

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右手の奥にはイタリアのベーカリー「Princi」が入っている。

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左手にはReserve Roasteryの注文カウンターがある。ケーキ、マフィン、クロワッサン、サンドイッチなども少量だけどある。

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逆側に回って注文カウンターを見た図。真ん中にあるチューブから店内で焙煎されたコーヒー豆が送られてくる仕組み。理科の実験室みたいで面白い。

チョコレートマフィンを選んで「どのコーヒーが飲みたいかわかんないよ~」と言ったら「Peru ChontaliかPapua New Guinea Virgin Mountainがいいよ、どっちもチョコレートっぽい風味があるからチョコレートマフィンに合うよ。Peruの方が濃い感じでPapua New Guineaは素朴な感じだよ」と言われたのでPapua New Guinea Virgin Mountainにしました。

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コーヒーカップにもトレイにも★|Rのロゴが入ってる。

カウンターに陣取ると炭酸水を出してくれて、しばらくするとマフィンとコーヒーも持ってきてくれました。コーヒーはチョコレートマフィンに負けないけれど後味すっきりの美味しい一杯でした。

カウンター以外にも席はたくさんあって、入り口を入った左側には暖炉付きのエリアがり、注文カウンターの先にある階段を降りていくとそこにもテーブルがたくさんありました。

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階段の横にはちゃんと車いす用のエレベーターが。そして右側にちょっと見えている階段のてすりにも★|Rのロゴが。

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階段を降りた先にあるエリア。

そこを更に右手に行くとCoffee Libraryと呼ばれているコーヒーの本などが置いてあるちょっとしたミーティングルームのようなスペースがあります。

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そしてこれらすべての真ん中に位置してるのが焙煎機です。

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焙煎機は巨大なものが一台、そしてそれより少し小さめのものが一台あります。大きい方では各店舗に配送するリザーブブレンドをローストしていて、小さめ(と言っても大きいんだけど)の焙煎機ではこの店舗で販売しているコーヒー豆をローストしています。

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ど真ん中にある巨大なコーヒー豆の貯蔵庫。もちろん★|Rのロゴ入り。

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貯蔵庫の左、1階のエリアの右手にあたる場所にある巨大な焙煎機。上からコーヒー豆が送られてきて本体で焙煎され、それが手前の丸い入れ物の中で冷まされる仕組み。

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こちらが貯蔵庫の右にある小さめバージョンの焙煎機。

今村が行ったときはまだ焙煎の準備中だったので焙煎工程は見れなかったんですが、焙煎が終わって豆の粗熱を取る過程なんかに居合わせたら店内がものすごくいい匂いになるんじゃないかなぁと思います。見れなくて残念。

なんにせよ、工場のような、でも高級感溢れる面白い空間で美味しいマフィンとコーヒーをいただけてすごくくつろげたので、シアトルに行く人にはおすすめです。

読者プレゼント

さて、ボーイング読者プレゼントアマゾン読者プレゼントに引き続き、第三弾の読者プレゼントとして、今回はReserve Roasterのマグカップを抽選で1名様にプレゼントします。これ↓

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おしゃれです。立派な箱入り。

応募手順

これまでと同じで、ツイッターとブクマで応募できることとします。

どちらも場合もハッシュタグ「#スタバ読者プレゼント」をつけてください。プレゼント欲しくないけどツイートやブクマしたい人のため、ハッシュタグがついていないものは抽選から除外します。

また、重複をチェックするのがめんどいので、ツイッターとブクマの両方で応募するのもアリとします。(当選確率が2倍になります)

締め切りは日本時間6月7日朝とします。もしかすると今村の都合で抽選はそれよりあとになるかもしれませんが、その場合はその時点で応募されているもの全部を含めます。

抽選ルール

ツイート経由の応募者のリストとブクマ経由の応募者のリストを合わせ、重複は除かないまま、なんらかのランダム選択機能を使って1人選びます。

当選発表

当選者には今村から連絡します。

ツイッターの場合はDMで、ブクマの場合ははてなIDをたどってプロフィールのページにツイッターのアカウントがあるかチェックして、あればツイッターのDMで連絡します。ツイッターがなくてもブログへのリンクがあればブログの最初のページに問い合わせ先があるかチェックして、メール、ツイッター、お問い合わせフォームのいずれかがあればそこから連絡します。

連絡ができない場合、残りの人を対象にもう一度抽選します。

連絡できた時点で一旦、ツイッターとこの記事の更新の両方で当選者の発表をします。

当選者発表後の手順

今村から連絡があったら24時間以内に配送先を指定してください。

できれば日本まで持ち帰らずにアメリカから発送したいので、24時間以内に返事がない場合は再度抽選して別の人を繰り上げ当選とします。

予告

読者プレゼントは以上です。

あとはぼちぼちAmazonの本社ツアー、株主総会、Amazon Booksなんかのレポートをするつもりです。

あと、アメリカは数年ぶりなので、今Home Depotはどうなってるのかとか、Whole Foodsはどうなってるのかとかも見に行こうと思ってます。なので、その辺についてもいずれ書ければ書きます。

 

ではでは~。

追記:読者プレゼント当選者

*1:1. The Reserve Roastery and Tasting Room、2. The Reserve Store、3. The Reserve Bar、4. リザーブコーヒーを提供しているスタバ、5. 普通のスタバ、というふうにスタバ店舗は格付けされている